その場所はなぜ“自殺スポット”になったのか? 青木ヶ原樹海、韓国麻浦大橋などから見えてくる現実

コラム

日本人の自殺者数は9年連続して減少している。警視庁の公式ホームページには月ごとの自殺者数が載っている。2019年度の自殺者数の合計は19959人だった。1999年の自殺者は33048人だったので、20年間で1万人以上減少したことになる。ただそれでも2万人の人が自殺しているというのは深刻な事実である。

 

自殺をする人たちが、最期の場所をどこに選ぶのか?
まず自宅を選ぶ人は多い。一番勝手がわかり、周りからバレづらいのは自宅だろうから、当たり前ではある。似たようなところでは、自分が働く会社内、マイカーの中、宿泊しているホテルの中、などがある。

 

ただ一定数は屋外で自殺を試みる人がいる。外で亡くなる人は飛び降り、飛び込みでなくなる人が多い。“自殺スポット”と呼ばれる場所の多くは、飛び降り、飛び込みがしやすい。東尋坊、三段壁、華厳の滝、といった崖や滝は飛び降りて死ぬことができる。
中央線、常磐線などでは電車に飛び込んで亡くなる人が多い。これは海外でも同じで、ゴールデンゲートブリッジ、ナイアガラの滝、エッフェル塔などの高所にある観光名所は、自殺スポットになっている。

 

 

青木ヶ原樹海はは前述の自殺スポットとは違う。死に方は、位置エネルギーなどを利用したものではなく、首を吊る、毒薬を飲む、などの自殺方法が選択される場合が多い。これは世界的にもかなり珍しい。

 

僕は青木ヶ原樹海を取材することが多いのでよく「なぜ青木ヶ原で死ぬのですか?」と聞かれることがある。
よく言われる説は「松本清張の『波の塔』という小説内で青木ヶ原内で自殺するシーンがあるから」というものだ。『波の塔』が1973年にNHKでドラマ化された際、樹海が自殺する場所だという概念がより広く伝播されたと言われている。波の塔が女性自身に連載されたのが1959年だが、「小説が発表される以前から青木ヶ原樹海は自殺の名所だった」と話す人もいる。たしかに松本清張もどこかで樹海は自殺の名所だと聞いて執筆したのかもしれない。ただ、樹海での自殺にそれほど古い歴史はないだろう。

東京から樹海まで、直線距離で110キロくらいある。今でもまあまあ行きづらい場所にあるのに、明治時代以前の人がわざわざ青木ヶ原樹海に行って死んでいたとは考えづらい。

 

結局、「なぜ青木ヶ原樹海は自殺スポットなのか?」を考えていくと、「青木ヶ原樹海は自殺スポットだから、自殺スポットだ」ということになる。トンチ話のようだが、事実そうなのだ。
テレビなどで「自殺スポット」として取り上げられると、それを見た人が「ならば自殺スポットで死のう」と思うのだ。人気のある観光スポットに人が集まるのと同じカラクリで、自殺スポットにも自殺志願者が集まるのだ。

 

自殺スポットになった側は、とても困る。
まず、自殺死体を処理しなければいけない。2019年の10月に、華厳の滝で自殺した男性がいたが、大型クレーンを投入しての引き上げ作業には約300万円の費用がかかり、遺族に請求されると報道された。電車での自殺は、遅延などの被害が多くの人に及ぶのは皆さんも御存知だろう。自殺のスポットとなれば、当然印象は悪くなる。
以前、自殺があいつぐ有名な団地街があった。ずいぶん報道もされていたが、自分が住む場所が自殺スポットと言われるのは決して嬉しくないだろう。ただし、どのような手立てをすれば自殺スポットでの自殺者数は減るのか? これはなかなか難しい。

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