日本のホームレスはなぜ路上で『ものごい』をしないのか? 実際に路上でものごいをして分かった事は?

コラム

先日、「日本のホームレスは、ものごいをしていない。それは、そこまで追い詰められていないからだ」という意見を耳にした。たしかに、海外旅行に行くと路上でものごいをしている人をよく見かける。

 

僕は韓国によく旅行に行くが、身体障害者の人が路上でものごいをしているのによく出会った。日本でも敗戦後は傷痍軍人が路上に立って楽器を演奏するなどものごいをしていたというが、実際には見たことがない。だから初めて見た時はちょっと驚いてしまった。

 

同行した韓国に詳しい編集者は「本当は障害を負っていない人も多いんですよ。問題になることもあります」と教えてくれた。多くの人は足に障害がある人で、黒いゴムのズボンを履いていた。擦れても大丈夫なように、履いているのだが、実際には健常者なのに黒いゴムのズボンを履いてものごいをしていたという。つまり、足がないフリをしてお金を稼ごうとしていたわけだ。あこぎではあるが、それだけものごいはお金を稼ぐことができるということだろう。

 

 

実際にものごいは、ある程度お金を稼ぐことができる。これは経験的に知っている。
まだ雑誌のコンプライアンスが甘かった、僕が20代後半の頃(約20年前)、『ものごいをしてみる』という企画をやったことがある。

 

目の前に空き缶を置いて、ひたすら座っているという取材だった。肉体的には楽な取材なのだが、精神的にはかなりきつかった。目の前に人が通るたびに、羞恥心や恐怖心や罪悪感に苛まれる。

 

そんななんともつらい気持ちで座り、しばらくすると道行くサラリーマンやOLが、小銭をチャリンチャリンと空き缶の中に入れてくれた。たった、6時間座っただけで3000円以上の収入を得ることができた。
時給500円は安いかと思うかもしれないが、ホームレスが最も従事しているアルミ製の空き缶回収の場合、1キログラムの缶の買取り価格が約100円だ。1時間で5キログラムの空き缶はまず集めることができない。歩き続けて、汚いゴミ箱に手を突っ込んで、空き缶を集めるのに比べて、精神的にプレッシャーがあるものの座っているだけのものごいはずいぶん身体的には楽だ。

 

ものごいをしている途中に、「パン屋でバイトしてるんですけど、売れ残りのパンで良かったら」と大きいパンをもらったこともあった。また、ニコニコ笑った笑顔の老婆が話しかけてきて「若い身空でこういう生活になってしまったのはかわいそうね。私が入っている団体に入れば、しばらくは衣食住には困らないわよ」と、有名な新興宗教団体への入信を勧められた。その新興宗教団体が、ホームレスに対しどのようなほどこしをするのかは知らないが、本当にホームレスでなくなることができるなら悪くない話かもしれない。
それならばと、その新興宗教団体の本拠地がある町でものごいをしたら、すごいスピードで注意され、通報されたのでほうほうの体で逃げ帰った。まあそんなものである。ものごいをしていると、「ここは自動車が通るので移動してください」などとたびたび警備員や駅員の人に注意、指示され、移動を強要された。ただあまり厳しい言い方ではなかった。申し訳ないんですが、という雰囲気だった。

 

少数ではあるが、現在も駅前などでものごいをしているホームレスはいる。新宿駅や渋谷駅の近辺には常に数人のホームレスがものごいをしているのを見かけたことがある。目の前に、どんぶりや帽子、空き缶を置いて座っている。
「右や左の旦那様~」
などと口上を垂れている人はいない。ただただひたすら土下座をしている人がいたが、まだ積極的な方だと思う。話を聞くと、「あまりに積極的にものごいをすると、警察に注意されるからね」と言われた。警察もわざわざ注意しなくても、と思うかもしれないが根拠はある。ものごいをする行為は軽犯罪法に抵触するのだ。

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