『心中』という言葉がある。
たとえば外国の人に『心中』とはどういう意味でしょう? というクイズを出しても、まず当てられないと思う。
「こころのなか」と書く言葉が「2人以上の人が合意で自殺すること」だとはまず連想できないだろう。
辞書で『心中』に当たる英語を調べると、“a double suicide”と極めて分かりやすい言葉が出てくる。恋人同士の自殺なら“a lovers’ suicide”だ。
一家心中になると自殺だけでは収まらない。小さい子供、障害者、高齢者には、本人には死ぬ意思がないのに、無理に自殺させられたり、殺されたケースが多い。
ドラマ『アンナチュラル』の主人公三澄ミコトは、一家四人無理心中事件の生き残りだった。
法医解剖医を職業としている彼女は、無理心中について
「無理心中なんて言うのは日本だけ。正しくはmurder-suicide。殺人とそれに伴う犯人の自殺。要するに単なる身勝手な人殺しです」
と吐き捨てていた。個人的にはその通りだよな、と納得できた。
ただし海外でも、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』は400年以上経った今でも人気が高い。だから外国人だって、心中にロマンを感じるのだろう。