今回は「発達障害で問題児でも働けるのは理由(ワケ)がある!」(こころライブラリー)
かなしろにゃんこ。著 のご紹介をする。
本書はアニスピホールディングスの「福祉書評」にてご紹介している
「発達障害 僕にはイラつく理由がある!」の姉妹編だ。こちらもぜひ合わせて読んでいただきたい。子どもの頃と大人になってからのリュウ太君の成長ぶりがよく分かり、より一層、本書が楽しめるだろう。
作者のかなしろにゃんこ。さんは、漫画家で、発達障害(注意欠陥障害)をもつ、22歳の息子 リュウ太君の母だ。当事者の母による著書やブログは山ほどあるが、本書は、過去を振り返り、当時の心境をリュウ太君自身が語っている点で、発達障害当事者にもその親にとっても、役立つ情報がふんだんに盛り込まれている。母子の日々の会話ややり取りがメインとなっているが、監修者の石井京子さん(日本雇用環境整備機構理事長。キャリアアドバイザーとして、700人を超える発達障害の人の就職相談に応じる)がプロの視点から、漫画の間に解説をしているが、それもまた非常に具体的で分かりやすい。
読み進めていくと、かなしろさんの母としての思いと、子のリュウ太君の受け止め方に差があることが分かる。これは障害を持っている・いないに限らず、親が良かれと思ってやったことも、子にとっては迷惑だったり、過干渉だったりすることはよくあるだろう。その親子の「ずれ」もまた本書の面白さだ。
例えば、かなしろさんは親として、小学生の頃、お手伝いを通じて「人に必要とされる喜び」「感謝される喜び」「お金を稼ぐ喜び」を学んで欲しいと思っていた。だが、22歳になったリュウ太君は言う。「荷物は重いし、1時間くらいかかる。なのにお駄賃が100円は安すぎだ!」「『手伝って』と言われると断りづらいし、強制労働みたいに感じることはあったよ」と。
興味のないことに目もくれず、人とのコミュニケーションが苦手だったリュウ太君に、お買い物を通じて、物やその名前を覚えたり、困ったときには誰かに尋ねる練習をさせたかったかなしろさん。しかし、リュウ太君は「『あなたのため』って言われてもハードルの高いことをさせられて困ることもあるんだ」と振り返る。筆者はこの一文にハッとした。子どもを育てている親なら「子どものため」「あなたのため」と思って何かをさせる場面は当たり前にあると思うが、子ども目線ではそう受け止められないというすれ違いはいくらでもある。
特に、コミュニケーションが苦手なタイプの子どもだと、本人の意見をより丁寧に聞かないと、二次障害につながりかねない。