あなたの家に古い知り合いから電話がかかってきて、ひさびさに会うことになる。
ファミレスで話しているとおもむろに、
「絶対に儲かる職業があるんだけど……」
とマルチビジネスの勧誘をはじめた。
そんな経験がある人はいないだろうか?
やんわり断ろうとしても、グイグイと説得され、しかも知人の先輩だという人も登場しダブルで説得される。そんな地獄のような目にあった人は少なくない。
同じような手口で、新興宗教団体が入信を勧めてくるケースもある。
かなり強引な勧誘をすることで有名な仏教系新興宗教の勧誘マニュアルを読んだことがある。
まずいきなり断られないように、念入りに時間をかけて友達になる。その後、ファミレスや喫茶店へ誘導し、そこで勧誘する。
最初はまず
「この宗教に入ったらこんなにいいことがあった」
というような現世利益的な話をする。しかしそれで入る人は、なかなかいない。次に
「あなたがこの宗教に入らなければ、日本や世界が滅ぶ。それでもいいのか?」
と相手に詰め寄るという。相手が否定的なら
「もしこの予言が当たって家族が死んでもあなたはいいのか? あなたは後悔しないのか?」
と情にからめて言い、それでも断るようなら
「あなたはうすっぺらい人間だな。がっかりした」
と吐き捨てるように言えと書いてあった。だれでもがっかりされるのは嫌だから、思わず
「ちょっと待って……」
と食いついて来る場合があるそうだ。
それでもダメな場合、最終的には
「お前は罰を受ける。死後地獄に堕ちる」
と相手を脅せと書いてあった。
これはあからさまに脅迫だ。
彼らのはたとえ話で地獄を出しているのではなく、本気で地獄を信じている。
その団体は勧誘の際、暴力を奮い警察沙汰になったとたびたび報道された。
かなり厄介な団体なのだ。
このような勧誘を受けると、多くの人は
「なんとか討論で勝って、断りたい」
「相手を怒らせないように断りたい」
「人間関係を破壊せずなんとか穏便にすませたい」
などと思ってしまう場合が多い。
だが、これは相手にとっては思う壺なのだ。
あなたにとっては、初めての勧誘かもしれないが、相手にとっては数十回目の勧誘だ。
討論をしても、相手は数多くのケースを経験しているから、まず勝てないだろう。いいように、言い負かされるのが落ちだ。
そもそも討論に勝ったから正しいわけではない。単に討論が強かっただけだ。それ以上の意味はない。