元火葬場職人は見た! ~自分の軽トラで遺体を運ぶ人・親族同士の遺骨の奪い合い~

そのほか

日本は亡くなった人は火葬しなければならない。だから、あらゆる宗教の人が、火葬場に来る。宗教ごとに対応は変わるのだろうか?

「宗派によって対応は変えています。仏教はお焼香を出しますし、神道だと榊を飾ったりします。キリスト教の場合は献花台を出します。基本的にはこれくらいの違いなのですが、キリスト教の方には、『骨を灰になるまで焼いて欲しい』とお願いされることが多いです」

遺族の願いは叶えてあげたいが、灰になるまで焼くのは難しいという。普通は長くても90分ほどで焼き終わるが、灰になるまでとなると、何時間も焼かなければならない。炉がそもそもそういう風には、作られていないのだ。

「もし全部灰にして良いなら、完全なオートメーション化をして、灰になるまで焼き切るシステムが作れると思います。それは実はそれほど難しいことではなく、そうなれば職人もいらなくなると思います。
遺骨を残すために苦労して慎重に焼くわけです。それくらい日本人は遺骨に対するこだわりが強いです」

お骨上げの時に、骨の奪い合いが始まることは珍しくないという。
引き取り手が複数ある場合、分骨と言って小さい骨壷に分けることがある。その場合、喉仏の取り合いになる。
喉仏とは男性の喉にある出っ張りのことではない。あれは軟骨なので、火葬するとなくなってしまう。
第二頚椎(上から二番目の首の骨)であり、この頚椎には歯状の出っ張りがあるため、仏様が結跏趺坐しているように見える。

「喉仏は一つしかないですからね。遺骨の前で取り合いがはじまります。みなさん、お通夜を経て、火葬場へ来ていますから、疲れていて苛立っている場合が多いんです。ケンカになってしまうこともあります」

ただ、逆に遺骨はいらない、という遺族もいる。その場合残った骨は、合同埋葬地に埋葬される。火葬場の敷地内や霊園の中に埋葬地がある場合も多い。

「しばらく残骨倉庫と呼ばれる場所に保管します。一週間~二週間で、骨業者と呼ばれる業者に運ばれて行きます」

骨業者は市からの委託で動いている。
彼らの収入は、遺族が棺桶にいれたアクセサリーや歯のかぶせもの、人工関節などの、金属だ。金、銀、プラチナなどの金属を回収して、収入に変えている。

「レアメタルは埋蔵量が決まっているわけだから、ただの心情で埋めてしまうより、再利用したほうがいいですよね。
親族が亡くなった時は、アクセサリーなどは外したほうが良いです。どうせ回収されてしまうわけですし、アクセサリーを入れることで遺骨が綺麗に残らなくなる場合もあります」

ガラス製品が溶けて喉仏に張り付いてしまったり、金属のせいで色がついてしまったりと、弊害はあるという。

「骨に色がついていると『花の色がつきました』と説明する場合が多いですけど、ウソです。金属が燃えたせいですね。お骨を綺麗にのこしたいなら、なるべく棺桶の中に物を入れない方が良いです」

火葬ならではの苦労やトラブルもあるけれど、ただ下駄さんは火葬という遺体の処理方法は好きだという。

「火葬は好きですね。遺体が炉に入って、数時間後には骨になって帰ってくるじゃないですか。完全に形が変わるわけです。だから『亡くなったんだな』と心の中で納得しやすいと思うんです。
土葬だと、なんだか踏ん切りがつかないというか、まだ居るんじゃないかな? とどうしても思ってしまいそうです」

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