多くホームレスにとって、死はとても近い場所にある。
野外で寝るという行為は、想像するよりもずっと心身に負担が大きい。
僕も何度かホームレスのテント村で寝たことがあるが
一番厳しかったのは寒さだった。
適当に路上に寝ると、地面にドンドン熱を吸い取られてしまう。
僕が寝たのは10月だったが、しばらく寝ていただけで身体は芯まで冷え切ってしまった。
ガタガタと体が勝手に震える。
段ボールを敷くと少しはマシになるがそれでも寒い。
1~2月だったなら、もっとずっとしんどかっただろう。
大阪のドヤ街西成では、冬場には“すのこ”を貸し出していた。
すのこはゲタ状になっているので、熱が奪われづらい。
それだけで随分、マシになる。
とはいえ当たり前だが、つらい。
寝ていられないくらいつらい。
つらいから夜中は歩いて身体を温めるという人もいる。
歩きながらアルミニウム製の空き缶を集める。
そうして、夜よりは気温が高い日中に睡眠を取る。
野宿生活をする者の、ギリギリのサバイバル術だが、理不尽な攻撃をされることがある。
「公園で寝ていたら、サラリーマンに
『昼間からグーグー寝やがって!! 腹が立つ』
と怒鳴られることありますよ。
サボって生活しているように見えるんでしょうね」
人には人の事情がある。
目に見えた事象に、反射的に攻撃してはいけない。
冬に寝るために酒を飲む人もいる。
たしかにアルコールを飲むと体がカッカと熱くなる。
だがアルコールを飲むと身体の熱の調節機能が効かなくなっているのだ。
雪山で遭難しているような状態なら“気付け”としてのアルコールもありかもしれないが
通常は悪い影響しかでない。
暑く感じて、薄着で寝てそのまま凍死してしまうこともある。
もちろん夏場だって過酷だ。
昨今は特に酷暑日が続くようになった。
クーラーもない小屋の中で寝ていたら熱中症になるのは目に見えている。
暑さは凌ぐのがとても難しい。
冬は着込めばとりあえず暖かくなるが、夏は裸以上には脱げない。
ホームレスの多くは身ぎれいとはいい難いため
図書館などの公共の施設で涼んでいると嫌がられることも多い。