皆さんはホームレスに対してどのような印象を持っているだろうか?
「叫んだり、暴力をふるったりする危ない人たち」
「何年も風呂に入っていなくて、垢だらけでひどい臭いがする」
「いつも酒を飲んで泥酔している」
そんなイメージを持っている人も少なくないだろう。事実、そのイメージは完全に間違っているわけではない。実際に取材をしていると、そのようなホームレスもいる。ただ、割合で言えば決して多くはない。目立たぬよう、地味に寡黙に生きている人がとても多いのだ。ではなぜ、そのようなエキセントリックな人たちが印象に残るかと言えば、それは彼らが分かりやすく目立つからだ。奇行を働くホームレスは、大勢の人目につくのだ。
ホームレスの中には、人前でズボンを脱ぐ、人が通っている路上で大小便をする、など常軌を逸した行動を取る人が一定数いる。冗談や悪ふざけでやっているわけではなく、精神に障害があるのは明白だ。そのような障害があるがゆえに「悪目立ちするホームレス」は、ホームレスの社会の中でも孤立してしまう場合がある。ホームレスに話を聞いていると、そういう悪目立ちするホームレスに対して、
「アイツはキチガイだから近寄ったらダメだぞ」
「酒を飲んでいる奴らはみんな頭くるっているから関わったらいかん」などと、
忠告を受けることがよくある。実際に、話しかけると手に持っていた物を投げつけられたり、暴言を吐かれたりする。たしかに関わらないほうが良かったと思う場合もあった。
病的に片付けることができず、寝床の周りをゴミだらけにしたりする人もいる。商店のシャッターの前などを汚してしまうと、お店の人は非常に迷惑をする。そして「もうホームレスは寝かさない!!」とホームレス全体を排除されてしまう。そうすると、おとなしく寝ていた他のホームレスは困ることになる。結果、片付けられないホームレスは、嫌われる、避けられる、という状態になる。
精神を病んでいるホームレスの中には身体を清潔に保つことが難しい人も多い。風呂に入らないのは当たり前。毎日、ゴミ箱に手を突っ込んで空き缶を拾ったりしているため服からも悪臭は漂う。それで駅の通路で足の垢をとったりすると、みんなが顔を歪めるほどの臭いが充満する。
かつて西武池袋駅の近くでいつも悪臭をふりまいているホームレスがいて、通行人はみな殺意のこもった目で彼を見ていた。