DVと虐待・マインドコントロールの被害者たち ~北九州連続監禁殺人事件 おすすめ2冊~

コラムそのほか

今日は、世間を震撼させた北九州連続監禁殺人事件に関するおすすめ2冊をご紹介する。

 

1冊目は
「消された一家―北九州・連続監禁殺人事件」(新潮文庫) (日本語) 文庫 – 2009/1/28

豊田 正義(著)

著者の豊田正義氏は

1966(昭和41)年、東京生れ。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨークの日系誌記者を経て、フリーのノンフィクションライターとなった

 

犯罪事件に特化した方というよりも、著書を見ていると家庭問題(DV)などを幅広く書いている方。事件の凄惨な様子を裁判ともう一人の加害者 緒方純子被告とのやり取りから丁寧に取材している。

 

あまりにも凄惨すぎて報道規制がかかったほどの事件なので、ご存じない方もいると思うが主犯は松永太というサイコパスの男。この男に通電や行動の制限などの虐待を受けた緒方純子を中心として、虐待により支配された一家がお互いに殺し合い・死体を解体した結果、6人の殺害と1人の傷害致死という犯罪史上まれにみる凶悪犯罪へと発展した。

 

遺体の解体・虐待などの詳細も掲載されているので暴力的または猟奇的な記述・表現が多く出てくる。そういったものが苦手な方は読むのを避けたほうがいいだろう。

 

この裁判では、加害者である緒方純子被告の「DV被害者」としての「なぜ彼女は虐待され、DVを受けながらも逃げられなかったのか」という心理に踏み込んでいるところが興味深い。この本を読むと誰もが思うのは、太ももや胸に焼き印や入れ墨をされても、逃げられず、自分の親族を6人も手にかけてしまった緒方被告が「なぜそんな男から逃げなかったのか」ということだと思う。

 

豊田正義氏は緒方被告に虐待や監禁被害者の心的外傷(トラウマ)研究の第一人者であるアメリカ人精神科医、ジョディス・L・ハーマン医師の著書「心的外傷と回復」(中井久夫訳、みすず書房)を担当検事官も検察側の論拠として使っていると記している。

 

 

また、緒方純子自身もこの本を読み、自分自身の異常な状態を理解し、人間性を取り戻していく。加害者であり被害者でもあった緒方純子が自身のトラウマと向き合い、人間性を取り戻していく過程がこの事件の唯一の救いである。

 

残虐さ・悲惨さよりもマインドコントロール、虐待や支配などにより、いかに人は無力となるかが興味深かった。

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