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元TOKIOの山口達也容疑者、飲酒運転で逮捕。アルコール依存症でホームレスになった人たちもいる。酒で人生を失う人たち(再掲載)

元TOKIOの山口達也メンバーが、酒気帯び運転でバイクを運転し、事故を起こしたとして警視庁に現行犯逮捕された。SNSでは怒りの声や呆れた声が上がっている。もちろん、彼は断罪されるべきだろう。ただ、アルコール依存症は、本人の「やり直したい」という強い気持ちを打ち砕くほど、強烈な病だ。

 

自業自得、身から出たさび、因果応報と罵るのは簡単だが、アルコール依存症の怖さも改めて思い知っておきたい。誰だって、いつ何らかの依存症になるか分からないのだ。以下は、以前掲載した、酒が原因でホームレスになってしまった人たちのルポだ。

 

 

 

ホームレスになった理由に、「飲酒・ギャンブル」をあげる人は8・9%(ホームレスの実態に関する全国調査)だ。だが、実際取材をしていると、その数字以上に酒によって野宿生活を余儀なくされている人は多いように思えた。

 

今回は、僕の20年にわたるホームレス取材の集大成である『ホームレス消滅』(幻冬舎新書)から、今回はホームレスとアルコールについて述べている2箇所の部分を公開したい。

 

 

ホームレスとアルコール

また、ホームレスに話を聞いていると、アルコールが原因で体調を崩しているケースが多い。2015年夏、荒川の河川敷で、上半身に刺青が入っている、明らかにカタギではない中年ホームレス(50代)を取材した。彼はお腹の真ん中に傷があった。

 

「俺はここに引っ越してきてまだ3日だもん。その前は山谷で生活してたんだ。酒の飲みすぎで胃ガンになっちゃってさ。胃を取っちゃったんだよ。こないだ内視鏡を入れたら大丈夫だっていわれたよ。ただ、たまに食道が詰まっちゃうことがあるんだよ。そうなったら、氷水をぐぐぐぐっと飲んで入れて、なんとか通すんだよ。そうすりゃまた食べられるんだ。はっはっは」そんな原始的な方法で大丈夫なのか不安になった。

 

「ガンになる前は、リサイクルやってたんだよ。テレビ、冷蔵庫、洗濯機を拾ってきて、直してね。けっこう儲かってたんだ。テレビの取材とかも来てたんだよ。雑誌で漫画化されたこともあるんだぜ。でもある日、すげえ気持ち悪くなっちゃってさ。ついでにウンコも真っ黒になっちゃった。こりゃちょっとやべえなって思って病院行ったら、ガンだって。女子医大に行ったら、2週間で治療が済んだからよかったけどなあ。はっはっは」ちっともよくはないと思う。

 

「ガンになったのが3年前。5年間再発しなかったら、もう大丈夫っていわれてるんだけどね。そもそも俺の家は、ガン家系ではないんだけどな。まあ酒飲みすぎたのもあるかもしれないけど、井戸水飲んでたからさ。ピロリ菌が混ざってて、それでガンになっちゃったんじゃないかともいわれたよ。もうガンになっちゃったから、仕方ないから酒もやめてさ。公園の草むしりの仕事とかで地味に食いつないでるよ。オケラだよ、金も何にもないよ~。苦労も何にもないけどな。はっはっは」

 

なお、病み上がりで暑い所で生活するのはつらくないかと尋ねると、頭痛がすると言い出した。そして「昨日、ウイスキー1本飲んじゃったから。もう調子悪い」と打ち明ける。酒はやめたといっていたのだが。「酒は基本はやめてる。ちょっと飲んだだけだから大丈夫だよ。細かいこと気にしてたら、ガンになるよ。はっはっは」この中年ホームレスは底抜けに明るかったが、話の内容は、そこそこ深刻だ。ただ、彼のように酒の飲みすぎで体調を崩す人は多い。

 

 

ホームレスの話を聞いていると、真面目なホームレスから「酔っ払い(のホームレス)はタチが悪いから、接触しないほうがいいよ」といわれることがある。たしかに、ドヤ街や上野公園では酔っ払ったホームレスがたくさんいた。僕は酔っ払ったホームレスにも話しかけたが、やはりみんなやたらとタチが悪かった。山谷であった元自衛官だという50代のホームレスには、昼から夜まで延々と付き合わされた。もうお開きにしたいと思っても、終わらせてくれない。いっていることは堂々巡り。

 

「写真は、腕で撮るんじゃない!心で撮るんだぞ!」などカメラが趣味だというこの男性に精神論を聞かされて辟易した。とにかくベロンベロンになって騒ぐので、出入り禁止 になっているお店も多かった。酔っ払ってのケンカも多く、顔にアザを作っている人も多い。また、酔っ払うと、体温の調整がうまくいかなくなる。冬場でも布団に入っていると暑いので、そのまま外で寝てしまう。そして、次の日に凍死してしまう人もいた。

 

個人的には、ホームレスにとって酒は害悪でしかないと思う。ただ、多くのホームレスは「そんなこといったって、飲まなきゃやってられないだろう! 酒飲むしか楽しみがないんだ!どうせもう何年かで死ぬんだ、ほっといてくれ」という。そういわれてしまうと、返す言葉がない。

 

異様な空気を放っていた「いろは会商店街」

山谷には「いろは会商店街」という大変長い商店街がある。1970年代の写真を見るとずいぶん賑わっているが、それに比べて2000年頃はシャッターを閉じた店も多かった。周辺ではホームレス同士、花札で賭けをしている姿もよく目についたのだが、話しかけると、「見てんじゃねえ」「あっち行けおら」「どらぁおらぁあ」と恫喝されることも多かった。近くには「マンモス交番」と呼ばれる山谷地区交番(現・日本堤交番)があるのだが、賭け花札は無視しているようだった。

 

なお、マンモス交番という名前は、マンモスのように大きい交番という意味から来ている。後述する要塞のような西成警察署と比べると小さいが、地上4階建てで建物内に駐車場付きのため、交番レベルの建物ではない。この交番は1959年に、山谷地区の環境を浄化するために建てられた。警視庁のホームページを見ると、「交番では、喧嘩や酔っ払いの保護取扱いが多いです」(2020年4月時点)と書かれてある。以前、この交番ができて間もない頃の写真も見たことがある。当時は、ドヤ街は血気盛んで何かあれば暴動に発展しかねないピリピリした空気があったという。1960年の写真では、警察の周りを労働者たちが取り囲んでいた。1020人のレベルではなく桁が1桁、もしくは2桁違う。吉野通りが人で埋め尽くされるほどだ。こんなにもたくさんの人がいて、こんなにも活動的だったんだ、と驚いた。

 

 

いろは会商店街はアーケードがあって雨風に当たらずに済むためか、夜には多くのホームレスが布団にくるまって寝ている光景が見られた。商店街の入り口に酒屋とお酒の自動販売機があり、そこで酒を買って飲み、泥酔している人が多かった。カップ酒を飲んだ酔っ払いが床にコップを叩きつけて割るので、そこら中ガラスだらけになっていた。第1章でもホームレスにアルコール依存症の割合が少なくないことに触れているが、ドヤ街にいるホームレスはとくにお酒を飲むことが好きである。そして、飲んで仕事を飛ばしたり、酔っ払ったまま仕事に行ったりした結果、手配師から声がかからなくなったといったように、酒のトラブルが発端となってホームレスになったと明かす人も多い。

 

なお、いろは会商店街の酒の自動販売機はかなり前に撤去されたし、2018年には商店街全体のアーケードも取り外されてしまった。商店街で寝るホームレスはめっきり減ったが、陽光にさらされたシャッター商店街はなんだか、以前にも増して白々しいような雰囲気になっていた。

(以上、5月28日刊行『ホームレス消滅』(幻冬舎新書 村田らむ)https://www.amazon.co.jp/dp/4344985931より)