多摩川河川敷を歩いていると、橋の下に大きな小屋を見つけた。大きさもさることながら、小屋の周りには電化製品や廃材が置かれていてアート作品のような雰囲気になっている。思わず足を止めて眺めていると、
「ようあんた、その家に用があんのかい?」
とちょっとつっけんどんに声をかけられた。見ると、自転車に乗った70歳前後のおじさんだった。ちょっと訝しんだ目でこちらを見ている。
「俺は、そこに引っ越してきた人にお世話になってるからよう。いたずらとかされたら、困るんだよ」
と言われた。素直に
「すいません、ちょっと見てただけです」
と謝る。
ただ「引っ越してきた」というのが気になったので、事情を聞いてみる。
「そこ住んでた人いなくなって空き家になってたんだよ。で、知り合いが引っ越してきたの。
小屋はよく人がいなくなるよ。ただどっかにいなくなる場合もあるし、死んじゃうこともあるよ。そこに住んでた人はたしか死んだよ」
とこともなげに言った。
ただ住んでいた人が亡くなったという話を聞いて、僕の顔色が変わったのをおじさんは察したようだった。
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