「警察官だって3日食べてないって言えば500円くらいくれるよ」と語る、多摩川の河川敷で生活するホームレス。餓死、病死、飛び降り自殺……死はいつも近くにある。

そのほか

「結構、ここいらで自殺してる人も多いよ。ホームレスも一般の人も。橋から飛び降りたりしてな。あんまり話題になってないから、たぶん役所が揉み潰してるんじゃない? 自殺の名所になっても困るだろうからさ」

というと、おじさんは楽しそうに笑った。

たしかに河川敷で生活しているホームレスに話を聞いているとたまに
「橋からの飛び降り自殺を見たことがある」
と耳にする。多くの人は
「警察官に何度も何度も同じ話聞かれて大変だった」
と続ける。

 

日本で自殺スポットと言っても橋はあんまりピンとこないが、アメリカのゴールデンブリッジや、韓国のマポ大橋は自殺の名所になっている。報道があいつげば、自殺スポットとして人が集まってくる可能性はある。

 

しばらく話をしていたので警戒心が弱まったのか、よもやま話に付き合ってくれた。
河川敷のほうを軽く指差す。

 

「ここらへんの風景も変わったよ。昭和30年台はゴルフ場だったんだよ? でもボールが電車にあたったらまずいってんで、バイクのサーキットになったんだ。
んでそれも壊して、屋根付きの休憩所とかになってな。そして今は木を植えて、水が流れる公園にしてるんだ。これもあと何十年かしたら違うもんねなるんだろうけどよ。まあ俺は70でもうすぐ死ぬから関係ねえけどな。わはははは」

 

実際、話を伺った数年後である2019年の10月には台風による被害もあったことから、より安全になるよう川、河川敷ともに工事が勧められている。
おじさんは、頻繁に“死”を口にする。だが言い方は明るい。それに、まだまだ元気そうである。

「そりゃ元気だよ。まだまだ飯を食わなきゃいけねえからな。俺は食うために生きてんだよ」
と言った。「生きるために食う」のではなく「食うために生きる」のか。なんだか、凄味みたいなものを感じた。

「まあここいらじゃ、よく人が死んでるから、普段から私服の刑事(デカ)がウロウロと回ってるよ。俺らにも『身体大丈夫かい?』なんて聞いてくるよ」

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