ミュージシャン、作家、怪談師など数多くの顔を持つ下駄華緒さん。下駄さんは火葬技士1級を持ち、火葬場と葬儀屋で働いた経験がある。雑誌『本当あった愉快な話』(竹書房)では『最期の火を灯す者』という火葬場での体験を元にした漫画の原作を書かれている。
今回はそんな下駄さんに、様々なパターンの火葬場の対応について伺った。
まずは、ホームレス生活をしている人の場合はどうなのだろうか?
「火葬場では“保管”と呼ばれることが多いですね。市内の冷蔵庫で保管されていた人たちだからですね」
氏名・本籍・住所がわからず、遺体の引き取り手もない死者は「行旅死亡人」と呼ばれる。遺体そのものは、警察当局から葬祭業者に運ばれ、そこで保管される。
「そういう遺体は、朝一で運ばれて来ることが多いです。そういう人たちは例えば『二十一郎』『四十郎』みたいな名前を付けられていましたね」
保管されていた時の数字だろうが、さすがにそのままでは無機質すぎると思ったゆえの処置だろう。
「『自称たっちゃん』とか書かれている遺体もありました。たぶん仲間うちでそう呼ばれていたんでしょうね。中には『自称加山雄三』なんてあからさまにウソと思える名前の人もいました」
彼らの遺骨は、その後火葬場で保管するという。斎場保管と呼ばれ、冷暗所のような場所にズラッと骨壷が並べられている。下駄さんの働いていた火葬場には常に、300の骨壷があったという。
引き取り手が現れることもある。連絡を受けて、自分の親の遺骨を引き取りに来る。
ホームレス生活をしていた頃の、友人が遊びに来ることもある。
親族でなければ遺骨を引き取ることはできないし、保管場所に入ることもできない。