真冬の路上で眠る、ホームレスたち。昨日まで元気だった人が、あっさりと凍死することもある。

そのほか

当時の上野公園では、お酒を飲む人が多かった。野宿生活をする者どうし、酒会を開いて騒いでいる人もいた。一般の客からクレームが入ることもあり、酒を飲まないホームレスからは

「酒飲む奴は近づいちゃダメだよ。ろくなことがねえからな」

と眉をひそめながら忠告された。
だが酒を飲む人には、酒を飲む人の言い分もある。

「こんな寒い日は酒飲まなきゃやってられないんだよ。酒をカーッと飲んで、身体暖かくして寝ないと死んじゃうよ」

と言われた。気持ちは分かる。酒を飲むと身体はポカポカと暖かくなった気がする。
だがこれは非常に危険なのだ。体温は一旦上がった後に、急激に下る。急激に体温が下がる時に、睡魔が訪れる。その時寝るのが、いわゆる寝落ちだ。その時に、外で寝ていたら凍死する可能性が非常に高くなる。

「お酒飲んで熱くなって、服を脱いで寝ちゃってそのまま死んじゃう人多いよ」

という話を聞いたことがある。だから酒を飲んで寝るのは危険なのだ。
そんな話を、同行者がホームレスの男性に語ったことがある。男性は

「そんなこと言ったって、酒でも飲まなきゃやってられないんだよ!! 他に楽しみもないんだよ!!」

と怒った。たしかにそれもそうだろうと思う。

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