「あいつは真面目に修行してないからもう人間には生まれ変われない」と出家信者は語った~潜入取材から見えてきた「まじめ」な人がカルト宗教にハマる実情~

そのほか

その団体は、住宅街の普通の一軒家を教団の根城としていた。大きな地下室があり、そこでいつも修行していた。
その団体の基本は仏教だが、日本では多い大乗仏教ではなく、上座部仏教(小乗仏教)に近い考え方だった。つまり「南無阿弥陀仏」と唱えれば阿弥陀様が救ってくれるという「他力本願」の仏教ではなく、修行をしなければダメだという考え方だ。
自分を救うのは、自分だけだ。まじめに毎日修行をした人だけが、救われる。だから、みんな非常にまじめに修行していた。

週末には徹夜で修行が行われることもしばしばだった。
教団に行くと、まずは地下に降りて、そこで全員で五体投地をする。
立った状態から、手を上に上げ、ひざまずき、そして手足を前に伸ばし地面に横たわり、立ち上がる。
それを何度も何度も1時間繰り返す。
会場には、大きな音で好戦的なクラシック(ワーグナー的な曲)がかかっていた。
五体投地を一時間やっただけで普通の人は参ってしまうだろうが、これは準備体操のようなものにすぎない。

そこからはそれぞれの修行が続く。
教団が作ったビデオを見たり、頭に修行用のヘッドギアをつけて瞑想したり、基本的におのおのが自分のしたい修行をする。
ちなみに、修行と修行の間に原則的に休憩はない。その教団では、食べること、寝ること、性行すること、は悪とされていた。だから、修行と修行の間も休まないのだ。
うたた寝してしまうと、竹刀で太ももを打たれた。

全員でする修行は五体投地以外では、経行(きんひん)と呼ばれるものがあった。経行とはつまり、速歩きのことだった(飽くまでその教団内では)。
深夜の2時~3時頃、全員でスタスタスタと早歩きをして、近所の大きい公園まで行く。そして到着した後は、公園の池の周りをグルグルとひたすら歩き続ける。
信者の中にはいわゆる修行服を着ている人もいた。テロを起こした宗教の後継団体が深夜に徘徊しているのだ。はたから見たらかなり怖かったはずだ。

ただ、信者の人たち一人一人は、まじめで優しい良い人が多かった。
公園からの帰り道、100円ショップでアルバイトしている若い女の子が、人生の相談をすると、先輩信者がまじめに答えていた。ただ、
「太ももを鍛えるとクンダリニー・ヨーガが……」
とだんだん話は変な方向に行っていた。
しばらく信者として通っていたら、居心地も良くなった。
しかし、ある講義を受けていた時、圧倒的な「違和感」を感じたことがあった。

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