孤独死した独居老人の特殊清掃現場を取材。~時間と共に増す臭い群がるハエ~

そのほか

3月半ばになって、そろそろ暖かくなってきた。

孤独死が見つかる季節だ。
春になって孤独死する人が増えるわけではない。気温が上がると、死体の腐敗が促進しガスが漏れ始めるからだ。臭いが漏れて、周囲に住む人が警察に通報して、発覚する。

僕がはじめて取材した孤独死の現場も、臭いで判明した現場だった。
ロフトつきの1Kの賃貸アパートだった。学生が住みそうな雰囲気の物件だが、住人は70歳の男性だったという。死後一ヶ月で発見された。

そのアパートには一般的な鍵(ピンシリンダー錠)はついておらず、ナンバー式のカギだった。亡くなった本人しか番号が分からない。そのため警察は窓ガラスを割って中に入っていた。

窓は大きく割れないように警察がガムテープで補修していたが、それでも小さな穴は開きっぱなしになっていた。
そこから中にハエが入り、室内で繁殖していた。無数のギンバエがカーテンに止まり、中で飛び回っているのが見えた。
いつもこういう現場に来て思うのは「ハエの性能」の素晴らしさだ。今回は窓に穴が空いていたが、穴が空いていなくてもどこからか中に入って繁殖している。

窓を開けて、殺虫剤を大量に散布する。窓は大きく開けると、腐敗臭が周りに漏れて迷惑がかかるため最小限しか開けない。
ハエの動きが収まったのを見て、清掃業者の職員が中に入る。筆者も続いて、窓から中に入った。
ズンっと脳に直接響くような強い臭いが鼻についた。青木ヶ原樹海の取材で何度か死体を見たことはあったのだが、このような強い死臭ではなかった。アパートは気密性が高いから、臭いが拡散しない。臭いが充満していたのだ。職員が

「室内も1カ月ほどほったらかしだったから、買い置きの食材も腐ってますね。遺体だけでなく、ハエはそこからもわいたみたいですね」

と教えてくれた。職員は上下を防護服で身を包み、顔にはガスマスクをつけている。

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