『朗読サービスで情報を手に入れる』大きなメリットと小さなデメリット

僕の欠点の1つに『読むのが遅い』というのがある。それ以外にも『背が低い』『歌が下手』『足が遅い』など欠点はいくらでもあるのだが、幸いなことにライター業にはあまり関係がない。ただ、本を読むスピードが遅いのは、結構困ることが多い。
僕が本を読むスピードは、だいたい音読するのと同じか、それよりはやや早い程度だ。がんばれば少しは早くなるが、すぐに疲れてしまうし頭に入ってこなくなる。最近では、加齢で目も悪くなったためますます読書スピードは落ちている。
仕事がら、インタビューする方の著作を読んだり、ルポ執筆の下調べの本を読んだりと、読まなければならない本がたくさんある。
だから個人的に読みたい本はどうしても後回しになる。
リアル書籍も電子書籍も積ん読が溜まっていて、おそらく死ぬまでに消化できないんじゃないかと危惧している。
そんな状況ではあるがそれでもやっぱり読書はしたいと思い取り入れているのが『朗読サービス』だ。
本の朗読サービスは、かなり昔からあった。個人的には、NHKラジオ第1放送で放送されていた『私の本棚』という番組が懐かしい。
文芸作品やエッセイをアナウンサーらが読む番組で、昭和24年から59年に渡って放送されていた。小学校の頃たまたま聞いた、向田邦子のエッセイが面白くて、ずいぶんハマって読んでいたのを覚えている。
テープレコーダー、CDと音声メディアでも朗読モノは発売されていた。松本清張の『張込み』や『天城越え』を『刑事コロンボ』の声優でおなじみの小池朝雄が朗読していたり、筒井康隆の『熊の木本線』を『紅の豚』の森山周一郎が朗読していたのを覚えている。
そして現在、僕が利用している朗読サービスは『Audible』だ。Amazon上で利用することができる、ネット上のサービスだ。
『Audible』に入会すると、月額1500円の会費で毎月1コインが支給される。1コインで好きなオーディオブックを買って聞くことができる。コインが0もしくは1の状態ならば、追加で1枚1200円で3枚まで購入することができる。直接、定価でオーディオブックを購入することもできるが、これはずいぶん高くつく。
単行本1冊1200円~1500円と考えると、少々高いように感じるかもしれない。たとえば、ミヒャエル・エンデの『モモ』は新書版、電子書籍版が880円だから確かに少々割高になる。
ただ、『モモ』の再生時間は12時間46分と長いため、実際に利用していると
「割高だなあ……」
とはあまり思わない。
12時間は短いほうだ。20時間を超える作品も少なくない。
ちなみに『モモ』の朗読は、『名探偵コナン』の声優でおなじみの高山みなみが担当している。
ちなみに無料で聞くことができるコンテンツもあるので、とりあえず聞いてみてから考えるのが良いかもしれない。
では、ここからは『朗読サービス』の良い点、あまり良くない点、について考えていきたいと思う。
まずは良い点。
朗読サービスは基本的には「ながら」で利用することが多い。個人的には、漫画の執筆をしている時が最も良く使う。朗読サービスを聞きながら、『下描き~ペン入れ~スクリーントーン貼り』の作業をする。毎月、一週間程度はこの作業に追われるため、数冊のオーディオブックを聞き終える。
また最近、ダイエットのためにウォーキングをしているのだが、歩きながら聞いている。楽しく歩くことができてとても良い。
料理をしたり、食事をしたり、風呂に入っている時にも聞くことがある。
マルチタスクで作業ができているから、時間の節約になっている。
ただこれは、僕が『本を読むのが遅い』という欠点があるからだとも言える。速読ができるような人だったら、朗読サービスなんてかったるいと思うかもしれない。
そして次にあまり良くないと思う点を上げていく。
まず最大の欠点は、作品の数が圧倒的に少ないことだ。これはオーディオブックの製作の手間を考えれば仕方がないことだとも言える。基本的には「ベストセラー作品と、古典的作品がちょこちょこある」という感じだ。もちろん、人気作品でもオーディオブックになっていない作品の方が圧倒的に多い。
電子書籍と比較したら、1000分の1以下の作品量だと思う。だからよりどりみどり、というわけにはいかないのがつらいところだ。
海外SFもオーディオブックで聞きたいのに、フィリップ・K・ディックの作品が揃っているくらいで他にはほとんどなくてがっかりする。また海外版では、スティーブン・キングの作品が多数あるのに、日本版がないので歯噛みをしたりもする。
逆に僕にとっては全く興味がない分野である『ビジネス・キャリア』『自己啓発・人間関係・子育て』は、小説よりは充実しているようだ。
2021年5月20日の夜に人気ランキングを見てみると、
1位『転生したらスライムだった件 1 』
(現在無料で読めるキャンペーン中)
2位『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』
3位『1%の努力』
4位『人は話し方が9割』
5位『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』
6位『夢をかなえるゾウ』
7位『幸せになる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教えII』
8位『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』
9位『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』
10位『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』
とこんな感じになっている。
意識高い系の人が聞きそうな、ラインナップがとても強いのが分かる。
僕は意識低い系なので、娯楽作品を充実させて欲しい。
作品数の物足りなさは、やはり利用している人がまだまだ少ないのが原因だろう。
僕はAudibleを3年以上利用しているが、
「Audibleってサービス楽しいよ」
と人に勧めた時に
「私も朗読サービスを利用しています!!」
と言う人に会ったことがないし、
「それは良いですね!! ぜひ私も利用してみます!!」
と言った人もいない。
残念な限りである。
もっと多くの人が使ってくれたら、作品数の充実、値段の改善などにつながるかもしれない。興味がわいた人は是非、利用してみてほしい。
これは『良くない点』というのとは少し違うのかもしれないが
「見ている風景と本の内容が混ざる」
という現象が頻繁に起きる。
例えば、AbemaTVに出演する際、井の頭通りを歩きながら『模倣犯』を聞いていた。その際、現実の風景と模倣犯のストーリー上の風景が結びついて脳に記憶されてしまったらしい。その後AbemaTVに行くたびに
「群馬の山道で練馬ナンバーの車が炎上」
する光景が脳に浮かぶのだ。
オーバーな言い方をするなら、フラッシュバックだ。
そういう場所がたくさんできてくる。
まああまり実害はないのだが、まれに混乱することもある。
鹿児島県を取材した際、海沿いに走る電車に乗りながら『ぼっけえ、きょうてえ』を聞いていた。
『ぼっけえ、きょうてえ』の舞台は、岡山県だ。
帰宅して鹿児島県の記事を書いていると、脳内には岡山の遊郭の怖い女郎が脳に浮かび上がってくる。
どうにも混乱してしまった。
だがまあ、あんまり危惧する必要はないと思う。
最後に、僕がオススメのAudible作品を3つ紹介したいと思う。
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの作品。「提供者」と呼ばれる子供たちが集められた施設での、奇妙な生活が描かれる。怖くて、とても切ない話だった。
『日の名残り』『忘れられた巨人』『わたしたちが孤児だったころ』もオーディオブック化されているし、待望の新刊である『クララとお日さま』もすでに配信されている。
『動物農場』 ジョージ・オーウェル
農場主ジョーンズを追い出し、動物による「動物農場」を設立した動物たち。だが、指導者になった豚たちによって、理想郷とはかけ離れた様相になっていく。
あまり長い作品ではないので、一気に聞くことができる。ジョージ・オーウェルのもう一つの代表作『一九八四年』も配信されている。
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
われわれサピエンスがどのように生存競争を勝ち残り、発展してきたのかを解説した一冊。非常にわかりやすく、斬新で面白い作品だった。かなり分厚いので、読むのに抵抗を感じた人でもオーディオブックなら入りやすいのではないだろうか?
人が神になる未来を予想する『ホモデウス』も配信されている。