川崎市では、アルミ缶の持ち去りを防ぐ狙いで、条例改正案を2021年9月に市議会に提案する方針を打ち出している。さらに違反者には罰則が科せる条項をつけた。
普通に生活している人で、路上でアルミ缶を拾っている人はほとんどいないだろう。
逆にホームレス生活をする人たちの大部分は空き缶を集めて、それを金属回収業を営む会社に売って現金化している。
つまりこの条例は、ほぼ100%ホームレスに向けてのものだ。
アルミ缶収集を禁じた場合、ホームレスの現金収入はかなり厳しいことになるだろう。
先日、ホームレスに対してあまり良く思っていない人と話すことがあった。
「別に外で暮らしたいなら暮らしたらいいよ。でもどっかの山の中で住めよな。渋谷とか上野とかタダで住んでるんじゃないよ」
と苦々しい口調で語った。
決して数は多くないが、そのような生活をしている人もいる。
13歳の少年時代からひとり山中の洞窟で生活した男性の半生を描いた『洞窟オジさん』(加村一馬/小学館)という単行本がある。
家出をした少年が、山中で蛇やイノシシを捕まえて食べるシーンがリアルに描かれていた。
だが、野宿生活をしながらそのような形で食料を手に入れるのは非常に難しい。多くのホームレスは食べ物を買うか拾うかして手に入れている。買う場合はまず現金を入手しなければならない。現金を手に入れるため、アルミ製の空き缶や紙類などの廃品を集めて換金する場合が多い。というより、他にあまり方法がない。