大都市ならどの通りにも自動販売機が数メートルごとに設置されている。マンションや巨大な団地から出る廃品も多い。
逆に人口の少ない地域に行けば行くほど、廃品を集めるのは難しくなる。
また、廃品を買い取ってくれる業者(金属回収業者、紙類回収業者など)も基本的に都市部でしか回収をしていない。ホームレスは自分の足で歩くのと自転車が移動手段なので、大都市部でないと廃品回収業は成り立たないのだ。
食べ物を拾う場合も、やはり都市部の方が有利だ。チェーン店やスーパーなどから廃棄される食品を定期的に手に入れることができれば、とりあえず飢えずにすむ。現在は各お店ごとの規則が厳格化して、廃棄食品を手に入れるのも難しくなってきている。
つまりホームレスの生活は、都市に依存しているのだ。
だから「どっかの山の中で住めよな」
というのは、実際にはかなり難しいのだ。
都市部でホームレスをやめて生きていく場合、選択肢としては、
「生活保護を受給してアパートで生活する」
しかほぼ残らない。
2004年から東京都では『ホームレス地域生活移行支援事業』がはじまった。公園に住むホームレスの住居を確保して、就労を支援し、公園は本来の機能を取り戻すのが目的だ。
当時アパートの空き部屋に2年間、格安の家賃で住むことができた。一旦住所ができれば、仕事も探しやすくなるし、生活保護も受けやすくなる。その頃から、生活保護の申請を受けやすくなりアパートへ移行するホームレスが増えた。アパートへ移行してしまったら、もはやホームレスではない。
先のホームレスに対してあまり良く思っていない人は、元ホームレスが生活保護を受給することも決してよく思っていない。実際、
「俺たちの税金で生活しやがって」
と言って憤慨していたし、そうやって怒る人は何十人も見てきた。