マイノリティのためのお役立ち情報&コミュニティ

反オリンピックデモ VS オリンピック反対に反対の政党 終わりなき罵声の末に平和はあるのか?

もう東京オリンピックの開会式まで、一ヶ月を切った。
オリンピック観戦を楽しみにしている人もいるだろうし、コロナの感染がおさまっていないのにオリンピックなんてやって大丈夫か? と不安になっている人もいるだろう。

 

実際のところ

「コロナは不安だけど、まあオリンピックが始まったら一応テレビで見るか」

くらいの温度の人が一番多いのではないだろうか?

 

筆者は、根っからのスポーツ嫌い、お祭り嫌いの人間である。
当然、オリンピックも好きじゃない。見たくないし、オリンピックの時には東京にいたくなかったので、本来オリンピックが開催される予定だった2020年7月24日から一ヶ月間は、スリランカに長期取材に出かけてやりすごす計画だった。
残念ながらコロナの影響でスリランカへは行けなくなり、またオリンピックも延長されてしまった。

 

それから1年が経ち、ワクチン接種はスタートしているものの、まだまだ感染はおさまっていない状態でオリンピックは開催されるようだ。
オリンピックは開催されても、僕はスリランカに逃げられないのがとても残念である。

 

冷静に考えて、現在の状態でのオリンピック開催を不安に感じるのは、いたって当たり前のことだと思う。オリンピックによって感染が拡大したり、医療が圧迫する可能性もあるだろう。

 

そんな東京オリンピック開催まで一ヶ月となった6月23日、新宿で大規模な『反五輪デモ』が開催されることになった。
知人のジャーナリスト藤倉善郎氏に「取材に行こう」と誘われて、渋々ながらついて行くことにした。
18時過ぎに到着したが、すでに現場は騒然としていた。複数の反五輪団体が都庁前に集結し怪気炎を上げていた。

「中止だ! 東京五輪」

「市民の命と医療が第一です!」

「Cancel the TOKYO Olympics」

などなど沢山のプラカードが掲げられ、怒声が飛び交っている。歩道に人がおさまりきらず、路上にあふれている。警察官と警備員が

「車道に出ないで!!」

「立ち止まらないで!!」

とギュウギュウと雑に押し戻している。

 

メディア、取材系の人もたくさん来ていた。テレビ局のカメラがプラカードを抜いて撮り、新聞社のカメラマンがパシパシと写真を撮っている。
僕も取材者としてのキャリアは長いのだが、普段は樹海やスラム街を目的なくテクテクと歩くような取材が多く、こういう注目されているニュースの現場には滅多にこないので戸惑う。フィールド全体を、見渡した感想は

「めっちゃ密だなあ……」

である。正直、すっごい帰りたい。


筆者は先にも書いた通り「お祭り嫌い」な性格なので、そもそもデモが苦手だ。

「現在の状況でオリンピックをやるなんて冷静に考えておかしい!!」
と言いたくなる人がいるのは分かる。

 

ただ、反対するのにこんなに密になっちゃっていいもんだろうか? 僕とは真逆でデモ活動が大好きな藤倉さんに、

「めちゃくちゃ人数も多いし、怒鳴りまくってるし、これでコロナが発生したら本末転倒なんじゃない?」

と聞いたところ

「このコロナ禍の中で東京オリンピックやるって国が言ってるんですよ!! だったら、反五輪デモだってやっていいでしょう!!」

と言われた。
いや、東京オリンピックを反対する理由は「コロナの感染拡大」が一番大きいはずだ、だから……。などと言い返そうかと思ったが、また屁理屈で返されて堂々巡りになりそうだ。
グッと言葉を飲みこんだ。

 

すると

「五輪オリンピックを中止するな!! スポーツの文化を壊すな!! こいつらが飛沫を飛ばしながらデモをやってる事自体が、オリンピックができるってことの証明だ!!」

とデモ隊を口汚く罵る声が聞こえてきた。

 

一瞬、僕が飲み込んだ言葉がケツから飛び出したのかと思ったが、ただ僕はそこまでキツイことは思ってない。
それにスポーツの文化とか壊れても全然構わないし。

「新型コロナはただの風邪!! 誰も病気で苦しんでません!! マスクを外そう!! ワクチンは危険だ!!」

などと言っている。

 

いやそれはもう全然思ってない。僕は、コロナにはものすごく感染したくないし、早くワクチンもバンバン打ちたい。

 

彼らは「オリンピック反対に反対」「反ワクチン」を訴える『国民主権党』だった。
反オリンピックの集会が行われている対面に、『ワクチン危険』『マスクを外そう』と書かれた選挙カーで陣取り、マイクで罵声を浴びせかけている。

 

国民主権党の党員の一人、元料理人の男性が、コック姿ノーマスクで反オリンピック集会の人たちを挑発して、一触即発の状態になっている。

その後、ギュウギュウな密な中、スピーチがあり、全員でデモのスタート位置に移動。
19時に、デモ行進はスタートした。

「何がの平和の祭典だ!!
コロナ解雇で仕事がない!!
コロナ賃下げで生きられない!!
生き抜くために戦おう!!」

と軽快な太鼓に合わせてシュプレヒコールがこだまする。その後に続くグループは、

「平和の祭典ウソっぱち!!
やってる場合かオリンピック!!
さっさとやめろオリンピック!!
中止だ中止、オリンピック!!」

と少し違うスローガンを叫んでいた。

 

様々な団体が参加しているから、デモの方式も少しづつ違う。訴える内容も少し違って面白い。

「じゃ、反五輪音頭でございます」

という声が聞こえてきた。

 

2021年に音頭て!!
三波春夫の『東京五輪音頭』のオマージュだろうか?

「オリンピックはいりません~♪
世界のどこにもいりません~♪
パラリンピックはいりません~♪
世界のどこにもいりません~♪
原発事故は終わってねえぞ~♪
聖火リレーの火を消すぞ~♪
聖火はナチスの置き土産~♪
監視をするな、ついてくるな~♪」

とめっちゃ攻撃的な音頭を朗々と歌い上げていた。

 

主催者側の声明によれば、コロナ感染拡大を防ぐために、十分なソーシャルディスタンスを取ったと言っているが、個人的には
「そうかなあ?」
という感じだった。

デモは都庁前から、新宿駅東口のアルタ前まで続いていく。新宿駅南口駅の坂を登る途中、デモを遮る形でバンが停まった。
またもや国民主権党だ。

「オリンピックは可能です。この行進自体がオリンピックはできるんだということを雄弁に物語っております。コロナは恐れるにたるような恐ろしい病気ではありません!!
もっと大きな声出しましょう!! まだまだ飛沫が足りねえなあ!! オリンピックできるじゃねえかこの野郎!!」

とかなり過激にキツイ言葉を、デモに参加している500人に浴びせかけている。
当然言われた人はカチンと来る。

 

僕は、デモ隊ではないけれど、それでもムカッとした。ほとんどの人は無視して歩いていくが、おさえきれず

「帰れ!! 帰れ!!」

と怒鳴り散らす人もいるし、自動車の窓をドンドンと叩く人もいた。自動車の助手席に乗っていた、国民主権党のコック姿の党員は、窓の外を歩く反五輪の人たちにゲラゲラと笑いかけていた。
漢字で『嗤う(わらう)』と書くのがふさわしい。あざけりの笑い。嘲笑である。さすがに少しゾッとしてしまった。

生物の本に

「笑顔というのはそもそも攻撃的な表情である。猿が歯を見せて威嚇していたのが変化して笑顔になった」

と書かれていたのを読んだことがあった。その時は「ふーん、そんなもんかねえ」と思ったが

今日はなんだかとても理解ができた。


デモ隊は、アルタ前にたどり着いた。
「ようやく解散だ~」
と思ったら、駅前の広場で総括が始まった。外国人がしゃべったり、どこかの代表っぽい女性がしゃべっている。

 

全然終わらない。僕は嫌気が限界に来てしまって、少し離れたライオンズクラブのライオンの像の足元に腰掛けた。

 

緊急事態宣言は終わったとはいえ、まだほとんどの飲食店はやっておらず、アルタの電光掲示板も消えている。
駅に向かって歩く人達の多くは、デモの大声が耳に入っても足を止めず、様子をチラリと見るだけだった。

 

好奇心をかきたてられるような表情の若者もいたが、ほとんどの人は冷たい表情をしていた。仲間同士で、

「オリンピックやるのもどうかと思うけど、デモをするのもね……」

と眉を潜めて喋っている人もいた。
たぶん、デモの中にいたら見えない表情だ。

 

しばらくその場で待ったが、それにしても全然終わらない。
怒声が響いてきたので聞くと、どうやらまた国民主権党とデモ隊が小競り合いしているらしい。心底ウンザリしたので近寄らなかった。藤倉さんは、警察官に撮影を妨害されて「糞ポリ!!」
と怒鳴って、すごい険悪なムードになったという。

 

40代後半がやるこっちゃない。

 

それからしばらくして、やっと解散になった後もデモ隊の一部はその場にとどまって、サンドイッチを作り、仲間同士で食べ始めていた。確かにどこの店も時短営業でやってないけど、「コロナ感染拡大するからオリンピックやめろ」って言った舌の根も乾かぬうちに会食するのは、あんまりイメージ良くないんじゃないかな~と思った。

まあでも人生なんでも好きなことをやったら良いと思うので、デモでも反デモでも会食でもやりたかったらやっても良いと思う。
警察に「糞ポリ!」と怒鳴っても良いだろう……いやそれは良くないか。

筆者はトボトボと家に帰って、ビールを一本だけ飲んでとっとと寝た。悪い夢を見た。

 

反五輪デモのノーカット版