そんなタニシさんの旅はもちろんストイックだ。『異界探訪記 恐い旅』ではひたすら心霊スポットや事故現場など恐い場所を回った。今回の旅もそのようなものなのだろうか?
「実は『死る旅』は僕が心霊スポットに飽きちゃった……というところから始まるんです。冒頭は『恐い旅』からの続きで、無理矢理に心霊スポットをめぐる旅をするのですが……。ただただ怪談を集めに行くことに虚しさを感じました」
タニシさんには前々から、心霊スポットや事故現場に『恐がりに行く』というのに、ずっと違和感を感じていたという。
『死る旅』の第二話のタイトルはなんと
『心霊スポットに飽きちゃった? 自我崩壊、目的のない旅』
である。
「どうしても心霊スポットって同じ場所になりがちなんですよね。誰かがすでに取材していたら、僕はとたんにやる気がなくなってしまうんです。
たとえば、らむさんとも青木ヶ原樹海に行ってますよね。それはそれでとても刺激的な経験でしたけど、僕はらむさんに連れて行ってもらっているだけで、実際に書くなら僕が書くより、らむさんが書いたほうが面白いですよね?」
確かに僕はタニシさんと一緒に樹海に行ったことがある。タニシさんに
「どのような服で行ったらいいですか?」
と聞かれ
「登山ではないので、そこまで気張らないでもいいですよ」
と答えたら、本当に普段どおりの服で来たのでビックリした覚えがある。VANSのスニーカーは青木ヶ原樹海を出るときにはボロボロになっていた。
「誰かのネタを確認しに行くんじゃなくて、自分だけのネタを探さないとダメだと思うようになりました。
ずっと腑に落ちなかった気持ちを、腑に落とすために旅を続けている感じでした」
タニシさんはそんな気持ちで、100を超える死にまつわるスポットを回ったという。
そんな中で、全く知らなかった話を現場で知ったり、変な出来事が起きることがあったという。
「にしね・ザ・タイガーという後輩がいるのですが、彼はよく心霊スポットへ行く時についてきてくれたんです」
にしね・ザ・タイガーさんは、阪神タイガースと特撮ヒーローが大好きな、元引きこもりの芸人さんだという。