「にしねと一緒に行くと、すごい高い確率で何かが起きるんですよ」
事故物件での生放送では、にしねさんの持ってきた仮面ライダーのベルトが突然起動して音が鳴った。
大阪の源氏の滝では、にしねさんが取り憑かれたように急にすごいスピードで山に登っていき、山を削った人たちに怒りだした。
「奈良の廃神社に行った時には、鳥居をくぐった瞬間から急に、廃神社を修行場としていた玉姫教会の巫者 中井シゲノさんのことを延々とほめたたえはじめました」
この時の様子は動画が残っていて、見させてもらったのだが、普段はおとなしいにしねさんが、ハキハキとした口調で
「中井シゲノさんは~」
と何度も何度も話続けるのが、とても異様だった。
「にしねは、京都の伏見稲荷大社でもおかしくなったんですよ。にしねのスマホがまず『データ使用の警告』『データローミングオン』とか急にバグりだして、その後笑いながら駆け足でどんどん石段を駆け上がっていったんです。途中、にしねは石灯籠にお辞儀をしていたんですが、その時の記憶は全くないそうです。
実は玉姫教会は伏見稲荷大社の支部であり、密接な関係があったようです。そういう“つながり”って面白いですよね」
「にしねさんがなぜ取り憑かれるのか? シャーマン的な資質があるのか?」
という疑問が湧いてくる。
『死る旅』にはさっちゃんというシャーマンも登場する。タニシさんは、にしね・ザ・タイガーと、さっちゃん、中井シゲノには共通点があるという。
「3人とも『前に出えへん』というのが似てるんです。中井シゲノもさっちゃんも、欲がないんですね。欲に走ったら、急に胡散臭くなって、本物じゃなくなんです」
タニシさんが、にしねさんに
「なぜ心霊スポットについてくるの?」
と聞いたことがあった。にしねさんは、
「年上のお兄さんに遊んでもらってる感じなんですよね~」
と答えたという。
動画配信に出て知名度を上げて売れるキッカケにしよう、などというお笑い芸人としては当たり前の欲は彼にはないようだ。
「にしねはよく
『僕は元々引きこもりだったので、0だったんですよね』
なんて語るんです。だから彼は“器”なんだなって思うんです。器的な人だから、すぐに取り憑かれてしまうのではないか? と仮定しました。
僕は神秘現象はなんでも信じるタイプではないのですが、『何か起こす人』はいるんだと思うようになりました」
タニシさんは、誰かの意図が入った怪談が嫌いだという。その意図に乗っかるのも嫌だ。言わばそれは『胡散臭い本物じゃない怪談』なのだろう。
だからタニシさんは、すでにある『怪談』をたしかめに行く旅ではなく、実際に行ってそこで、自分だけの体験をし、オリジナルのエピソードを得ようとしている。
「結局、安易な幽霊話とかではなくって
『死ぬってどういうことなんだろう?』
という本質的な話に興味が出てきてますね。これだけ孤独死で人が亡くなってるわけですし。この本は、生きるために死と向き合った僕の旅が綴られています」
事故物件に住む芸人が、死を見つめる旅路を綴る『死る旅』。
興味がある人は是非、読んでみてはいかがだろうか?