「妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話」|作者ズュータンさんに聞くマルチ商法の恐怖

そのほか

定番は、鍋や洗剤などの日用品。最近ではメディカルグレードと謳われるアロマオイル。若い人たちの間では、仮想通貨やアフィリエイトの勉強会など。

 

さまざまな商品を通じ「マルチ商法」のトラブルが広がり続けています。

 

「マルチ商法」とは、特定商取引法で「連鎖販売取引」と定義されている商売の俗称。「うちはマルチではなくネットワークビジネスです!」というようなお怒りのコメントも度々目にしますが、日本ではネットワークビジネスもマルチ商法と同じ連鎖販売取引として分類されているので、要は同類です。マルチ商法はその組織に加入して商品を販売するだけでなく、人を紹介して会員にさせると紹介料やマージン等の利益を得ることができるので、連鎖的に拡大していくという特徴があります。勧誘という目的を隠して「楽しい集まりがある」と誘ったり(これは法で禁止されています)、商品を売るために科学的根拠のない健康効果を謳ったり、売り上げノルマのために借金をしたり。最近ではそんなトラブルが、SNSでもチラホラと語られるようになってきました。

 

さてこれは、一部の特殊の人たちがハマる沼ではありません。その恐ろしさを身をもって体験したのが、ズュータンさん。自分の体験、そして同じような苦しみを抱えている人たちの苦悩を綴った『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ポプラ社)の著者です。どのような人がハマるのか? ハマる人の心理は? 誰もがハマる可能性のあるマルチ沼について、お話を伺いました。

妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話

本のタイトルにもあるとおり、ズュータンさんは元妻がマルチ商法にハマり、様々な対策に走ったものの離婚したという経歴の持ち主。なぜこうなったのかを知りたい気持から、同じようなマルチ商法の被害者たちから話を聞くようになったといいます。取材時点で、その数130人近く。どのような人がマルチ商法に「狙われやすい」のか? と尋ねると、「容姿のいい人」という意外な答えでした。

 

ズュータン「マルチグループが狙いたい人。基本的にはまんべんなく狙われますが、その中でもお金を持っている人は当然として、格好のターゲットになるのは容姿のいい人です。マルチ商法のグループって、たまにモデルとかいたりするんですよね。ハイブランドのアパレル店のドアマンをやっていますなんて人もいました。それは単純に、見た目のいい人を前に出して商品をアピールするとイメージがよくなるからです。深みまで引き込まなくても、「あの人も使っているんだよ」と言いたいんです。あとは当然、影響力のある人も狙われます。女性なら、ママ友がたくさんいる人とか起業家とか。そこから広がる人脈で、たくさんの人を勧誘できますから」

 

いかに魅力あふれる商売か、喫茶店などでターゲットを相手に必死でプレゼンしている姿を見たことがある人も多いでしょうが、なるほど始めから多くの人を従えている人を引き込めば、あの労力が軽くなるのはご尤も。

 

ズュータン「どのような人がハマりやすいか? というのもすごくよく質問されるのですが、それをいうのは少々憚られます。寂しい人とか不安な人とか、配偶者が悪かったんじゃないかとか、親との関係がどうこうとか……。しかし、マルチ商法にハマった人に対し「 やっぱりああだよね」とジャッジするのは、後付け、半ばむりやり結び付けている感じがあります。きっと誰しも、理解できないものに対して不安になるのでしょう。だから自分たちが納得するために、ハマった人に対して安易なレッテル張りをしているところがあるように思えます。もちろんある程度のパターンは存在しますが、ひとりひとりに、異なるハマる背景があります。沼にハマる人を減らしたいのなら、パターンだけではないところに目を向けていかないといけません。勧誘する側というのは、その裏をついてきますから」

 

ズュータンさん曰く、マルチ商法の勧誘メンバーも実に様々だといいます。それは「沼の入り口はどこにでもある」ということ。

 

ズュータン「マルチ商法は企業にもよりますが、いくつものグループが形成されています。グループの構成員はさまざまで、主婦、中年男性、若者、学生……実に多様です。主婦グループの場合はリーダー格の人が60代くらいで、家族ぐるみでマルチ活動をしているのもよくあるパターンです。するとその子供たちは就職せず、マルチ商法で生計を立てているケースもある。彼らのイベント写真など見ると、その子供の友達なども集まるので、3世代くらいの人間が大勢集まっているとても賑やかな雰囲気です。マルチ活動をしている20代後半~50代ぐらいまでの人、かつ売り上げランク上位の人って、大体そんな感じのマルチ2世なんじゃないでしょうか。親もマルチの収入でお金を持っているし、親に紐づいている会員を自分のグループとして譲ってもらえたりするし、進路がマルチという選択しかなくなりそうです。マルチの危険性を知らずに傍から見れば、マルチをやっているから親子仲良くて人もあんなに集まってきてしかもお金も持っていて、とても幸せそうに見えてしまいます。そして誘われるがまま、自分をそこを目指そうとハマってしまうケースもあるでしょう」

 

鍋や洗剤などの日用品を扱う某有名マルチ会社などは、家族単位で活動することが理想とされている感じもあります。

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