グループホーム運営会社 現役社長が語る「障がい者の自立」 ~無視され続けてきた当事者のニーズ~

インタビュー

㈱アニスピホールディングス(旧㈱わおん)
代表取締役 藤田英明氏インタビュー

 

■高齢者介護と障害者福祉の違い

田口 まず、藤田さんと言えば、介護のイメージが強いと思うのですが高齢者介護と障害者福祉の世界ではどう違うのでしょうか?

 

藤田 高齢者介護と障害者福祉の大きな違いで言うと戦後の身体障害者福祉法まで遡りますよね。そこから、今、障害者総合支援法の法律の時代までやっときて介護の世界は1964年の老人福祉法の制定からの始まりです。かつ、2000年に介護保険制度が制定され、その後18年経っています。その両方を比べると、介護の方が先に介護保険ができて民間企業の参入がOKになり、民営化され、歴史自体も30数年で民営化されているので歴史が短い分、鬱積したものがそこまでなかったんですよ。だけど、障害者福祉は、歴史が長い分、鬱積しているものがあります。だけど、そこは考え方で、障害って身体・知的・精神がありますよね。最近は発達障害も入ってきますけれども。多様性の領域なんですよ、障害って。それに比べて、高齢者介護は多様性の領域ではないんですよ。認知症、寝たきりがマジョリティで、高齢者なので、世代もある程度、一緒。障害福祉は多様性の領域で、年齢も若い方から64歳(最近は亡くなるまで)まで障害特性もバックグラウンドも様々。介護は障害と比べると多様性が低い。なので、背景が全く違います。障害分野の人たちの方が何か新しいものを求めているんですよ。

 

■無視されてきた障害者のニーズ

田口 なぜ、グループホーム(以下、GH)で動物と暮らすというスタイルを取っていらっしゃるのですか?

 

藤田 これは総務省の統計にも出ているんですけど70%の障害者の人たちが動物が好きなんですよ。なのに、動物と一緒に暮らせたり、通えたり、過ごせたりする障害者福祉サービスは皆無なんです。70%の人が好きなんだったら、通常のマーケットでいえば70%の人が動物と暮らせるようになっているはずじゃないですか。

 

田口 それだけ障害福祉はタブーだった部分もあり、踏み込まれなかったのでしょうか。

 

藤田 そうですね。診療報酬との絡みもあって、特に精神や重度の知的障害の方は病院やコロニーに隔離政策で入れられていた歴史がありますね。財政的に病院へ入れておくと高コストで精神医療だけで年間約7兆円くらいかかっているんですよ。そこを財務省がなんとかしたいというところから(現行の障害福祉政策は)スタートしているんです。理念というよりも。動機は善か悪かというと、ちょっと悪いんですけれどそれで病院に長期入院している人たちを退院させていこうという政策に切り替わってきて出すにも実家には帰れない、1人暮らしはできないとなると第三の場所が必要となります。その第三の場所(サードプレイス)がたぶん僕らのやっているGHですね。

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