生活困窮者支援 ~仕事の切れ目が屋根の切れ目。ボストンバック1つで全国を転々とする、路上・車上生活者への支援の現場~

障害者ルポインタビュー

今回は、困窮者支援を柱とし、DV・債務問題・障害問題・自殺志願者などの相談を幅広く引き受ける、長野県松本市のNPO法人「サポートセンターとまり木」の主任相談支援員で理事の八木 航さん(45歳)にお話を伺った。

 

 

事前にホームページ等で、情報を仕入れようとしても、「サポートセンターとまり木」のホームページなどはない。そして、地元長野県の知人に聞いても、八木さんが具体的に何をしている人なのか知らないと言われ情報はなかった。

 

ただ、八木さんがSNSで発信する言葉に惹かれ、取材を申し込んだ。パソコンの画面越しに現れた八木さんは、45歳には見えない若々しい印象の男性だった。探しても情報がなかった旨を伝えると「そうなんですよ。うちの法人はホームページもありませんし、チラシなども置いていません。宣伝はほぼしていません。それに松本は小さな地方都市なので『八木さんのところに相談しな』という感じで、個人名で覚えられてしまい、とまり木の名前すら出ないこともあります」と笑った。

 

口コミ、他の法人や行政経由で、八木さんのところには日々、相談者が訪れる。まるで町の「よろず相談所」のようなイメージを持った。

 

八木さんは大学在学中より、生活困窮者の相談支援の現場の片隅にいた。八木さんが就職しようと思ったときには、バブルは崩壊し、就職氷河期だった。まだ「就活」という言葉もない頃だ。「自分が大学1年生の時に卒業した先輩たちは、企業が学生を採用したくて接待しているような時代でした。だけど、自分が卒業する頃には、状況は変わっていた。この落差は何だろうと思った。そんな中で就職活動をして、サラリーマンになって、家庭を持って…ということよりも、当時急速に拡大していた非正規労働者として、自由に生きていく人々とともにいたほうが楽しいと思ったんです」

 

八木さんは福祉系資格を取得せず、大学を中退した。

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