事故物件公示サイト『大島てる』管理人に聞く「ただのオッサンが死んでもニュースにはならない」その理由とは?

インタビューコラム

 

大島てる』は、自殺、殺人、火事などの事故で人が亡くなった部屋『事故物件』を地図上に掲載するインターネットサイトだ。このサイトを見る人は、引っ越しの際に参考にしたり、今住んでいる物件などが事故物件でないか調べるのに利用する場合が多い。もちろん好奇心を満たすために、覗いている人もたくさんいるだろう。筆者もヒマな時にはつらつらと眺めている。

 

このサイトは、一般ユーザーが自身が知っている事故物件の情報を投稿するシステムだ。もちろん、大島てるさん自身も投稿しているが、あくまで一投稿者として寄稿している。原則として、誰でも参加することができる。サイトの認知度が上がるにつれて、投稿数は著しく増えた。写真付き、そこで起きた事件の解説つきの投稿も多い。事件の部外者が事件が起きたのを知るきっかけは、新聞やテレビで報道されたのを見た場合が多い。全く報道されていない事件は近所だったり、事件の関係者ではなければ、なかなか知ることができない。

 

「ニュースになっていたら、誰でも投稿することができます。ただ、すべての事件が報道されるわけではありません。報道されなかった事故物件は、ぜひご近所の皆さんに投稿していただきたいです」事故物件の中には、被害者や加害者が障害者の物件もある。

 

「基本的には胸の痛む、悲しい話が多いですね。例えば、火事が発生したが、足が不自由だったために逃げられず、亡くなった。などそんな事件がたくさんあります。自殺、他殺も読んでいて辛い事件が多いです」自分自身の未来に絶望して自殺する。介護に疲れてしまい、親、配偶者、子供を殺してしまう。そのような事件が紙面に載ることは珍しくない。

 

「珍しい例としては、加害者が後から障害者になってしまったという事件もあります」殺人をした後に、飛び降り自殺をしようとしたが死にきれず、一生車椅子の身体になってしまった、という事件が実際にあった。「障害者にまつわる事件は、事件全体の比率から言えばかなり少ないのですが、メディアは大きな割合で報じていると思います。これは、障害者の事件は読者を引きつけるからでしょう」

 

先に語った通り、ニュースではすべての事件を取り扱うわけにはいかない。基本的には、皆にとって興味があるニュースが優先して報道される。例えば、自殺に関するニュースは基本的にはほとんど報道されない。世界保健機関(WHO)は「メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」というガイドラインを発表している。その中の、やってはいけないことの1番目には、『自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと』と書いてある。

 

2019年の自殺者数は1万9959人と発表されたが、報道された自殺はほんのわずかだ。ただしかし、報道しない理由の中に自殺対策推進の意味がないわけではないだろうが「ただの自殺ではニュースとして弱い」から報道されていないだけだと思える。なぜなら著名人が自殺した時は、これでもかというくらい繰り返し報道するからだ。後追い自殺が発生することなど、まるで考慮に入れていないように見える。穿った見方をするならば、“障害者の死”は視聴率が取れるから報道されていると言える。それは障害者にとって利益になる場合もあるが、害になる場合もあるだろう。

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