筆者のもとには、様々な支援者より障害当事者のケース(事例)に関する話が舞い込む。その中で多かったのは、精神・発達・知的障害者の金銭トラブルに関するものだ。
1人の精神障害者が90枚近いクレジットカード・キャッシングカードを持っている、生活保護受給中に借金が発覚し破産手続きとなる、責任能力のない知的障害者が風俗通いで700万円近くの借金をしている。
そういったケースは非常に多く耳にする。
支援者からの「なぜ、そんなにカードが作れるのか?」「責任能力のない障害当事者がした借金はどうなるのか」という疑問の答えを、現役弁護士に伺った。
今回、取材させていただいたのは、豊島区の大塚駅から徒歩10分ほどの場所にある
岩本弁護士は中央大学在学中から、身体障害者の権利擁護やケアを行うサークルの代表者を務めていた。そして、「大型トラックの運ちゃん」をしながら、司法試験の勉強を続け、弁護士となった異色の経歴の持ち主。非常に気さくで、おおらかな人柄で、相談者は後を絶たない。現在も障害者の成年後見人や保佐人を引き受けている。
成年後見人とは、認知症や知的障害等の疾患や障害により、判断能力が著しく低下した方の財産を保護するために、家庭裁判所から選任されて、本人や親に代わり、財産保護や身上監護を行う者のことだ。後見人は本人の代理ができる(代理権を持つ)のに対し、保佐人は本人が決めた行為に同意を与える(同意権を持つ)。本人に代わって契約を交わせるのが後見人で、本人が決めた契約に同意したというお墨付きを与えるのが保佐人と書くと分かりやすいだろう。
まず、1人の精神障害者が90枚近いクレジットカードを持っているケースなどは、なぜ起こりうるのだろうか。筆者は、借り入れには収入証明を求められるイメージが強かった。
「今はどこに行っても、カードを作れ・作れと勧めますよね。
その都度、カードを作っていたら、何枚でも作れるでしょう。
障害者手帳の有無などは個人情報なので、本人が言わなければ分かりません。
審査も甘いところなどいくらでもあります。
身分証明と印鑑だけで貸すところはいくらでもあります」