今回は、前回に引き続き、お笑い芸人であり、インターネットの巨大掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)を中心として、1998年頃より誹謗中傷の被害に遭った、スマイリーキクチさん(48歳)の現在についてお話をうかがった。
キクチさんは昨年、自身が代表となり、インターネットの中傷案件を長年解決してきた、清水陽平弁護士と唐澤貴洋弁護士とともに「一般社団法人インターネット・ヒューマンライツ協会(https://interhumanright.org/)」を立ち上げた。
今は新型コロナウィルスの影響で活動を自粛しているが、協会では、小中高校を回って「中傷加害者を減らすため」に講演会や勉強会の開催の予定をしている。自身の被害の経験やインターネットとの付き合い方について話すという。なぜ被害者ではなく加害者なのだろうか。
「被害者の方の相談に乗ってきましたが、加害者を減らさないとどうにもなりません。携帯キャリアや警察が講師となって、子どもたちに授業をし、子どもたちに資格を取らせたいです。僕もいい年をしたおっさんです。おっさんの言葉よりも、高校生が中学生へ、中学生が小学生に、インターネットの危険性や被害にあったときの対処法を教えたほうが、心に響くと思いました」
キクチさんが激しい中傷に遭っていた2000年前後は、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)が誹謗中傷の中心だった。今はTwitterがその中心となり、若い世代は2ちゃんねる(現5ちゃんねる)のような掲示板を読まないという。そして、SNSは多様化し、Twitter・Facebook・Instagram、TikTokなど新しいサービスも、次々と登場している。
「30,40代以降の人たちのほうが情報モラルやメディアリテラシーがないです。年を取ると頭が固くなってしまう。価値観が固まってしまい、考え方は変わりません。若い人たちがそういった大人たちの巻き沿いにならないようにしたいと思っています」
今の小中高生は学校の授業などで、インターネットリテラシーを学ぶ機会もあるが、中高年はそういった場に恵まれないまま、大人になってしまう。そういった人たちがインターネットでの中傷加害者になりがちだが、大人の考えを変えるのは困難だ。
自分が被害者になったとき、逆に加害者になったときに、相手の立場に立って考えるシミュレーションを子どもたちと試みている。「ながらスマホ」をしていて、自分が加害者になってしまった場合にどう考え行動するか、その時に被害者やその家族だったらどう感じるか、そういったシミュレーションを通じて、相手の気持ちを思いやることを考える。キクチさんは時には講演などで、子どもたちとたわいもない話もするが、子どもたちから教わることも多いという。
「会話をしていたら中学校1年生の生徒さんが『普通』という言葉を使った瞬間、自分の頬を軽く叩きまして。『普通というのは自分だけの視野で物事を見ることだから、視野を狭めるので使わないようにしてるんです』と指摘したことがあります。若い世代の方がよほどしっかりしていると思います」
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