終末期に食べられなくなると死んでしまうという「嘘」|「うらやましい孤独死」の著者に聞く終末期ケア

インタビュー

森田洋之

前回

「まるで刑務所|医者をトップとした老人を支配・管理する施設はごめんだ!在宅医が語る理想の終末期医療・介護」

に引き続き、今回も「うらやましい孤独死」の著者である森田洋之医師にお話をうかがった。自らを「へんてこな医師」と名乗る森田氏。今日は急な往診が入った後の車中での取材だった。Tシャツにキャップというラフな格好の森田氏は、往診にもその服装で行っている。

 

森田氏は、1971年、横浜生まれ。一橋大学経済学部卒業後に、宮崎医科大学医学部に入学し直した「ヘンテコな医師」。宮崎県内で研修を修了し、2009年より財政破綻した北海道夕張市立診療所に勤務。現在は鹿児島県で「ひらやまのクリニック」を開業、研究・執筆・講演活動にも積極的に取り組んでいる。専門は在宅医療・地域医療・医療政策など。著書に『破綻からの奇蹟』『医療経済の嘘』『日本の医療の不都合な真実』などがある。

 

終末期に食べられなくなると死んでしまうという「嘘」

 

筆者は特養老人ホームで半年間、介護士として働いていたが、その時にみた光景は衝撃的だった。もう食べたくないと涙まで流しているお年寄りに、無理やりでも食べさせることはどうしても必要なことなのか。それが人間らしい「最期」の形なのか。

 

「僕も夕張市に行ったり、鹿児島県で『いろ葉』さんとチームでやるようになって分かった。

終末期って人間は食べられなくなるんですよ。食べられなくなると死んじゃうとか思いますよね。普通はそう考えますけど、あれ、嘘だったんですよ。食べられなくなると死ぬなんて全然ないです」

 

いろ葉』の利用者さんの例だ。1日におかゆ数さじの水分や食事で半年くらい生きたお爺ちゃん・お婆ちゃんがいた。森田氏自身もそういう患者さんをみている。

 

「ヤクルトを一日一本飲む。そして、これくらいの大きさのハンバーグを食べる。それくらいで1年くらい生きていた方がいた。1日のほとんどは寝てるんですけど、僕が往診に行くと、目を開けて『先生』としゃべりだす。

森田洋之

そういうことを僕は全然知らなかったんです。たぶん他の人も知らないんですよ。僕らが心配しすぎて点滴を入れると体がむくんじゃうとか、肺や心臓に水が溜まるとか、全然いいことがないんですね。たぶん終末期になったら、自分で食べる量とか飲む量を調整して、一番いいところにもっていくんだと思うんです。で、だんだんと枯れるように、干からびるようになっていって亡くなる」

 

今日、往診に行ったお婆ちゃんも2年くらい前は体重が50キロあった。今はもう35キロだ。だんだんと枯れるように細くなっていく。

 

「で、最期は熱が出ることもある。誤嚥性肺炎になることもある。それは本当に医療で対応できることなのかどうかってことですね。もちろん最後は水分補給の点滴ではなく、抗生剤の点滴をすることはあります。ダメ元で点滴ぐらいしとくかなというくらいですよ。だって、基本的には老衰の過程なんだから」

 

だんだんやせ細っていって、食事の量も落ちてくるのが老衰のパターンだ。その段階で医師ができることは、抗生剤の点滴くらいしかない。その段階で本当に大切なのは、ご家族とかご本人の側にいて、思いを聞いたり寄り添ってくれる人の存在だと森田氏は言う。

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