公安調査庁で国際テロ対策を担当した 元ベテラン捜査官が教える公安庁の実態

インタビュー

西 道弘

「ドラマやアニメの影響もあって、公安は『何やら凄いことをしている、秘密のベールに包まれた組織』そんなイメージを持たれている方も少なくないようです。けれど、実際は活動内容を公開しないのではなく、公開できる様な活動をしていないというのが現状です。何もしていないというより、何もすることがない。だから余計に厄介なんです」余計に厄介とは、これまた一体どういうことか。

 

「やることが無いからといって、流石に全く何もしないという訳にはいきません。そうなるとやる必要がない、寧ろやらない方がいいことまでやりだす。無理矢理業務を作り出す訳です。

 

たとえば、現実問題として今後日本でアルカイダや、IS(イスラム国)によるテロの脅威があるかといったら可能性は極めて低い。これまでアルカイダの人間が日本で確認された実例は一件のみです。それも今から約20年前。リオネル・デュモンというフランス人が、日本に資金調達をしに来たことが発覚したのですが。それを公安庁は、日本国内にイスラム過激派のテロリストが潜入したと大騒ぎしました。一種のパフォーマンスですね。

 

彼は別にアルカイダの最高幹部という訳でもありませんし、オサマビンラディンと接点がある人物という訳でもありません。では何故それだけ騒ぎを大きくしたか。公安庁の存在意義を対外的に示す為です。要するにさも大それたことをしているかのようなアピールです。その最たるがテロ対策の拡大です」

 

自身も国際テロ関連の情報収集や宗教団体、市民団体の監視・調査を行う部門を担当していた西さんですが、次第にこの業務に必要性があるのか疑問を持つようになる。無理にでも業務を増やす為、ムスリム系の人間を『不審者』として追い回したり、どう考えても調査する必要のない人間にまで調査の手を伸ばしたり。西さんはそういった無謀な調査に不信感を抱き、繰り返しその疑問を上層部の人間に投げかける。

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