「僕、小さい頃、全く喋らなかったらしいんです。周りの子どもたちはみんな喋っているのに、僕だけ喋ることも歩くこともできない。心配した両親が色々な病院に連れて行って、脳の検査から何から、それこそ色々な検査をしたそうです。でも、結局原因はわからずじまいで。3〜4歳になって、やっと言葉が出るようになると今度はお喋りが止まらなくなって」
そう語るのは空手家で柔道整復師でもある通称大ちゃん。前向きで底抜けに明るい大ちゃんの周りは、いつもたくさんの笑顔で溢れている。
大ちゃんは現在、空手教室を運営するほか、高齢者の機能訓練のトレーニング指導や、QOL向上のためのサポート、フリーの整体師として出張で施術を行うなど幅広い活動を行なっている。空手指導や運動指導はオンラインでの受講も可能だ。身体の不調だけでなく、生きづらさを抱える人に寄り添った指導と施術を心がけている。
本日、取材を行った「ごちゃまぜcafeメム」は、江戸川区篠崎にあるサードプレイスカフェ。大ちゃんは、毎週末、このカフェ内で整体の施術を行なっている。
今回は施術の合間にお時間を頂戴し、お話を伺った。
「ごちゃまぜ整体院モム」は「ごちゃまぜcafeメム」に土日のみ出現する整体院。普段この場所はキッズスペースとして利用されている
小学校5年生でいじめから不登校に
「とにかく落ち着きがなくて、デパートやスーパーに行くと必ず迷子になる。そんな子どもでした。毎回親が呼びされるので、そのうち出かける時は、背中に紐をつけられるようになりました。天使の羽とかああいう可愛いのじゃなくて、普通に紐です。うちは実家が呉服屋なので、段ボールを解いた時にでる紐がたくさんあって、普通のビニール紐(笑)」
列に並ぶのが苦手で、横入りしてしまったり、授業中座っていることができず、教室を歩き回ってしまったり。人の話も集中して聞けないし、聞いていないから、言ってることとやっていることがまるで違う。にも関わらず、好きなことを始めると時間を忘れてしまう。
「そんなでしたから。気づいたら、いじめられるようになっていました。学校に行けなくなったのは小学校5年生の時です。同級生にはバンバンぶん殴られるし、いじっめっ子に追いかけ回されて、廊下を走って逃げると、今度は先生に『廊下を走るな』と怒られる。学校に居場所がなくなって、学校に行けなくなりました。
うち、呉服屋なのに親父がスーパーヤンキーみたいな人なんです(笑)学校でいじめられると『やり返してこい』と。車でいじめた子の家まで連れて行かれて目の前で降ろされる。でも、やり返せないからいじめられているわけで。それで、しばらくすると『お宅の息子さん、うちの前でずっとポツンとしてるんですけど』と、その子の親から電話がきて母親が迎えにくる。そんなことも度々ありましたね。厳しい人でしたから、手をあげられることもしょっちゅうでした。
でも、親父は親父なりのやり方で僕がいじめられているのに本気で付き合ってくれる。そんな人でした。学校ともバンバン喧嘩するし、相手の親のところにも乗り込んで行く。僕を守るために全力で、必死に戦ってくれました」
厳しくも愛情深い両親に育てられた大ちゃん。しかし、「やられたらやり返す」父親のその方針は、大ちゃんを苦しめ追いつめていく。結果、学校にも家にも居場所がなくなってしまう。