みどる中高年発達障害当事者会 山瀬健治氏③~あなたが発達障害でなくても 人生万事うまく行ったとは思いません~

インタビュー

みどる中高年発達障害当事者会」代表 

山瀬健治氏 インタビュー③

 

 

田口 山瀬さんのように才能のある発達障害の方はそうやって、起業を志したりできる。起業すれば、自分の苦手な部分を補ってくれるパートナーも見つけられる。それは山瀬さんの才能ありきですよね?よくひきこもりの方や当事者の親御さんに「天才の成功話は聞き飽きた!一般の才能ない人はどうしたらいいのかが知りたい」と言われてしまうのですが、一般の方にはどんな道があると思いますか?

 

山瀬 うーん、私が才能あるかどうかはさておき先天的な能力や環境の差による不公平って発達障害の人に限ったことじゃないですよね(苦笑)?“You play with the cards you’re dealt, whatever that means.”「配られたカードで勝負するっきゃないのさ…それがどういう意味であれ」スヌーピーの名言です(笑)あと、「才能」っていうけど、飛び抜けてなくていいから食えるかどうかのレベルであれば何とかなるような気もします。それでも、やるだけやってダメならそれこそ堂々と福祉制度を利用すればいいと思います。

 

ただ、誰だって生まれた環境や才能は不公平なのに発達障害が絡むと見落としてしまう心理に関連して言うと、発達障害の当事者は「発達障害がアイデンティディになってしまっている(属性の一つに過ぎないにも関わらず)」「発達障害さえなければ」と意識がそこに支配されてしまっていることが多いからだと思います(勿論、それだけ辛い障害なんですけどね…)。発達障害はあなたの数ある属性の一つに過ぎないし、きついことをいうと、あなたが発達障害でなくても人生万事うまく行ったとは思いません(笑)

 

田口 私もひきこもりの方に「外で就労できないなら、私のように在宅で翻訳やライターとして生きる道もあるよ」と言っても「それはあなたが高学歴だから」「それはあなたに才能があるから」と言われてしまいました。それを言い出したら、健常者にもそういった生まれついた環境や資質の差があるという意味では変わらないですよね(笑)ただ自己肯定感や成功体験が少ないからなのか「こういった道もある」と言っても、なかなか動こうとしてくれないですね。山瀬さんの場合、それを乗り越えられたのはなぜでしょう?やはり才能があったからですか?

 

山瀬 私個人の場合は、ASD傾向もあるのかも知れませんが「悪いのは私ではなく、常識や世間体によって非効率で理不尽な仕事の仕方をさせる社会の方だ」と確信していたのでひきこもりはしましたが、心は折られてなかったのが大きいですね。
ただし、色んな当事者をみていますが、能力そのものよりも今までの失敗体験で「意欲」を根こそぎ奪われてる人が少なくないなと思っています。「悪いのは社会の方だ」と開き直れる人はむしろ少数派でしょう(苦笑)

 

田口 私はリアルな世界での当事者会というものにあまり参加したことがなくネットの当事者グループなどに参加した経験しかないのですが

しょっちゅう揉めているイメージです。リアルな世界での当事者会を運営なさる上での苦労はどんなところでしょう?

 

山瀬 小さなところでは、ADHD特性で事務処理が苦手なので、会場予約や告知と後処理が大変なのでそこは(場合によっては公的な)支援がほしいですね。「しょっちゅう揉めているイメージ」についてですが、これは「みどる中高年発達障害当事者会」の場合、名前の通り中高年(40歳以上)のサバイバーに限定しているのであまりに特性の強いマイペースな人は来ないのでありません。意図していないのですが、結果的に年齢がフィルターとして有効に働いていると思います。他の会ではよく聞く「男女トラブル・ストーカー問題」もみどるでは創設以来皆無です(笑)

 

田口 私はASD寄りの傾向なので、事務処理や会場予約などの裏方ばかりやっています(笑)適材適所なんでしょうね。苦手なところを補完しあえれば、ADHDとASDはいいパートナーになれるのですよね。だけど、ASDの傾向が強すぎる人が仕切ると、すぐに崩壊するイメージがあります(笑)

 

山瀬 それは関西の当事者会をよく見ている方も指摘されていて、老舗の会は主催者がADHDで、ASDが主催の会は(お互いのマイルールがぶつかって?)長持ちしない傾向があるようですね。

 

田口 みどるには親御さんが参加するということもあるのですか?

 

山瀬 基本的にお子さんの療育相談はお受けしていません。そもそも、われわれは40歳以上の療育を受けられなかった世代なので療育についての制度や実態の知識がありません。ただし、最近、お子さんを受診させたら「お母さん、あなたもASD(ADHD)です」と言われていきなり診断されて動揺して参加される方は珍しくありません。発達障害の「家族性」はよくいわれている話です。

 

田口 山瀬さんに以前聞いた話で、発達障害の女子はもてるけど発達障害の男子はもてないというのは本当ですか?

 

山瀬 前に、あるグループが「発達お見合い」を企画したんですが20人中男子19人で、女子が半分サクラ(笑)の一人しか集まらず、お流れになったという話があります(苦笑)発達男子がモテないのは、まずASD傾向の人は女子が一番気にする第一印象の身なりや相手に気を使わないので、そもそも対象にならないのかと。。。一方、発達女子がモテるのには理由があって、男子は基本的に女子の理不尽な面倒くさいところが嫌いなのですが、ASDでもADHDでも男子的にはっきりしてて理解しやすいんですよ(笑)

 

田口 それだからこそ、発達女子が性に依存してしまう問題も出てきてしまうのでしょうね。依存してなくても騙されやすいとか。性犯罪に遭いやすい。

 

山瀬 騙されやすいとか性被害に遭いやすいのは、素直に言葉を信じてしまうとか、自己肯定感が低いので相手に強く出られると嫌と言えないからではないかなと感覚的には分かる気がします。依存についてはよくわかりませんが、やはり自己肯定感が低いので身体だけでも求められることで、承認要求を満たそうとしてしまうのかもしれないですね。

 

※内容は取材当時(2019年8月)