みどる中高年発達障害当事者会 山瀬健治氏②~公的に「障害者」 にされてしまうのが嫌だという人も少なくない~

インタビュー

みどる中高年発達障害当事者会」代表 

山瀬健治氏 インタビュー②

 

 

■自身の障害の受容に関して

田口 山瀬さんは診断された際、あっさり受容できましたか?

 

山瀬 実は、発達障害の前にアダルトチルドレンという概念を知って、非常に当てはまると納得していました(医学的には「アダルトチルドレン」という概念は認められていませんが、家庭環境や幼少時の経験によるトラウマが原因といわれていたのに、家庭環境に問題のない人にも同様な生きづらさがあることが分かり、それが発達障害概念の先駆の一つになっているという点では歴史的に意味がある概念です。また、臨床上、当人の生きづらさを受容するのに概念として、今も有効だという臨床家は少なくありません)。

 

それを踏まえて、自分の生き辛さの理由が、努力不足や性格・人格の問題ではないと医学的に説明をつけてくれたので、いわゆる「障害受容」の問題は全くありませんでした。

 

■発達障害者への支援は精神障害者への支援の流用?

田口 先ほど、手帳の話で出ましたが、精神障害者手帳だと、精神障害者の支援を流用されるだけですよね?現在の暮らしの中で、それは有効な支援ですか?どんな不便さを感じますか?

 

山瀬 何が使えるかは非常に個人差が大きいところで、個人的には手帳による都営交通のパスを有効利用させてもらってますが都営交通は城南方面では手薄なので、同じ城南の人であまり活用している人はいませんね(苦笑)あとは、就労移行事業所が使えるとか、就労でもオープン枠(障害者枠雇用)があるとかですが、使える支援になっているかどうかは人によると思います。あまり知られていませんが、ADHDの症状で片付けができないというのであれば、居宅介護ということでヘルパーさんを派遣してもらえたりします。これは個人的に非常に助かっています。言えるのは、有効かどうか以前に、どんな制度が利用できるのかの知識を、当事者が持っていないことが大きいと思っています。

 

■診断を受けた方が周りの目は優しい?

田口 「理由なくできない・駄目な人と言われるよりも、きちんと理由が合ってできないと言われた方が自尊心を保てない?なのに、なぜ、診断をすすんで受けないの?」とある編集者に言われたことがあります。私も同意見で、私自身が息子に疑いがある段階でWISKを受けています。そこで、自身の傾向を把握しました。なぜ、山瀬さんや私のように、診断を受けようという方が少ないのでしょうか?

 

山瀬 私の知っている人に、当事者活動をやっているのにポリシーで手帳は取らないという人がいます。
想像になるのですが、公的な「障害者」とのお墨付きや制度上の支援を必要としない、役に立たないから不要だというところだと思っています。ただし、その方は違うのですが、単純に自分が公的に「障害者」にされてしまうのが嫌だという人も少なくないと思っています。

 

■就労支援事業所は機能してるか

田口 就労支援事業所はあまり機能していないという話をよく聞くのですが、山瀬さんの場合、今、通っていてどう感じていますか?

 

山瀬 就労移行事業には2つ問題を感じていて、一つは就労の準備(心身のコンディショニングと職業スキル)の能力と実際に就労先を紹介できる能力は別だということ。分かりやすく言うと、利用者へのケアの部分は伝統的な福祉の延長+職業訓練でいいんだけど、就職先の開拓はいわゆる営業であって、福祉職の人には適性的に厳しいんじゃないかと思っています。

もう一つは、本来は職業訓練系の施設ではなく、福祉系の施設であって、利用することで、状況が改善する人たち(特にひきこもり系の人)が相当数いるのに、名前が「就労ありき」に聞こえるので、利用が敬遠されているというところですね。

 

田口 私は山瀬さんのプロフィールを知ると、元COO(最高執行責任者)でいらっしゃって、そもそも就労先の開拓なんて必要な人なのかしら?と思ってしまいます(笑)心身のコンディショニングの部分での利用なのですか?

 

山瀬 あ、私は、これいうと怒られるかもですが、起業までのコワーキングスペースがわりに利用させてもらってますのであんまり参考にならないかと(苦笑)そもそも、もう就職する気が全くなかったので、就労移行という名前なので関心外の制度でした。ですが、制度の趣旨にあった友人を紹介したら「一人じゃ寂しいから、遊びに来い」といわれてそのまま居着いてしまいました(笑)(ちなみに制度上、就労または起業・独立なので、雇用されることが前提ではありません)

 

■就労支援事業所は障害者のハローワーク?
田口 就労支援事業所は私の中では、障害者向けのハローワークのようなイメージでしたが違うのですね。

 

山瀬 それ、100%名前が悪いですね。
実はわたしも全く同じ誤解をしていました(苦笑)確かに制度設計上、「就労を目指す」と謳わないといけないんでしょうが元々2年間で心身のコンディションを整えて働ければいいけど。二年でダメなら「継続支援」でA型またはB型という制度です。ただし、事業所によってカラーの違いがあって、福祉寄りの「リカバリー重視」ではなく就職寄りの「リワーク」重視のところもあるようなので一概には言えませんが。

 

※内容は取材当時(2019年8月)