臨床心理士 上間春江④ ~「好き×得意」のフィールドで生き生きした息子達~

インタビュー

臨床心理士 上間春江(うえま はるえ)さん

 

 

田口 上間さんは2016年に「子どものミカタプロジェクト

を立ち上げていらっしゃいますが

そのきっかけはどういったものですか?

 

上間 今言ったような、悲しいボタンの掛け違い事例を

あまりに多く見てきたからです。

 

私は、カウンセラーとしてのキャリアのスタートを都内で積んだのですが

都内は、専門家の数が多かったり、支援の場がたくさんあったりしたことから

発達特性のあるお子さんって、割と早いうちから

発見されていることが多かった印象があります。

 

でも、長野に来たら、不登校とか二次障害のこじれとか

複雑化・困難化したケースに多々出会いました。

それらの多くに「発達障害の傾向に気づかれていない」

というものがありました。

 

また、そうした問題が親子両方に出た時に

早期に適切な支援が受けられないケースも多々あり

どうしてこんな風になるまでになったのか

と思うようなケースをたくさん見たからです。

 

知っていれば防げたことがあるのなら

自分にできることで何かできれば…。

そんな想いで「できることをやってみよう!」と思い立っていたところに

私と同じ思いでいた臨床心理士に出会えて

子どものミカタプロジェクト」が生まれました。

 

田口 この連載の取材の中で、東京の福祉を褒めているのは

上間さんだけです(笑)

東京は福祉の面で遅れている(㈱アニスピホールディングス 藤田社長)

東京は福祉の上では別の国(相談支援員さん)など

取材の中では東京はぼろくそに言われていますが

いいところもあるんですね。

良かった(笑)

 

上間 あ、そうなんですか。

それは、それは…。

まぁ、教育相談という領域で関わっていた現場の一職員としての実感なので。

全体をきちんと把握はできていないかもですが(苦笑)

 

田口 現在、上間さんの2人のお子さんが

子どものミカタプロジェクト」でプログラミングを教えていらっしゃいますが

その活動を通じて、お子さんに変化はありましたか?

 

上間 あれは、ミカプロの事業というより、息子の事業で

息子が自分たちのクラブのコンセプトを考えるときに

「お母さんのミカプロのコンセプトいいね!」と気に入ってくれて

「みんなとかなえるプログラミングクラブ」略して

ミカプログラミングクラブ」と、私たちの活動に寄せて名前を付けたので

私がサポートということで、人集めをお手伝いしている

という感じなのですが(笑)

 

で、前置きが長くなりましたが、子どもへの変化ですよね。

直接の因果関係については、何とも言えませんが

このプログラミングクラブの立ち上げは

普通ではできないたくさんの経験を積む機会になったと思っています。

取材を受けることが度々あり、名刺を作って渡し方を教えてあげたり

大人とやりとりすることもそうですよね。

 

田口 名刺の受け渡しもですか!

それは貴重な経験ですね。

 

上間 そうなんですよ。

名刺を作りたいっていうので、一緒に作り、渡し方教えてあげましたところ

取材や講師依頼の機会が複数回あり、名刺交換を結構やることになりました。

 

他にも、人前で教える経験、教室を準備する経験なんかも

息子には、とても貴重な経験になっていると思います。

 

何しろ、社会性には難ありの子ども達ですが

自分の「好き×得意」なフィールドで

来てくれた人に楽しんでもらうという場のしつらえは

息子たちの社会性を伸ばす上で、とてもいい経験になっていると感じます。

 

また、好きで得意なことにとことんハマれる時間は

単純に、子どもを元気にしますよね。

 

一時は、気の合うお友達もいないし、「学校いやだ~」としょんぼりしていた次男でしたが

(ちなみに、学校の名誉のために言っておくと

学校がダメとか先生がダメということではなく

次男の特性として

集団教育の場は不適応起こしやすいということの表れです)

最近は、学校で友達と遊んだ話などもしてくれるようになり

嫌がらずにご機嫌で登校しています。

 

プログラミングというより、好きで夢中になれる活動にハマれるという時間が

息子達にとってよかったのではないかなと思っています。

 

田口 樋端先生も取材の中で

「趣味の世界などで、存分にこだわれる部分をもっていれ

世間で多少の理不尽さはスルーできるかもしれない」

と答えていらっしゃいますが

次男君にとっては、こだわりを存分に発揮でき

ハマれることが見つかったことの方が大きいことなのかもしれませんね。

 

上間 そうですね。

本当に、そうだと思います!

 

※内容は取材当時(2019年8月)