田口 上間さんご自身も子供の頃には
いじめや自尊心の傷つく経験をなさっていますが
それはどうやって乗り越えられたのですか?
上間 そうですねー。
その経験さえも、私自身の人生の宝になっていると
確信をもって、自覚できたからです。
私は今、カウンセラーとして、悩み傷ついた人の支援のお仕事をしていますが
私にとっての人生の挫折と、そこから立ち直った経験は
今の仕事にものすごく役に立っています。
また、そこで得た気づきや学びがあるからこそ
いい支援ができるようになったという自負もあります。
この気づきや学びのために、経験させてもらったと思えたら
過去の全てが自分の中で消化でき
今は、あれがあってよかったなぁと心底思えるようになりました。
田口 スクールカウンセラーとして活動していらっしゃって
学校の教育現場にどういったことを感じていらっしゃいますか?
上間 私は、学校はいい「場」だと思っていますし
先生たちもとてもいい方が多いと思っています。
色んな子ども達に関わっていると
様々な理由で学校に行けなくなる子もいる一方で
そこから立ち直ったり、成長したりするきっかけとして
先生や友達が関わっていることも多くあるからです。
心を砕いて、親子のためにと熱心に関わってくださる先生はたくさんいる
というのが、私自身の実感です。
実際、うちの息子達は、学校に適応しにくい特性を持ちながらも
いい先生に恵まれており、学校のおかげで
成長したなぁと思えることが多々あるので
学校や先生には感謝しかないです。
ただし、そういう場に、どうしたって合わないという子がたくさんいるのも
これまた事実です。
みんなと同じことを同じペースで学ばされる
あるいは、頑張ることがいいことだとか、みんなと仲良くとか…。
学校が「是」とする文化そのものが
デフォルトで馴染めないなど、色々な子がいます。
そういう子がいることも見極めた上で
様々な「場」を選択できる環境が
もっと増えるといいなとも思います。
田口 なぜ発達障害の支援において
母子ともに支援が必要となるのですか?
上間 私が子育てしていて思ったのは
子どもに特性がある場合
やはり親にも何らかの傾向があることが多くあるのですよね。
例えばうちだと、親子揃って気が散りやすくて活動が進まない。
ご飯を食べる時にテレビを観ていると、テレビに気が逸れて
食事をすること、片付けることが進まない
お風呂に入るのが遅くなる。
生活リズムがうまく作れない、などなど。
苦手さが相まって、どうにもならないとか、収拾つかないとか…。
そういうことが多分にあるんです。
また、親に傾向がなかったとしても
特性のあるお子さんの子育ては、本当に大変です。
樋端先生が、「創意工夫で生活を乗り切ろう」とおっしゃっていたかと思いますが
一筋縄ではいかないし、その創意工夫も
なかなか親だけでは思い付かないと思うんです。
障害特性への理解、特性にあった対応の仕方を考える力など
親にそうした理解や力がないと
子どもをひたすら叱りつけたり
苦手さをどうにかしようと特訓しようとしたりなど
すれ違いが起こります。
親子のそうした悲しいボタンの掛け違いを直すためにも
親への支援は不可欠だと思います。
そして、親御さんがお子さんに合った子育てをできることで
子どもも力がついてきたり、子育てがしやすくなるという効果もありますので
これが、お母さんを楽にするといった面もありますね。
※内容は取材当時(2019年9月)