行政保健師Tさん② ~発見の遅れる軽度・グレーゾーンの子の障害~

インタビュー

ひきこもりが危険!

発達障害者が危険!

ではありません。

 

不適切な養育をする親たち

適切な支援ができない、行政、警察、児童相談所など

大人の側の問題が大きいのです。

 

センシティブな問題ですが

行政保健師歴18年のTさんが日々現場で抱えている

葛藤を届けます。

 

 

田口 相談支援員さんに取材した中でも

触法問題が出てきました。

やはり不適切な養育で、何の公的な支援につながらずに大人になった青年が

祖父母に包丁を振りかざすという事件につながったというものがありました。

しかし、警察と福祉の連携が取れていない現状で、その青年は地域に戻ってきている。

そして、いまだに福祉とも医療ともつなっていないそうです。

行政、福祉、警察間で連携はないのですか?

 

T 虐待ということで言えば、目黒女児虐待事件が契機となり

この4月から児童相談所と警察は児童虐待対策として

情報共有を始めているところですが

医療との連携はまだまだだと思います。

情報共有をどうしていけばいいのか、というのは重要なキーワードで

課題です。

 

行政では、事務職、専門職問わず、数年で担当がかわり

そのたびに情報共有をし直すのと、信頼関係の構築を一からせねばなりません。

そして慢性的なマンパワー不足がある。

介入を拒否しているご家庭に入り、信頼関係を築くまでに

2年~3年かかることはざらです。

家庭訪問や、電話訪問、面談を丁寧に重ねていくので、

時間がかかります。

 

田口 警察に望むことは何ですか?

 

T 警察は思われているよりも実は権限がありませんが

情報を共有しておくことは、

大切です。

各児童相談所のスーパーバイズ先には警察官が配属されるようになり

以前よりも情報共有がなされるようになりました。

また、虐待ケースについては

要保護児童対策協議会」で管理し、会議に参集しています。

 

田口 Tさんはいわゆる「触法少年」「触法障害者」と

言われる人たちを減らしていくには

何が必要だと思いますか?

制度的なものでも、支援でも何でもいいのですが。

今、少年院は軽度知的障害の子供や発達障害を持った子供たちで

いっぱいですよね。

 

※少年院の実態について

 

 

T より早期の段階で、支援をする。

早期発見・早期支援に尽きると思います。

 

実は私の子どもは知的障害のある発達障害児です。

次男はおすわりが遅れ、発語が遅れ、1歳6か月健診の際には医療へと言われましたが

その段階では障害受容ができなかった。

2歳でまだしゃべらない、これはいよいよまずいぞと思い、医療に繋がり

就学前の4年間母子療育を受けました。

 

いつかみんなに追いつく、と思っていましたが、本人のペースで生きていくん

と思えるようになるまで、すなわち、障害受容に5年ほどかかりました。

 

現在は特別支援学校に元気に通っています。

また、今年就学した長女ですが、先日、発達障害の診断を受け

これから支援級に入級して、支援を受けていくところです。

 

彼女については全くのノーマークでした。

乳幼児健診も全てスルーでした。

専門職である私も、気づきませんでした。

 

特にグレーから軽度のお子さんについては発見が遅れます。

 

途中で不登校になる場合もありますし、そのまま成人して

いざ就労となったら、就労継続ができずに、転職を繰り返しているうちに、ひきこもり

初めて医療・福祉につながる、というケースが多いです。

 

その頃には既に二次障害を起こしていて、かなり傷ついています。

2004年に発達障害者支援法が施行され

概念や支援について語られるようになって15年経ちますが

合理的配慮や具体的な支援策が講じられるようになったのは

感覚的にはここ数年という気がしていています。

 

全くフォローされずに成人してしまった

発達障害の大人のケアも急務といえます。

こういった人たちは、フォーマルな制度からはこぼれ落ちてしまいます。

なのでインフォーマルな中での救いが必要だと思います。

本来であれば、フォーマルな制度の中で救うべきなのですが。

 

田口 インフォーマルな場とはTさんもよく参加されている

ごちゃまぜカフェ」のような場ですか?

(「ごちゃまぜカフェ」とは長野県千曲市にある

「年齢や障がいの有無にかかわらず

みんなでコミュニケーションを楽しむ」というコンセプトで

特定非営利活動法人 Happy Spot Clubが運営しているカフェ)

 

T そうですね。

ああいった場がもっと増えたらと思っています。

私は行政保健師として情けない話ですが

民間(地域コミュニティ)の力を信じています。

地域の大人たちが一丸となって

関わらなければ解消しない問題だと思っています。