緩和ケア医療は終末期だけのものではない ~3人に1人が亡くなる身近な病気がん。乳がんでスタージ4の末期の母の治療チームの再結成~

がんは、日本人の死因で最も多い病気だ。現在、日本では、3人に1人ががんで亡くなっている。だけど、身近な問題として感じたのは、母ががんになってからのことだ。
「乳がんになった。右乳房の全摘出手術を摘出する」と母から連絡があったのは、2年前の4月。その時、母は70歳だった。
乳頭も残さない。術後、抗がん剤治療はせずに、ホルモン療法だけすると方針を固めていた。
抗がん剤の副作用で苦しみながら、寿命を伸ばすより、仕事を続けて、人生を楽しみたいという理由だった。
そして、手術を終えた母は、右わきのリンパ節も郭清(かくせい:手術で、がん細胞など悪性物を取り払うこと)した。そして、肝臓や腎臓にも転移リンパ節を通して、がんは転移していた。リンパ節を郭清すると免疫力は低下する。それでも余命1年と言われていた母は、2020年12月現在、まだパートを続けている。
術前は、抗がん剤治療は受けないと決めていたが、人は生きることへの希望を簡単に捨てることはできない。なので、母は今までにトータル2回の抗がん剤治療を受けている。弱音を一切吐かないし、月に一度は一緒にビールを楽しんでいた。勝ち気で人に弱みを見せるのが大嫌いな母。抗がん剤治療を受けると髪の毛が抜けるが「このウィッグ、素敵でしょう?」といつも元気だった。もちろん、抗がん剤の影響は全身に出ていて、化粧品でも少し成分が強いとアレルギー反応が出るようになり、顔にはシミが増え、疲れやすくはなっていた。
そんな母が、3回目の抗がん剤治療を受ける今回は「診察室のついてきて欲しい」と頼んできた。親子なのになぜ今まで診察室に着いていかなかったのか?勝ち気な母は、娘の私にも自分の病状を知られるのを嫌い、全ての決断を自分でしてきたからだ。
それなので、今回の母のお願いには「いよいよ死期が迫っているんだ」と私は動揺した。
母のがんはステージ4。末期だ。
「今回、抗がん剤治療を受けたら、手足にけいれんが出るかもしれないと言われた。死ぬまで抗がん剤を続けることになる。そうしたら、仕事も続けられなくなる。だけど、抗がん剤で少しでも寿命が延びる可能性があるなら、受けたいと思う。だけど、仕事や月に一回、あなたと飲みに行く楽しみもなくなる。緩和ケアに切り替える選択肢もあるけれど、決心がつかない。一緒に先生の話を聞いて欲しい」という希望だった。
筆者は発症から2年過ぎて、初めて、緩和ケアや親の介護について、調べ始めた。
緩和ケアという言葉は耳にしたことがある人も多いだろう。緩和ケアとは、がん患者の苦痛を取りのぞき、患者と家族にとって、自分たちらしい生活を送れるようにするためのケアのことだ。
がんになると、どのようなことが起きるか?
●痛み、倦怠感などのさまざまな症状
痛みは、がん患者さんの70%にみられます。
●落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛
- せまりくる「死」への恐怖
- 自分の「人生」に対する問い
引用:緩和ケア.net http://www.kanwacare.net/kanwacare/point01.php
緩和ケアとは具体的にこのようなことを行う。
「緩和ケア」の定義とは?
痛みや、そのほかの苦痛となる症状を緩和する。
生命を重んじ、自然な流れの中での死を尊重する。
死を早めることも、いたずらに遅らせることもしない。
死が訪れるまで、患者さんが自分らしく生きていけるように支える。
患者さんの治療時から、患者さんと死別した後も、ご家族を支える。
患者さんやご家族に、心のカウンセリングを含めたさまざまなケアをチームで行う。
生活の質(クオリティ オブ ライフ:QOL)を向上させ、前向きに生きるちからを支える。
がん治療の初期段階から、外科手術、化学療法、放射線療法などと連携しながら、緩和ケアを行う。
引用:緩和ケア.net http://www.kanwacare.net/kanwacare/point01.php
筆者は緩和ケアというと、終末期の手の施しようがなくなった方にモルヒネや鎮痛剤を処方するというイメージを持っていた。なので、母の終末期までじっくり調べなかったのだが、
実は緩和ケアはがん治療の初期段階から、がん治療と一緒に受けるケアなのだ。
これを知った筆者が母に話すと「医師からそんな話はなかった。色々なところに転移しているから、痛みも不安も強かった。もっと早く知りたかった」と言った。
診察に付き添うにあたって、母が通院している大学病院のソーシャルワーカーにも事前に相談した。ソーシャルワーカーによると「患者さん側から希望を言わないと、勧めない医師も多いので、診察の際に緩和ケアを受けたい旨を医師に伝えてください。そうすれば、緩和ケア病棟の医師が治療チームに入ります」ということだった。認知度が低く、主治医の主眼は抗がん剤にあるような気がした。
また緩和ケア病棟の入院費は高額だ。
1日の入院料の自己負担分
「緩和ケア病棟」として認可を受けた施設の場合、医療費は定額制です。
「緩和ケア病棟入院料」は1日当たり37,800円となっており、この金額には健康保険が適用されます。ですから健康保険で3割負担の方の場合、1日の自己負担額は37,800円×0.3=11,340円になります。
またソーシャルワーカーによると、入院できる時期も決まっており、料金も高額なことから、緩和ケア病棟への入院は現実的ではないという。
お金がふんだんにあれば有料老人ホームに入居するという手段もあるが、母の場合、在宅で緩和ケアを受け、終末期を迎えることとなる。
母ががんになって一番に感じたのは、母自身の希望が一番だということだ。どう死ぬかはどう生きるかにつながる。母の死は母のものであり、母の人生なのだ。これから筆者は、自宅での介護に向けて、要介護認定の申請手続きに行き、母の「治療チーム」の再結成が始まる。