以前、筆者の父のアルコール依存症について書いたのが、2020年6月。
「アルコール依存症と家庭崩壊 ~子どもが毒親を切り捨てる権利~」
筆者は当時、完全に縁を切るつもりでいた。だけど、実の父だ。もちろん葛藤がなかったわけではない。
完全に縁を切る前に、父の住む区の精神保健福祉センターや社会福祉協議会に連絡をした。
身内のアルコール依存症や精神疾患についての相談窓口の一つに、精神保健福祉センターがある。だけど、そこではいい解決策はもらえなかった。依存症は「否認の病」と言われる。
本人が病気を否認しているのだから、行政は立ち入れないと言われてしまう。その後、相談するように言われたのが、社会福祉協議会。社会福祉協議会は直接、医療につなげることはしてくれないが、困りごとはないかといった形で訪問することはできると言ってくれた。
だが、父の頑固な性格だったら、社会福祉協議会の訪問など受ける気がしなかった。
そして、筆者が最後に連絡をしたのが、父が定期的に通う内科と心療内科が併設された病院だった。筆者自身もその内科にかかったことがあり、医師のこともよく知っていた。
筆者はM先生に父がお酒で暴れた過去があること、離婚してしまったこと、自分の弟妹や娘の自分も離れてしまうことを話した。何とか父がお酒を止めるように説得して欲しかった。
Ⅿ医師は「約束はできないけれど、健康診断にはいらっしゃるので、さりげなく聞いてみます」と言ってくれた。それから半年くらい経った頃、すでに離婚している母の病気が悪化したことがきっかけで父と電話する機会があった。
その時は、すっかり医師に頼んだことなど忘れていた。電話越しの父は会話に飢えていたようで、母の話などほとんど聞かず、自分のことを話し出した。
「S内科の先生を知っているだろう?この間、健康診断で行ったんだ。肝臓には何の異常もないと言われたけど、飲みすぎじゃないかって言うんだ。それで、娘とも連絡がつかないと言ったら、『アルコール依存症ではないかもしれないけど、人間関係が壊れてしまうのは飲みすぎですね』と言われた。だから、控えているんだよ」といった内容。
筆者はⅯ医師の「アルコール依存症ではないかもしれないけど、人間関係が壊れてしまうのは飲みすぎですね」というセリフを聞いて、「なんて上手な言い回しだろう」と感動した。さすが心療内科の医師だと思った。離婚した母も娘も「アルコール依存症だ!お酒をやめろ!」と言い続けていた。しかし、プライドの高い父がその言葉を受け入れることはなく、そのストレスから余計に飲むの繰り返しだった。
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