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  • 歌詞に手話を乗せて。目で観て・目で聴いて・心で感じる音の世界を届ける| サインパフォーマー“なみし”

    歌詞に手話を乗せて。目で観て・目で聴いて・心で感じる音の世界を届ける| サインパフォーマー“なみし”

    手話、なみしなみしさんは、関東を中心に全国各地で活動しているサインパフォーマーだ。サインパフォーマーとは、手話を用いて音を奏でるアーティストのこと。「身体全体で奏でるサイン」をテーマに音楽の歌詞に手話をつけて、目で観て、目で聴いて心で感じる音の世界を届ける。

     

    手話歌を披露するなみしさんと、手話芸人ちからいっぱい牛込さん。なみしさんは、手話歌が学べる手話パフォーマンスの個別レッスンも行っている。

     

    なみしさんには、以前「APD(聴覚情報処理障害)」の当事者としてもお話を伺っている。APDについては、下記の記事をご参照いただきたい。

     

    『聞こえているのに聞き取れない?APD(聴覚情報処理障害)とは?|APDの情報を発信するYouTuber笑歩さんに聞いてみた』

     

    APDは発達障害との併存率が53%と高く、なみしさんは、ADHDの当事者でもある。今回は、サインパフォーマーとしての活動やお仕事のこと、ADHDについてなど様々なお話を伺った。

    なみし,サインパフォーマー

     

    障害がある人としゃべりたい。独学で手話を覚える

    なみしさんが、サインパフォーマーとして初めて舞台に立ったのは今から6年前。2015年3月のこと。最初に手話を覚えたきっかけを伺ってみる。

     

    「小学校低学年の時、障害がある人の存在を知りました。小学校には支援学級ってありますよね。そこには当然ですが、自分と同じ年頃の子どもたちが通っています。それで、どうしてこの子たちは、自分たちとは違う学級なのか興味を持って、支援学級に通う子たちには障害があるのだということを知りました」

     

    なみしさんは、障害のある人の存在を知り、障害とは何なのか、どんなものなのかという疑問を膨らませていく。そして、自分の出来うる限りの範囲で、障害について調べるようになった。

     

    「障害について調べてみようと思ったのは、クラスの子だけでなく、支援学級の子たちとも仲良くなりたかったからです。友達になりたかったんです。

    色々調べていくうちに、耳が聞こえないという障害があることを知りました。耳が聞こえない人たちは、言葉ではなく、手話を使っておしゃべりをするのだということも知って。学校の手話クラブに入部しました」

  • “事故物件住みます芸人”松原タニシが一番怖かった“崖”とは? ~一人ぼっちダークツーリズムのススメ~

    “事故物件住みます芸人”松原タニシが一番怖かった“崖”とは? ~一人ぼっちダークツーリズムのススメ~

    災害や戦争があった場所を観光することを、ダークツーリズムやブラックツーリズムなどと呼ぶ。
    松原タニシさんの新著『死る旅』はまさに、死を見つめるダークツーリズムだと言える。

    タニシさんは前作『異界探訪記 恐い旅』から数えると実にたくさんの場所に旅をしている。『死る旅』にはカラー写真のギャラリーコーナーがあり、よくもこんなにたくさんのスポットに足を運んだものだと驚いた。
    そもそも松原タニシさんの活動の中心である「事故物件に住む」という行為も、考えようによってはダークツーリズムの一環であるとも思える。

     

    前回に引き続き、タニシさんの新居である事故物件でお話を伺った。

    「旅行は好きですね。これからも続けていきたいと思います。目的地はもちろんネガティブな場所ですね」

    とタニシさんは当たり前のように答えた。僕もタニシさんと同様に、青木ヶ原樹海だとか、殺人現場とかに足繁く通うタイプなので、
    「そうですよね~」
    と同意した。

     

    たがこれは一般的ではない。ポジティブな場所に旅行する人の方が圧倒的に多いだろう。

    「明るい場所に旅行に行って
    『こんなに楽しかったですよ!!』
    って人に言う気はないですね。そんなことしたら、
    『何楽しむために旅行に行ってんねん?』
    って自分につっこんでしまいます(笑)」

     

    仕事熱心とも言えるが、もっと根深いものを感じる。やはり、タニシさんは骨の髄までダークツーリズムが好きなんだろうと思う。

    「知人に自動車を出してもらうこともありますが、1人で行くことが多いですね。1人の時は基本的にバスや電車を利用して移動します。原付免許は持っているので、沖縄ではレンタルバイクを借りて移動していました。
    1人旅は気ままですけど、それ以上に怖い面もあります。ワンミスで命取りになる可能性も高いです。正直、女性は被害にもあいやすいので、やめておいたほうが良いのではないかな? と思います。行くとしたらしっかりした対策をしてから足を運んでください」

    タニシさんいわく一人旅では、戦争関連の施設を巡るのがオススメだという。
    友達どうしで行くとなかなか解説書などをちゃんと読まない。あんまり長く同じ場所にいると友達が退屈するのではないかと気を使い、観察も早めに切り上げたりする。
    なによりお喋りや食事が楽しくて、なかなか戦争について考えられない。

    「1人で行くと他にすることがないから集中して見ますよね。かつて戦場だった場所の知識をしっかり吸収すると
    『エグい』
    『かわいそう』
    『つらい』
    というような感情が自分の中に沸き立つのを感じます。たとえば『ひめゆりの塔』も、1人で行ってはじめて
    『ここって、こういう場所なんだ』
    などとしっかりと知ることができました」

     

    そんな戦争遺構の中でも、タニシさんが特に怖いと思った場所は、沖縄県中頭郡読谷村にあるチビチリガマだという。ガマとは洞窟のことだ。

    「沖縄の戦地をいろいろ回ったんですけど、正直全然怖くなかったんですよ。大勢が亡くなった摩文仁の丘も、ただただ広くて綺麗な場所で戦争の禍々しさは感じませんでした。そういう施設はそれはそれで大事だと思います。
    ただ、チビチリガマだけはものすごい恐怖を感じたんです。なんというか、人の怖さがあるような気がしました」

     

    チビチリガマは1945年の沖縄戦の際、村民が逃げ込むための防空壕として使われていた。
    村民はアメリカ兵が投降を迫った際、
    「アメリカ兵に殺されるくらいならいっそ……」
    と集団自決を決行した。
    防空壕に集まっているのは家族や顔見知りだ。
    つまり親類縁者同士で殺し合った。
    死亡者数は80人以上だと言われている。半分以上は子供だったという。
    現代に生きている人には想像できないほど、悲惨な出来事だ。

    「僕が怖いなと思うのは、集団自決があったことを1983年まで、生き残った人たちが黙っていたことなんです。近所の人たちだった、親戚だったりするわけで、言うに言えなかったんでしょうね。
    ジッと黙ってすごした38年の重みってすごいなって思うんですよ……」

     

    たまたま外部から来た人が事実を知り、情報は広がった。それからは逆に悲惨なできごとを公表しようということになった。チビチリガマには看板が建てられたり、像が設置されたりして、慰霊の場になった。

     

    しかし2017年には十代の少年たちにより、内部が破壊されてしまった。
    千羽鶴が引きちぎられ、器物は破壊され、遺骨が収められた場所もも荒らされた。

    「そういう出来事があったためか、
    『ここはめっちゃ大事な場所やねんぞ!!』
    『無礼を働くのは許さないぞ!!』
    というような念がこもっているのを感じました。すごい思いが強くて、その思いは千羽鶴の数の多さや、造形物などからも漂ってきていました。それをはからずも、恐ろしく感じてしまったんだと思います」

     

    タニシさんは、自殺スポットにもたくさん足を運んでいる。怪談などでは
    「自殺スポットに行くと、気持ちが引っ張られる」
    というような話を耳にするが、タニシさんはそのような経験はなかっただろうか?

    「自殺スポットとして有名な東尋坊に行きましたけど、正直全然自殺者の気持ちは分からなかったんですよね。確かに崖だから高くて怖いですけど、でもそれだけなんです。
    それはたぶん僕に死ぬつもりがないからですね。死ぬつもりがない人間にとっては、東尋坊はただの落ちたら危ないだけの、ただの崖なんですよ。
    ただ、単純に高くて怖いだけなら、和歌山県の三段壁の方が怖いんです」

    東尋坊は高さ約25メートル。

    三段壁の高さは、約5~60メートルで、単純に倍以上高い。三段壁は、夜に行くと自殺者を防止するセンサーが鳴っていてそれも怖い。

    タニシさんは、様々な崖に足を運んでいるという。
    沖縄県喜屋武岬、
    和歌山県三段壁、
    静岡県城ヶ崎海岸、
    島根県日御碕、
    福井県東尋坊、
    長崎県壱岐島左京鼻。
    ざっと数えただけで、6つもあげられる。まるで崖マニアである。
    タニシさんにとって一番怖い崖はどこだったのだろうか?

    「長崎県壱岐島の左京鼻ですね。ここが一番怖かったです!!」

    左京鼻は陰陽師の後藤左京と龍造寺五世日峰昌和和尚が雨乞いの祈祷をした場所として知られている。しかし雨は振らず、後藤左京は断崖から身を投げよう、日峰昌和和尚が焼身自殺をしようとした時、大雨がふりはじめたと言われている。
    たしかに生き死にがからんだ伝説ではあるが、比較的ハッピーエンドである。あまり怖くない。
    ちなみに東尋坊は、悪僧東尋坊を酔わせて崖から海に放り込んだら、そこから49日海が大荒れした、というなかなか激しいエピソードがある。そうとう怖い。

    「怖かったのはそういういわくの部分ではないですね。左京鼻はなだらかな下り坂なんです。どこまでが坂なんだろう? って進んで行くと、急にストン!! と崖になる。もちろん柵はありません。
    しかも地面には芝生のような草が生えているんですね。これがツルツル滑るんですよ。歩いていくと
    『わあ!! 止まらない!!』
    ってなるんです。夜中に行ったから、本当に危なくて……とにかくめちゃくちゃ怖かったですね!!」

    とタニシさんは笑顔で恐怖の理由を教えてくれた。

     

    こうやっていわくのある場所や、自殺スポットへの旅話を聞いて、

    「自分は絶対行きたくない!!」

    と思った人はもちろんいるだろう。だが、

    「私はちょっと遊びに行ってみたいかも?」

    と思った人も多いのではないだろうか?

     

    普段、意識することのない“死”を見つめる旅に出かけてみたいと思った人は『死る旅』を読んで欲しい。擬似的に死を知る旅を経験することができる。
    もし行きたい場所が見つかったら、現地まで本を持って出かけるのもいいと思う。
    タニシさんのガイドでダークツーリズムを満喫できるなんて最高ではないだろうか?

  • 睡眠障害がある方必読!|自然な睡眠導入を促してくれる!麻からできたCBDオイルでぐっすり睡眠

    睡眠障害がある方必読!|自然な睡眠導入を促してくれる!麻からできたCBDオイルでぐっすり睡眠

    CBD、ヘンプ

    発達障害がある息子の育児マンガを書いています、かなしろにゃんこ。です。

    CBDオイルを知っていますか?

    麻の茎と種子から採れた成分で作られた麻オイルのことです。

     

    CBDオイルで寝つきが悪かった睡眠の問題が解消できたというお話です。睡眠がうまく取れないなど、悩みがある方に是非読んでいただきたいです。

     

    麻の文字にドキリ!それって危険では⁉と思う人もいるかもしれませんね。

     

    大麻は大麻でも、幻覚作用を引き起こす成分のない茎・種子を使っているカンナビジオール(CBD)は、薬物依存や幻覚作用を引き起こしません。

     

    海外では精神疾患がある人の治療に使用されているなど、麻が持つ植物の力が注目されています(てんかん、認知症、鬱病、睡眠障害、不安障害、自閉症、統合失調症、チック症などの精神疾患などに使用されている)。

     

    日本では医療大麻(医療マリファナ)として鎮痛・抗がん・催眠などに使われています。ですが、強い精神作用があるテトラヒドロカンナビノール(THC)が含まれる薬品・製品ではないオイルで、厚生労働省もCBDオイルを日本で販売することを認めています。

     

    麻というと昔はその辺に生えていました。現在も北国では、道端や林の中などにも生えていて、誰も取り締まらないくらい自然に扱われているようです。

    CBD、ヘンプ

    日本人は古来から麻と共に生きてきました。衣類にしたり紐にしたり、袋にしたり、麻の繊維は何にでも使われてきました。

     

    麻の実はスーパーフード「ヘンプシード」として、健康志向の人に喜ばれています。

    私もヘンプシードを食べたり、麻の炭を歯磨き粉に混ぜて歯磨きをしたりします。歯がとっても白くなるのでおススメです。

     

  • “事故物件住みます芸人”松原タニシが逝く『死を見つめる旅路』とは?

    “事故物件住みます芸人”松原タニシが逝く『死を見つめる旅路』とは?

    松原タニシさんは“事故物件住みます芸人”として知られている。そして著者累計30万部を突破した、人気作家でもある。

    著書『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房)はベストセラーになり、映画化もされた。映画もヒットして、昨年『事故物件怪談 恐い間取り』の続編である『事故物件怪談 恐い間取り2』(二見書房)が発売された。
    また事故物件シリーズとは別に『旅』をテーマにも本を書いている。『恐い間取り』の翌年には、『異界探訪記 恐い旅』(二見書房)を上梓している。心霊スポット、事件現場、などタニシさんが実際に旅をするルポだ。
    そしてこの本の続編と呼べる『死る旅』(二見書房)が、本日7月9日に発売された。

    死る旅、書影

    今回は、新刊の内容について伺うため、タニシさんのお宅を訪ねた。

    タニシさんは現在も事故物件に住んでいる。最新のお宅は13軒目になる。同時に5軒の物件を借りている。
    今年になって賃貸しはじめたという東京の物件にタニシさんと一緒に足を運ぶ。タニシさんも久しぶりに訪れるそうで、スマホで地図を確認しながら進む。

    「ここですね」

    とタニシさんが指差す先を見ると、小さめの鉄筋コンクリート造りのアパートがあった。

    「まず一階で人が亡くなっているらしいです。で2階で殺人があり、僕の借りた部屋でも人が亡くなっていると言われています」

    と淡々と語りながら、部屋に案内してくれた。最低3人が亡くなっている、なかなかヘビーな物件である。
    鍵でドアを開けようとするが、なかなか鍵が合わない。5軒も物件を借りていると、鍵の管理もなかなか難しくなるのだろう。

    部屋を開けるとかなり狭い1ルームだった。部屋の端っこに小さなキッチンがあり、ユニットバス、エアコンは設置されている。

    ただ狭いけれど、壁や床の状態は良く、日当たりも良いので清潔感はあった。床に体液のシミがあったりするような事故物件独特のおどろおどろしさはない。

    タニシさんが住む事故物件には何度か訪れたことがあるのだが、来るたびに不安になる。
    「人が亡くなった物件に足を踏み入れるのだから不安に感じて当たり前だろう?」
    と思うかもしれないが、不安の発生源はそこではない。

    タニシさんは事故物件から事故物件に移り住んでいる。つまり引っ越しが多い。だからか極端に部屋に物が少ないのだ。部屋から全く生活感が感じられず、長くいると不安になってくるのだ。
    そして新しい部屋は今まで以上に物がなかった。白っぽい狭い部屋の隅っこに寝袋がバサッと落ちていた。そしてその隣には、ティッシュ一箱とトイレットペーパーが袋入りで落ちていた。
    ……それだけだった。タニシさんは
    「トイレットペーパーを枕にしてるんですよ」
    と言った。
    ブレイクした芸人がトイレットペーパーを枕に寝ているとは、ミニマリストにもほどがある。僕はホームレス取材をするが、彼らのほうがよっぽどたくさんの物を持っている。

    この部屋の家賃は、東京にしては安かった。他の部屋も事故物件であるがゆえに割引されていたりもするだろうが、それでも5軒借りているとなると、それなりの額になるだろう。

    「月の家賃は合計で20万円前後ですね」

    都心部のタワーマンションに余裕で住めるじゃないか!! 現在はコロナの影響でなかなか足を運べない部屋もあるらしく、誰も住んでいない部屋に家賃を払っている状態になっているという。

    タニシさんは実にストイックだと思う。
    自分のお金で事故物件を借りて、そこに住み、起こったことを発信する。
    なんでもありのオカルト業界の中では、実にケレン味のない実直な取材をしている。

    そんなタニシさんの旅はもちろんストイックだ。『異界探訪記 恐い旅』ではひたすら心霊スポットや事故現場など恐い場所を回った。今回の旅もそのようなものなのだろうか?

    「実は『死る旅』は僕が心霊スポットに飽きちゃった……というところから始まるんです。冒頭は『恐い旅』からの続きで、無理矢理に心霊スポットをめぐる旅をするのですが……。ただただ怪談を集めに行くことに虚しさを感じました」

    タニシさんには前々から、心霊スポットや事故現場に『恐がりに行く』というのに、ずっと違和感を感じていたという。
    死る旅』の第二話のタイトルはなんと
    『心霊スポットに飽きちゃった? 自我崩壊、目的のない旅』
    である。

    「どうしても心霊スポットって同じ場所になりがちなんですよね。誰かがすでに取材していたら、僕はとたんにやる気がなくなってしまうんです。
    たとえば、らむさんとも青木ヶ原樹海に行ってますよね。それはそれでとても刺激的な経験でしたけど、僕はらむさんに連れて行ってもらっているだけで、実際に書くなら僕が書くより、らむさんが書いたほうが面白いですよね?」

    確かに僕はタニシさんと一緒に樹海に行ったことがある。タニシさんに
    「どのような服で行ったらいいですか?」
    と聞かれ
    「登山ではないので、そこまで気張らないでもいいですよ」
    と答えたら、本当に普段どおりの服で来たのでビックリした覚えがある。VANSのスニーカーは青木ヶ原樹海を出るときにはボロボロになっていた。

    「誰かのネタを確認しに行くんじゃなくて、自分だけのネタを探さないとダメだと思うようになりました。
    ずっと腑に落ちなかった気持ちを、腑に落とすために旅を続けている感じでした」

    タニシさんはそんな気持ちで、100を超える死にまつわるスポットを回ったという。
    そんな中で、全く知らなかった話を現場で知ったり、変な出来事が起きることがあったという。

    「にしね・ザ・タイガーという後輩がいるのですが、彼はよく心霊スポットへ行く時についてきてくれたんです」

    にしね・ザ・タイガーさんは、阪神タイガースと特撮ヒーローが大好きな、元引きこもりの芸人さんだという。

    「にしねと一緒に行くと、すごい高い確率で何かが起きるんですよ」

    事故物件での生放送では、にしねさんの持ってきた仮面ライダーのベルトが突然起動して音が鳴った。
    大阪の源氏の滝では、にしねさんが取り憑かれたように急にすごいスピードで山に登っていき、山を削った人たちに怒りだした。

    「奈良の廃神社に行った時には、鳥居をくぐった瞬間から急に、廃神社を修行場としていた玉姫教会の巫者 中井シゲノさんのことを延々とほめたたえはじめました」

    この時の様子は動画が残っていて、見させてもらったのだが、普段はおとなしいにしねさんが、ハキハキとした口調で
    「中井シゲノさんは~」
    と何度も何度も話続けるのが、とても異様だった。

    「にしねは、京都の伏見稲荷大社でもおかしくなったんですよ。にしねのスマホがまず『データ使用の警告』『データローミングオン』とか急にバグりだして、その後笑いながら駆け足でどんどん石段を駆け上がっていったんです。途中、にしねは石灯籠にお辞儀をしていたんですが、その時の記憶は全くないそうです。
    実は玉姫教会は伏見稲荷大社の支部であり、密接な関係があったようです。そういう“つながり”って面白いですよね」

    「にしねさんがなぜ取り憑かれるのか? シャーマン的な資質があるのか?」
    という疑問が湧いてくる。
    死る旅』にはさっちゃんというシャーマンも登場する。タニシさんは、にしね・ザ・タイガーと、さっちゃん、中井シゲノには共通点があるという。

    「3人とも『前に出えへん』というのが似てるんです。中井シゲノもさっちゃんも、欲がないんですね。欲に走ったら、急に胡散臭くなって、本物じゃなくなんです」

    タニシさんが、にしねさんに
    「なぜ心霊スポットについてくるの?」
    と聞いたことがあった。にしねさんは、
    「年上のお兄さんに遊んでもらってる感じなんですよね~」
    と答えたという。
    動画配信に出て知名度を上げて売れるキッカケにしよう、などというお笑い芸人としては当たり前の欲は彼にはないようだ。

    「にしねはよく
    『僕は元々引きこもりだったので、0だったんですよね』
    なんて語るんです。だから彼は“器”なんだなって思うんです。器的な人だから、すぐに取り憑かれてしまうのではないか? と仮定しました。
    僕は神秘現象はなんでも信じるタイプではないのですが、『何か起こす人』はいるんだと思うようになりました」

    タニシさんは、誰かの意図が入った怪談が嫌いだという。その意図に乗っかるのも嫌だ。言わばそれは『胡散臭い本物じゃない怪談』なのだろう。
    だからタニシさんは、すでにある『怪談』をたしかめに行く旅ではなく、実際に行ってそこで、自分だけの体験をし、オリジナルのエピソードを得ようとしている。

    「結局、安易な幽霊話とかではなくって

    『死ぬってどういうことなんだろう?』

    という本質的な話に興味が出てきてますね。これだけ孤独死で人が亡くなってるわけですし。この本は、生きるために死と向き合った僕の旅が綴られています」

    事故物件に住む芸人が、死を見つめる旅路を綴る『死る旅』。
    興味がある人は是非、読んでみてはいかがだろうか?

     

                 

  • 「その沼入るべからず —CASE3#自然なお産」帝王切開は残念なのか?!自然が一番というマウント

    「その沼入るべからず —CASE3#自然なお産」帝王切開は残念なのか?!自然が一番というマウント

    出産、育児、健康法。女性の生活まわりにあるさまざまな情報の中には、ハマるとヤバいものがたくさん⁉ 山田ノジルが独自の視点で突っ込みつつ、沼の注意点をお届けしていきます。

    CASE2#母乳神話はこちらから

     

    Case3 自然なお産

    現在、第2子妊娠中。第1子は何の疑問もなく総合病院で産んだけど、その後「自然なお産」なる選択肢があることを知った。助産院などで行われ、医療の介入は最低限に「自分の産む力・子供の生まれる力」を最大限生かす方法なんだとか。それを知ると、「上の子は本当に、分娩台で生まれたかったのかな?」「自分らしいお産だったと言えるか?」「会陰切開や吸引は自分に必要な処置だった?」ということが気になりはじめ……。

     

    お産は本来神聖な行為であり、医師たち観衆のもとでするようなものではない。昔は皆自宅で産んでいた、当たり前の産み方。ヒトの本能であるそれができなくなっているのは、生物としておかしい。病院でのお産は機械的で冷たいから、出産時に分泌される愛情ホルモンが出にくくなる。するとお産が難航し、育児もたいへんになるetc. 

     

    よくネットとか体験談で「帝王切開は残念な出産」「下から産まないとダメ」とかの意見があるのって、こうした事実があるからなんだろうか。

    でも調べると、現代女性が自然なお産をするには、結構な努力が必要になるようだ。ブログなどの体験談には、1日3時間の散歩やハードなスクワット、床の雑巾がけ、白砂糖排除とかが出てくる。コレ、働きながらは難しくない!?(一般的な企業では、産休がとれるのは妊娠8か月頃から)

    何がいいのか悪いのかよく分からなくなってきたのが、今ここ。

    *******

    「自然なお産」とは、お産が医療施設で行われるようになった以前の時代に主流だった、昔ながらの出産法のことです。昔は医師の立ち合いもなく、ほとんどの女性が自宅で産んでいたのだから、会陰切開や吸引・鉗子分娩、分娩台、帝王切開、麻酔、陣痛促進剤などは「不自然」である。「母親が主体的」に「自然の流れ身をまかせる」ことが、自然でいいお産だとする考えです。日本では2007年ころにちょっとした自然なお産ブームが発生しました。2021年7月の現在はコロナ禍というご時世もありやや下火傾向ですが、自然なお産界隈が放ったメッセージは薄まらず広がり続け、多くの女性たちを混乱させたり傷つけたりする原因になっています。

     

    自然なお産を推奨している界隈では、こんなメッセージが発信されています。 

    「自分の産む力と子供の生まれる力を最大限に使いきる自然なお産は、神秘的かつ感動的」

    (訳・医療が介入すると、これが損なわれる)

     

    「真実のお産(=自然なお産)をしてこそ、本当の母親になれる」

    (訳・無痛や帝王切開は楽をして産んでいるので、けしからん。認めたくない)

     

    「自然なお産では愛情ホルモンがしっかり出るから、その後の育児も楽になる」

    (訳・楽して産んで、子育てできるの~? という偏見)

     

    「アットホームな環境で信頼関係を築きながらのお産となるので、満足度も高い」

    (訳・病院は非人道的で冷たい。後悔するよという脅し)

    心身ともに安定している状況で冷静に聞けば「根拠ねーわ」と鼻をほじって聞き流せる言説ですが、なんといっても妊娠・出産案件です。妊娠していれば体内で突貫工事が行われ、ホルモンバランスが嵐のように変化している、非常事態下。心身ともに不安定で朦朧としていると上手く避けられず、真正面から強烈なメッセージでぶん殴られ、コロっと鵜呑みにする人もいるでしょう。そのうえ「お腹を痛めて産む」ということが大切の思われている精神論から、非・自然なお産へは差別的な暴言まで放たれます。

     

    「帝王切開で生まれた子は、最初の試練をくぐってきていないから弱い子どもになる」(訳・産道を通ってきていない)「寝ている間に終わるお産なんて、ラクしている。痛みを感じて産まないと、親になる覚悟が生まれない」「無痛分娩は赤ちゃんを苦しめる悪いもの※」「陣痛を安易に麻酔で麻痺させるのは、生まれる力からの逃げである」「吸引や鉗子で生まれた子は人相が悪い」「お産に挑む姿勢かうかつであったから、帝王切開になった」「しっかり準備して自然に産めば、会陰を切る必要はない。会陰切開は、産後の身体を痛めつける、悪しき習慣」

    母子に影響がある静脈麻酔を行ったり、硬膜外への局所麻酔でも濃度が高かった時代があるが、現在は安全な量が使われるようになっている。

     

    書いているだけでイラっときますから、直に言われた人たちは本当に辛かったことでしょう。自然なお産布教で放たれるメッセージの中には、一理あるものもあります。必ずしも分娩台や会陰切開が必要ではなかったり、古い時代の麻酔には問題点もあったでといいます。しかし多くは根拠のない話ばかりであり、現代文明を憎む古代文明の邪神に取り憑かれちゃった~? くらいにしか思えません。そもそも帝王切開をはじめとする医療行為は、命を守るためのもの。楽するためとか精神的な余地は一ミリもないハズです。「やればできる!」と言わんばかりの根性論・感情論とすり替えて非・自然出産を貶めるとは、不自然すぎる話。当事者が「こう産みたい」と思う気持ちはあっていいと思いますが、「こうでなければならぬ」となるとやっかいですね。

     

    「自然」に産んでいた時代は現代と比べ、母子ともに死亡率が桁違いであるのも今一度再確認しておきたいポイントです。自然なお産を妄信する人たちは、それすらも「自然の摂理」として、弱い種は淘汰されるという優勢思想もあるので、ちょっと……どころか、相当怖い。

     

    多少無理があっても苦労しても、よりよい産み方をしなくてはならないと思わされてしまうのは「子供に関するトラブルは、何でもかんでも母親のせい」とする風潮にも原因があるでしょう。しかし卵が先かニワトリが先か、自然なお産の根底にある考えもそれを増長していそう。自然なお産神話を真に受けてしまうと、アトピーや障害など、子どもに何かあったときに「下から産んであげられなかったせいでは?」「自分のせいだ」という考えになり、せめて育児は……と、手作り信仰など別の沼にハマっていくルートも高確率で待ち受けています。

     

    本来、妊娠・出産・育児はコントロールが難しいもの。スタート地点で思い通りにしようとこだわりすぎると、その後の苦しみが増えるだけです。努力していかに成功(自然に産むこと)を勝ち取ったかという体験がドヤ語りされるのは、難しいからこそだと思います。しかも自然なお産は、条件の限られた一部の人しか選択することができないため、ちょっとした優越感もあるのでは。

     

    「第1子を病院で産んだとき、イヤな思いをして悔いが残った」というのは、自然なお産の動機あるあるですが、そもそも出産は自己実現の場ではありません。「感動的なお産にしましょう」というささやきは、「こちらにおいでおいで~」と手招きしている沼の妖怪。この妖怪は、人生の一大イベントへの憧れや、後悔の気持ちにスルリと入りこんでくるので要注意です。もちろん適切な医療を取り入れたうえで、ムリなくバランスよく自然なお産を応援してくれる病院・助産院などはたくさん存在しますので、もし自然に産みたいと思ったら、その施設が妖怪の棲む沼でないかをよ~く見極めましょう。

     

    そして非・自然なお産をディスられた皆様におきましては、「妖怪がなんか言ってる」くらいに聞き流しましょう。親しくしている友人あたりに自然のお産の素晴らしさを力説されるとちょっと厄介ですが、生まれてくる過程でなく「無事に生まれておめでとう!」と子供の誕生そのものを祝う姿勢が無難でしょう。

  • 反オリンピックデモ VS オリンピック反対に反対の政党 終わりなき罵声の末に平和はあるのか?

    反オリンピックデモ VS オリンピック反対に反対の政党 終わりなき罵声の末に平和はあるのか?

    もう東京オリンピックの開会式まで、一ヶ月を切った。
    オリンピック観戦を楽しみにしている人もいるだろうし、コロナの感染がおさまっていないのにオリンピックなんてやって大丈夫か? と不安になっている人もいるだろう。

     

    実際のところ

    「コロナは不安だけど、まあオリンピックが始まったら一応テレビで見るか」

    くらいの温度の人が一番多いのではないだろうか?

     

    筆者は、根っからのスポーツ嫌い、お祭り嫌いの人間である。
    当然、オリンピックも好きじゃない。見たくないし、オリンピックの時には東京にいたくなかったので、本来オリンピックが開催される予定だった2020年7月24日から一ヶ月間は、スリランカに長期取材に出かけてやりすごす計画だった。
    残念ながらコロナの影響でスリランカへは行けなくなり、またオリンピックも延長されてしまった。

     

    それから1年が経ち、ワクチン接種はスタートしているものの、まだまだ感染はおさまっていない状態でオリンピックは開催されるようだ。
    オリンピックは開催されても、僕はスリランカに逃げられないのがとても残念である。

     

    冷静に考えて、現在の状態でのオリンピック開催を不安に感じるのは、いたって当たり前のことだと思う。オリンピックによって感染が拡大したり、医療が圧迫する可能性もあるだろう。

     

    そんな東京オリンピック開催まで一ヶ月となった6月23日、新宿で大規模な『反五輪デモ』が開催されることになった。
    知人のジャーナリスト藤倉善郎氏に「取材に行こう」と誘われて、渋々ながらついて行くことにした。
    18時過ぎに到着したが、すでに現場は騒然としていた。複数の反五輪団体が都庁前に集結し怪気炎を上げていた。

    「中止だ! 東京五輪」

    「市民の命と医療が第一です!」

    「Cancel the TOKYO Olympics」

    などなど沢山のプラカードが掲げられ、怒声が飛び交っている。歩道に人がおさまりきらず、路上にあふれている。警察官と警備員が

    「車道に出ないで!!」

    「立ち止まらないで!!」

    とギュウギュウと雑に押し戻している。

     

    メディア、取材系の人もたくさん来ていた。テレビ局のカメラがプラカードを抜いて撮り、新聞社のカメラマンがパシパシと写真を撮っている。
    僕も取材者としてのキャリアは長いのだが、普段は樹海やスラム街を目的なくテクテクと歩くような取材が多く、こういう注目されているニュースの現場には滅多にこないので戸惑う。フィールド全体を、見渡した感想は

    「めっちゃ密だなあ……」

    である。正直、すっごい帰りたい。


    筆者は先にも書いた通り「お祭り嫌い」な性格なので、そもそもデモが苦手だ。

    「現在の状況でオリンピックをやるなんて冷静に考えておかしい!!」
    と言いたくなる人がいるのは分かる。

     

    ただ、反対するのにこんなに密になっちゃっていいもんだろうか? 僕とは真逆でデモ活動が大好きな藤倉さんに、

    「めちゃくちゃ人数も多いし、怒鳴りまくってるし、これでコロナが発生したら本末転倒なんじゃない?」

    と聞いたところ

    「このコロナ禍の中で東京オリンピックやるって国が言ってるんですよ!! だったら、反五輪デモだってやっていいでしょう!!」

    と言われた。
    いや、東京オリンピックを反対する理由は「コロナの感染拡大」が一番大きいはずだ、だから……。などと言い返そうかと思ったが、また屁理屈で返されて堂々巡りになりそうだ。
    グッと言葉を飲みこんだ。

     

    すると

    「五輪オリンピックを中止するな!! スポーツの文化を壊すな!! こいつらが飛沫を飛ばしながらデモをやってる事自体が、オリンピックができるってことの証明だ!!」

    とデモ隊を口汚く罵る声が聞こえてきた。

     

    一瞬、僕が飲み込んだ言葉がケツから飛び出したのかと思ったが、ただ僕はそこまでキツイことは思ってない。
    それにスポーツの文化とか壊れても全然構わないし。

    「新型コロナはただの風邪!! 誰も病気で苦しんでません!! マスクを外そう!! ワクチンは危険だ!!」

    などと言っている。

     

    いやそれはもう全然思ってない。僕は、コロナにはものすごく感染したくないし、早くワクチンもバンバン打ちたい。

     

    彼らは「オリンピック反対に反対」「反ワクチン」を訴える『国民主権党』だった。
    反オリンピックの集会が行われている対面に、『ワクチン危険』『マスクを外そう』と書かれた選挙カーで陣取り、マイクで罵声を浴びせかけている。

     

    国民主権党の党員の一人、元料理人の男性が、コック姿ノーマスクで反オリンピック集会の人たちを挑発して、一触即発の状態になっている。

    その後、ギュウギュウな密な中、スピーチがあり、全員でデモのスタート位置に移動。
    19時に、デモ行進はスタートした。

    「何がの平和の祭典だ!!
    コロナ解雇で仕事がない!!
    コロナ賃下げで生きられない!!
    生き抜くために戦おう!!」

    と軽快な太鼓に合わせてシュプレヒコールがこだまする。その後に続くグループは、

    「平和の祭典ウソっぱち!!
    やってる場合かオリンピック!!
    さっさとやめろオリンピック!!
    中止だ中止、オリンピック!!」

    と少し違うスローガンを叫んでいた。

     

    様々な団体が参加しているから、デモの方式も少しづつ違う。訴える内容も少し違って面白い。

    「じゃ、反五輪音頭でございます」

    という声が聞こえてきた。

     

    2021年に音頭て!!
    三波春夫の『東京五輪音頭』のオマージュだろうか?

    「オリンピックはいりません~♪
    世界のどこにもいりません~♪
    パラリンピックはいりません~♪
    世界のどこにもいりません~♪
    原発事故は終わってねえぞ~♪
    聖火リレーの火を消すぞ~♪
    聖火はナチスの置き土産~♪
    監視をするな、ついてくるな~♪」

    とめっちゃ攻撃的な音頭を朗々と歌い上げていた。

     

    主催者側の声明によれば、コロナ感染拡大を防ぐために、十分なソーシャルディスタンスを取ったと言っているが、個人的には
    「そうかなあ?」
    という感じだった。

    デモは都庁前から、新宿駅東口のアルタ前まで続いていく。新宿駅南口駅の坂を登る途中、デモを遮る形でバンが停まった。
    またもや国民主権党だ。

    「オリンピックは可能です。この行進自体がオリンピックはできるんだということを雄弁に物語っております。コロナは恐れるにたるような恐ろしい病気ではありません!!
    もっと大きな声出しましょう!! まだまだ飛沫が足りねえなあ!! オリンピックできるじゃねえかこの野郎!!」

    とかなり過激にキツイ言葉を、デモに参加している500人に浴びせかけている。
    当然言われた人はカチンと来る。

     

    僕は、デモ隊ではないけれど、それでもムカッとした。ほとんどの人は無視して歩いていくが、おさえきれず

    「帰れ!! 帰れ!!」

    と怒鳴り散らす人もいるし、自動車の窓をドンドンと叩く人もいた。自動車の助手席に乗っていた、国民主権党のコック姿の党員は、窓の外を歩く反五輪の人たちにゲラゲラと笑いかけていた。
    漢字で『嗤う(わらう)』と書くのがふさわしい。あざけりの笑い。嘲笑である。さすがに少しゾッとしてしまった。

    生物の本に

    「笑顔というのはそもそも攻撃的な表情である。猿が歯を見せて威嚇していたのが変化して笑顔になった」

    と書かれていたのを読んだことがあった。その時は「ふーん、そんなもんかねえ」と思ったが

    今日はなんだかとても理解ができた。


    デモ隊は、アルタ前にたどり着いた。
    「ようやく解散だ~」
    と思ったら、駅前の広場で総括が始まった。外国人がしゃべったり、どこかの代表っぽい女性がしゃべっている。

     

    全然終わらない。僕は嫌気が限界に来てしまって、少し離れたライオンズクラブのライオンの像の足元に腰掛けた。

     

    緊急事態宣言は終わったとはいえ、まだほとんどの飲食店はやっておらず、アルタの電光掲示板も消えている。
    駅に向かって歩く人達の多くは、デモの大声が耳に入っても足を止めず、様子をチラリと見るだけだった。

     

    好奇心をかきたてられるような表情の若者もいたが、ほとんどの人は冷たい表情をしていた。仲間同士で、

    「オリンピックやるのもどうかと思うけど、デモをするのもね……」

    と眉を潜めて喋っている人もいた。
    たぶん、デモの中にいたら見えない表情だ。

     

    しばらくその場で待ったが、それにしても全然終わらない。
    怒声が響いてきたので聞くと、どうやらまた国民主権党とデモ隊が小競り合いしているらしい。心底ウンザリしたので近寄らなかった。藤倉さんは、警察官に撮影を妨害されて「糞ポリ!!」
    と怒鳴って、すごい険悪なムードになったという。

     

    40代後半がやるこっちゃない。

     

    それからしばらくして、やっと解散になった後もデモ隊の一部はその場にとどまって、サンドイッチを作り、仲間同士で食べ始めていた。確かにどこの店も時短営業でやってないけど、「コロナ感染拡大するからオリンピックやめろ」って言った舌の根も乾かぬうちに会食するのは、あんまりイメージ良くないんじゃないかな~と思った。

    まあでも人生なんでも好きなことをやったら良いと思うので、デモでも反デモでも会食でもやりたかったらやっても良いと思う。
    警察に「糞ポリ!」と怒鳴っても良いだろう……いやそれは良くないか。

    筆者はトボトボと家に帰って、ビールを一本だけ飲んでとっとと寝た。悪い夢を見た。

     

    反五輪デモのノーカット版

  • 保護猫を飼う方法や条件とは?さくらねこってどんな猫?| 元祖猫商・丸山店長に聞いてみた

    保護猫を飼う方法や条件とは?さくらねこってどんな猫?| 元祖猫商・丸山店長に聞いてみた

    ご存知だろうか?日本の犬猫殺処分頭数は年間 43,000 頭(H30) と非常に多く、我が国は犬猫の殺処分が世界で最も多い国であることを。そして、猫の殺処分頭数が犬より圧倒的に上回っていることを。

     

    猫は生後半年で妊娠が可能な年齢となり、一度の出産で4〜6匹の子猫を産む。さらに年に2〜3回出産することができるので、繁殖のスピードが早い。そのため、殺処分の頭数もおのずと多くなる。

     

    しかし、なぜ罪のない犬や猫の命がこうもたやすく奪われねばならないのか。こんなにも多くの犬猫たちが殺処分されているにも関わらず、販売を目的に犬や猫の繁殖が行われているという現実がある。

     

    近年、こうした現状が問題視されるようになり、保護犬・保護猫の存在が注目を集めている。今後、犬や猫を飼いたいと考えている方には、ペットショップではなく、保護犬や保護猫のお迎えを検討してみてほしい。しかし、保護犬や保護猫をお迎えするにはどうしたらいいのかわからない。そういった方も少なくはないだろう。

    丸山晶代

    元祖猫商・丸山商店店長でアニマルホリスティックカウンセラー&猫のごはんアドバイザーの丸山晶代さん

     

    今回は、10年前より保護猫活動を行なっている丸山店長こと丸山晶代さんに保護猫を引き取るための方法や保護猫活動についてなど様々なお話を伺った。

     

    保護猫を飼うにはどうすればいい?

     

    「里親を募集しているサイトだったり、譲渡会を利用してお迎えするのが一般的です。インターネットで検索するとそういったサイトがたくさん見つかると思います。私は10年前から保護猫活動をしているのですが、ここ数年保護猫について周知が広がり、最近ではホームセンターやデパートなど、譲渡会のためにスペースを開放してくださる企業や団体も増えてきました。SNSやWEBサイトを見て、実際に猫ちゃんに会いに行って、お迎えするのが一番早いのではないでしょうか」

     

    コロナ禍の影響で譲渡会の開催自体は減少傾向にあるそうだが、オンラインでのお見合いなどが活発化しているらしい。また、保護猫を引き取る際の条件についても伺ってみる。いくつかの審査をクリアしなければ、保護猫を迎えることは難しく、そのハードルの高さが、しばし話題に上ることがある。一体どういった条件があるのだろう。

     

    保護猫を引き取るための条件とは?

     

    「里親になるための条件は、保護猫活動を行なっているその団体だったり、活動をしている方個人の価値観によって変わってきます。たとえば、一人暮らしの方にはお譲りできない、結婚されている方が良い。様々な基準を設けている場合がありますが、それぞれ基準が異なるので、条件が合う団体や個人の方を探してみると良いでしょう。

     

    条件が厳しいという情報が一人歩きしていますが、それにはそれなりの理由があります。体調が安定していない子猫だと長時間の留守番が難しい。病気があったり、怪我をしていたりすると頻繁に病院に連れていく必要がある。だから、一人暮らしの方にはお譲りできない。逆に昼間は殆ど寝ているような大人猫なら、一人暮らしの方でもお迎えできる可能性は高いと思います。条件は猫ちゃんによっても変わってきます。

     

    私の場合は、猫エイズ、白血病の血液検査やワクチン、避妊去勢手術などこれまで猫ちゃんににかかった医療費を負担していただけること。収入が安定していて、生涯猫ちゃんの面倒を見てくれること。先にお話ししたように猫ちゃんの状態によって、それぞれに条件を決めています。

     

    本当に信じられないことなのですが、引っ越し先が猫が飼えない物件だからと、捨てていってしまう。そういった方も少なくありません。保護した側としては、猫ちゃんに絶対に幸せになってほしい、辛い思いをさせたくない。そうした思いから、ハードルが上がってしまう場合もあるのでしょう」

     

    保護猫活動はボランティア?さくらねことは?

     

    ここまでお話を伺ってひとつ気になった点がある。保護した猫にかかった医療費を里親に負担してほしいとのことだが、医療費や食費など保護猫にかかる費用は、行政が負担しているわけではないのだろうか?

     

    「猫を保護するための捕獲キットを購入するところから、餌代、医療費、全て実費です。国からの援助は一切ありません。区によって、避妊去勢手術にかかる費用の補助が受けられる場合もありますが、全額ではありません。ですから、これまでに猫ちゃんにかかった医療費を負担していただかないと、次の猫ちゃんを保護することができなくなってしまいます」

     

    国からの援助もなく、保護するところから里親探しまで、全てが自己負担。このような活動は国がやって然るべきことではなかろうか?てっきり、国の援助があるもと思っていたばかりに驚きが隠せない。

     

    「国からの援助はありませんが、避妊去勢手術に関しては、どうぶつ基金さんが『さくらねこ』にするための手術無料チケットを毎年発行してくださっています」

     

    さくらねこ。初めて耳にする言葉だ。さくらねこ、そして、どうぶつ基金について伺ってみる。

     

    「外の猫ちゃんを避妊去勢せずにいると出産により、どんどん増えていきます。そして産まれた子猫は保健所に連れて行かれる。ですから、殺処分を減らすためには避妊去勢手術を徹底することが第一です。けれど、その手術をするにもお金がかかる。どうぶつ基金さんは、外の猫ちゃんを捕獲して、不妊去勢手術して元の場所へと返すという活動を行っています」

    Y.shin画 Y.shin

     

    「街を歩いていると時折り耳の先が、V字にカットされている猫ちゃんを見かけることはありませんか?これは、さくら耳といって不妊手術済みの証です。目印がないと一度手術を受けた猫ちゃんが再度捕獲され、麻酔を受けることになり兼ねません。

     

    そういったことがないように手術を行う際、麻酔の効いているうちに猫ちゃんの耳をV字にカットする。カットされた耳が桜の花びらのような形に見えることから、処置を行なった猫ちゃんたちは『さくらねこ』と呼ばれています」

     

    丸山店長は、どうぶつ基金を応援するため、さくらねこを広めるための活動を幅広く行なっている。

     

    猫の幸せにつながるさくらねこグッズ

    丸山商店

    「私は20年ほど前から丸山商店という猫グッズのお店を運営しているのですが、10年ほど前から、商品の売り上げの一部をどうぶつ基金さんへ寄付しています。寄付を始めた当初は特定の寄付商品の売り上げの1割を寄付していたのですが、現在はすべての商品の売り上げの1割を寄付しています。

    寄付商品の第一弾は肉球フィニャンシェという商品でした。お菓子を寄付商品に選んだのは単純な理由からです。美味しいものを食べると幸せな気分になれますよね。美味しいものを食べてハッピーになって、これを買うことで猫ちゃんのために良いことができたと、購入した方がさらにハッピーな気持ちになる。だから、購入してくださった方も猫ちゃんも幸せになれるお菓子を選びました。売り上げは1割減りますが、猫ちゃんが幸せなら私もハッピーです。

     

    丸山商店では、さくらねこ関連のグッズやスイーツを多く取り扱っているのですが、これは、猫好きさんの間でもさくらねこの存在があまり認知されていないことを知ったからです。私は、当時すあまちゃんという猫ちゃんを飼っていたのですが、この子はさくらねこです。すあまちゃんの写真をツイッターやインスタにアップすると『この猫ちゃん耳どうしたの?』とのコメントが多く。猫好きさんでも、さくらねこを知らない人がたくさんいるのだと。さくらねこモチーフのグッズをつくって、皆さんにさくらねこのことを知ってもらおうと考えました」

    さくらねこクッキー

    さくらねこクッキー1枚180円(税込)

     

    「美味しいもので負担にならないようなものなら、ギフトにもぴったりだと思い、さくらねこグッズの第一弾はさくらねこクッキーにしました」

     

    さくらねこクッキーは1枚から購入することができ、カード付きでラッピングもされている。ちょっとしたギフトに最適で、1枚からでも1割が猫のために寄付される。

     

    「私が健康オタクということもあるのですが、クッキーを始め、食品類は全て無添加でクッキーのイラストは食用インクでプリントしています。原材料も小麦粉と卵と砂糖のみと至ってシンプルで、ショートニングやマーガリンは使わずバターをたっぷり使っています」

     

    味にも見た目にもこだわり抜いたことで、好評を得たさくらねこクッキーは、今や丸山商店の看板商品だ。この商品の存在でさくらねこを知ったという方も多いのだそう。

     

    現在、丸山商店ではクッキーの他にも珈琲や紅茶、おせんべいなど様々なさくらねこグッズを販売している。

    クッキー
    「ネットショップで購入していただいた商品を発送する際は、どうぶつ基金さんが発行している冊子を同封しています。さくらねこのことを知らなくても、商品を猫好きの人からプレゼントされて、そこに冊子が同封されていたら、さくらねこのことも知っていただける。街で見かける耳が切れている猫ちゃんは、避妊去勢手術をしているのだと。草の根じゃないけれど、一人でも多くの人に知ってもらえれば……」

     

    2011年より10年以上もの間、地道な活動を続ける丸山店長。その甲斐もあってだろう、10年前より猫の殺処分は徐々に減少している。それでも年間に43,000 頭の犬猫が殺処分されているのが現状だ。

     

    こうした現状を打破すべく、丸山店長は、猫を救うための新たな活動を始めた。

     

    猫動画を見るだけで猫のしあわせにつながります♪

     

    丸山店長が始めたのは猫動画を配信するYouTubeチャンネルだ。動画チャンネルのタイトル通り、収益は全て猫のために寄付される。

     

    また、動画で紹介されている工事現場で瓦礫の下敷きになってしまった猫、ぴいこちゃんを支援するグッズの販売も行っている。支援グッズの第一弾は「ぴいこちゃんクッキー」。売り上げの1割がぴいこちゃんへの支援金として寄付される。手術は成功し一命は取り留めたものの、ぴいこちゃんは目も見えず、匂いもわからず、音を聞くこともできない。そのため、定期的な通院や検査が必要で、寄付金はそんなぴいこちゃんを支えるために使われる。

     

    ぴいこちゃんクッキー

    ぴいこちゃんクッキー

     

    東日本大震災で被災した猫を救うために

     

    どうぶつ基金への寄付や保護猫活動を始めたきっかけを尋ねてみる。

     

    「一番大きいきっかけは2011年の東日本大震災です」びっくりして窓から逃げてしまったり、家の中にはいるけれど飼い主が避難所に行って取り残されてしまったり。そうした猫や犬などの存在を知り、心を痛めた丸山店長は、自分でできることで何かをしたいと考える。

     

    「禁止地域のギリギリまで行って猫ちゃんを保護して飼い主を探したり、ご飯をあげたりと現地でそういった活動を行っている人の存在も知りました。私も現地に行って猫ちゃんの助けになりたい気持ちはありました。けれど、私の家にも猫ちゃんがたくさんいるので、この子たちを置いて現地に行くことはできません。それで、私にも何かできないかと考えたときに、やっぱり一番はお金だと思いました。

     

    でも、私一人が寄付をしたところでたかが知れています。そこで、丸山商店のメルマガで被災した猫ちゃんのために寄付をしたいと考えていることを発信しました。すると、私と同じように猫ちゃんのために何かしたいとの声が多く上がりました」丸山店長は、声を上げてくれた猫好きの皆さんの寄付金をまとめて現地に送り届ける。それから10年、丸山店長は売り上げの一部をどうぶつ基金に寄付し続けている。

     

    今後の活動について

     

    「今現在考えているのは、保護した猫ちゃんたちが快適に暮らせるシェルターを作ることです。一匹でも多くの猫ちゃんを保護して里親さんを見つけてあげたい。でも、一番はそんなシェルターが必要のない世界になることを目指したいです。

     

    一匹でも多くの猫ちゃんを幸せにするために、活動をもっと広げていきたい。けれど、個人では限界があります。私は東京都の板橋区在住なのですが、ご近所の方で活動を応援してくれる方、サポートしてくださる方を探しています」

     

    丸山店長の活動を応援したい、活動に興味がある。そんな猫好きの方がいらしたら、ぜひ、保護猫&猫雑貨「ねこまる」のDMより丸山店長に連絡してみてほしい。

     

    もうひとつの顔はちくわぶ料理研究家!?

    丸山店長,元祖猫商

    実は丸山店長、ちくわぶ愛満載のちくわぶ本「ちくわぶの世界」著者であり、日本で唯一のちくわぶ料理研究家として知られる人物でもある。「マツコの知らない世界」や「ぶらり途中下車の旅」などTV番組にも出演している。ちくわぶ料理研究家としての活動も10年前より行っているのだそう。猫についての著書も出版を予定している。

     

    幼少期から様々な動物を飼っており、子どもの頃は『ムツゴロウ王国』で働くのが夢だった。そんな、動物大好きな丸山店長。「猫ちゃんが好きという方はたくさんいらっしゃいます。けれど、さくらねこであったり、日本の犬猫の殺処分の現状だったり、こういったことは、あまり広くは知られていません。この事実を多くの人に知ってほしい。一人ひとりがこの事実を受け止め、意識すれば今の現状を変えていけるのではないでしょうか」

     

    人間の命も猫の命も同じ一つの命。猫だから殺していいなんてことは、本来ならば絶対にあってはならない。出産しなければ、猫が増えることはなく、殺処分する必要もなくなる。よって、飼い主のいない地域猫に対し、不妊去勢手術を行うことが、殺処分ゼロ実現への近道となる。こうした事実を広めるべく、10年という歳月をかけ、今尚、幅広く活動する丸山店長。アニスピホールディングスを母体とするあいである広場としても、この問題にはしっかりと向き合っていきたい。

     

  • 川崎市が、空き缶集めを厳罰化? ホームレスが田舎ではなく都市部に住む理由とは?

    川崎市が、空き缶集めを厳罰化? ホームレスが田舎ではなく都市部に住む理由とは?

    川崎市では、アルミ缶の持ち去りを防ぐ狙いで、条例改正案を2021年9月に市議会に提案する方針を打ち出している。さらに違反者には罰則が科せる条項をつけた。

    普通に生活している人で、路上でアルミ缶を拾っている人はほとんどいないだろう。
    逆にホームレス生活をする人たちの大部分は空き缶を集めて、それを金属回収業を営む会社に売って現金化している。
    つまりこの条例は、ほぼ100%ホームレスに向けてのものだ。
    アルミ缶収集を禁じた場合、ホームレスの現金収入はかなり厳しいことになるだろう。

    先日、ホームレスに対してあまり良く思っていない人と話すことがあった。

    「別に外で暮らしたいなら暮らしたらいいよ。でもどっかの山の中で住めよな。渋谷とか上野とかタダで住んでるんじゃないよ」

    と苦々しい口調で語った。
    決して数は多くないが、そのような生活をしている人もいる。
    13歳の少年時代からひとり山中の洞窟で生活した男性の半生を描いた『洞窟オジさん』(加村一馬/小学館)という単行本がある。

    家出をした少年が、山中で蛇やイノシシを捕まえて食べるシーンがリアルに描かれていた。
    だが、野宿生活をしながらそのような形で食料を手に入れるのは非常に難しい。多くのホームレスは食べ物を買うか拾うかして手に入れている。買う場合はまず現金を入手しなければならない。現金を手に入れるため、アルミ製の空き缶や紙類などの廃品を集めて換金する場合が多い。というより、他にあまり方法がない。

    大都市ならどの通りにも自動販売機が数メートルごとに設置されている。マンションや巨大な団地から出る廃品も多い。
    逆に人口の少ない地域に行けば行くほど、廃品を集めるのは難しくなる。
    また、廃品を買い取ってくれる業者(金属回収業者、紙類回収業者など)も基本的に都市部でしか回収をしていない。ホームレスは自分の足で歩くのと自転車が移動手段なので、大都市部でないと廃品回収業は成り立たないのだ。

    食べ物を拾う場合も、やはり都市部の方が有利だ。チェーン店やスーパーなどから廃棄される食品を定期的に手に入れることができれば、とりあえず飢えずにすむ。現在は各お店ごとの規則が厳格化して、廃棄食品を手に入れるのも難しくなってきている。

    つまりホームレスの生活は、都市に依存しているのだ。

     

    だから「どっかの山の中で住めよな」

    というのは、実際にはかなり難しいのだ。
    都市部でホームレスをやめて生きていく場合、選択肢としては、

    「生活保護を受給してアパートで生活する」

    しかほぼ残らない。

     

    2004年から東京都では『ホームレス地域生活移行支援事業』がはじまった。公園に住むホームレスの住居を確保して、就労を支援し、公園は本来の機能を取り戻すのが目的だ。
    当時アパートの空き部屋に2年間、格安の家賃で住むことができた。一旦住所ができれば、仕事も探しやすくなるし、生活保護も受けやすくなる。その頃から、生活保護の申請を受けやすくなりアパートへ移行するホームレスが増えた。アパートへ移行してしまったら、もはやホームレスではない。

    先のホームレスに対してあまり良く思っていない人は、元ホームレスが生活保護を受給することも決してよく思っていない。実際、

    「俺たちの税金で生活しやがって」

    と言って憤慨していたし、そうやって怒る人は何十人も見てきた。

     

    ホームレスが生活保護により野宿生活を脱しやすくなったのと並行して、徐々にホームレスは都市部から排斥されていった。
    昔は、上野公園や渋谷の宮下公園や新宿駅西口など、都市部のど真ん中に小屋を建てたり、テントを張って生活している姿をよく目にしたが、最近では見られなくなった。
    「生活保護をもらわず、野宿生活を続けて自活していきたい」
    と考える人たちにとって、多摩川などの河川敷は最後に残された場所になった。大都会ではないが、周りには住宅街やマンションがあり空き缶を集めることができる。。

     

    彼らは堤防の上や河川敷の葦の中に小屋を建てたり、畑を作ったりして生活している。河川敷は管轄が国土交通省になるためか、駅や公園に比べると、比較的管理がゆるい。もちろん苦情が出ると警察が出動するが、住宅街とは離れた場所にあるため苦情が出づらい。
    それでも、たびたび役所の人に『不法耕作禁止』と書かれた看板を立てられたり、立ち退くよう勧告されることはあるが、実際にはまず排除されることはない。

    僕は多摩川河川敷の下流、六郷土手のあたりを取材することが多かった。昔から多くのホームレスが生活していたからだ。
    2019年の超大型台風で水没し、住んでいる人は減ったが、それでもまだ生活している人はいた。

    多摩川は、東京都大田区と、神奈川県川崎市の間を流れている。
    つまり今回の『アルミ缶の持ち去りを防ぐ条例』は、多摩川河川敷に住むホームレスの生活に直撃するのだ。
    川崎がダメなら大田区側に移り住めば良い、というほど単純なものではないだろう。そもそも金属の買い取りをしている業者に対して圧力がかかってしまったら、どうしようもない。そしていつの日か、全国で『アルミ缶の持ち去り』が厳罰化されていく可能性は十分あるある。

     

    ホームレスに対してあまり良く思っていない人は

    「今までが甘すぎたんだ。これで良かった」

    などと言って笑顔で満足するかもしれない。
    たしかに、ゴミを持ち去るのは犯罪かもしれない。年間合わせれば、それなりの損害が出ているかもしれない。ただ、
    「それぐらい良いじゃないか」
    って話である。

    「生活保護をもらわず、野宿生活をしたい」

    と思っている人は、素晴らしい行いをしているわけでもないが、別に大悪人というわけではない。客観的に見たら、どう考えても弱い者いじめをしているようにしか映らないだろう。

     

    そして、ホームレスに対して辛辣な意見を言う人の話を聞いていると、

    「自分だっていつかホームレスになるかもしれない」

    という発想は全くないんだな、と少し驚く。

     

    現在仕事が上手くいっていたり、屋根がある場所で寝られているのは、概ね運が良かったからだ。努力による部分なんて、本当に本当に小さなものだ。

    逆に運が逃げてしまえば、全てを失って、路上生活をしなければならなくなる可能性は十分ある。僕は自分がホームレスになる可能性は十分にあると思っている。

     

    だから、良い人ぶって上から目線で
    「ホームレスが生きていくために、空き缶を拾うのは良しってことにしてあげようよ」
    と言っているのではなく

    「ホームレスになった俺が生活していくために、空き缶拾いを良しってことにしておいてくれ」

    と言っているのだ。

     

  • 「その沼入るべからず —―CASE2#母乳神話」母乳にこだわりすぎてネットで他人の母乳を購入?!

    「その沼入るべからず —―CASE2#母乳神話」母乳にこだわりすぎてネットで他人の母乳を購入?!

    出産、育児、健康法。女性の生活まわりにあるさまざまな情報の中には、ハマるとヤバいものがたくさん⁉ 山田ノジルが独自の視点で突っ込みつつ、沼の注意点をお届けしていきます。

    CASE1#胎内記憶はこちらから

     

    Case2 母乳神話

    「母乳こそが愛情!」「母乳をあげている時間が親子の絆も育むんだ~って思ったら、すごく幸せ」

    出産のタイミングが重なった同級生とママ友になり、子連れでお茶をしているとこんなトークが始まった。「産後ハイ!?」と一瞬驚いたけど、そういえばこの子、オーガニックな暮らしとか、月のリズムを意識したヨガとか好きだった。なるほど、こんな感じの親になるのか……。

     

    自分も子供に母乳を与えているけど、分泌量が足りていない気がするし復職の予定もあり、さらに体調によっては授乳を夫に変わって欲しいこともあり、あえての混合にしている。ところがそれを話すと「ほ乳類なんだから、頑張れば絶対に出る! 母乳を諦めないで!」「粉ミルク育ちはブクブク太る」「母乳はアレルギーも予防できるし、IQも高くなる」とたたみかけられてしまった。さらに質のいい母乳を出すには薄味の和食、乳腺炎になりかけたらキャベツやジャガイモのすりおろしで冷やすといいなどのアドバイスまで展開され、正直お腹いっぱいだわ。

     

    もちろん、母乳が子供にとって最適な栄養であることには異論ない。でもママ友が熱心に語る母乳の素晴らしさには「粉ミルクは親失格」というメッセージが含まれているように思え、子供に対し後ろめたい気持を感じてしまい……。

     

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    これは出産後の親たちが、高確率で遭遇する「母乳神話」です。根拠のない話もごちゃまぜになった母乳の効果効能が巷に広まっているのです。それらはCase2のようにママ友経由で伝わることもあれば、助産院を始めとする「自然なお産」周りでもよく広められています。無料で読めるネット記事などにも度々姿を現すため、遭遇率の高さは相当なものだと言えるでしょう。

     

    根拠が怪しいお説とは、次のようなものです。

    「母乳育ちのほうがIQが高い1」「母乳のほうが情緒が安定する2」「母乳のほうがアレルギーになりにくい」「母乳のほうが絆が深まる」「母乳っ子は人間が大好きになる」「母乳育ちの赤ちゃんは、目の輝きが違う」

    1、2はミルクよりも母乳のほうが優位だという研究結果はあるが、長期的な効果は確認できていない。

     

    「目の輝き」とか、一体どうやって測定&評価するんでしょうね。こうした意味不明な言説も含め、母乳がまるで魔法の液体かのように謳われているのです。

     

    母乳育児が親子にとって、大きなメリットをもたらすことは間違いありません。赤ちゃんの体が消化吸収するのに最適な栄養であること。母乳を与えることで免疫機能が未熟な赤ちゃんが感染症にかかる確率を低くしたり、乳幼児突然死症候群(SIDS)を予防する可能性があること。母親側は、子宮の回復や体重減少がスムーズになる。これらは、研究により根拠がしっかり確認されています(とは言え生まれつきの体質や個人差も大きいようで、母乳かミルクかで簡単に測れる問題でもないようですが)。

     

    でも、入念&開発されている現代の粉ミルクだって、母乳と比べてそん色ない栄養です。重要な抗体が含まれる初乳にまでは追いつかないものの、粉ミルクは母乳に極力近い成分になるように作られています。また、母親以外の人でも赤ちゃんに食事を与えられることができるのも、母親が体を休められる嬉しいポイントです。乳房のコンディションや母乳の分泌量に振り回されないことが、健康上プラスとなる人もいるでしょう。そもそも粉ミルクが問題のある栄養だったとしたら、粉ミルク消費量が多かった第二次ベビーブーム世代(現代40代後半)は無事育つことができず、あの過酷な受験&就職競争率は存在しなかったはずなのでは? 

     

    粉ミルクと母乳。どちらにもメリットとデメリットがあり、それはライフスタイルにあわせて選べばいいだけのこと。なのに「母乳でなければならぬ」と母親たちを追い詰め、結果的に粉ミルクのデメリットを強調する「母乳神話」はどこから生まれてくるのでしょう。私がこれまで取材してきた中から考えるに、ざっくり3つの発生源があります。

     

    まずひとつは「自然こそが安全で正しい」「人工に作られたものは危険で怖い」と考えです。近代栄養学や工業的なものに対して反発する思想から、自然に傾倒していく、いわゆる「自然派」です(育児界では自然派ママと呼ばれる)。自然の営みから外れると(人工的に作られた粉ミルクを与えること)、いずれツケが来る。子供の成長に不具合が生じる。粉ミルクの原料である乳製品は、本来ウシの赤ちゃんが飲むもの。ヒトが飲むなんて不自然! そんな言説に触れ、不安を植えつけられた人も多いでしょう。さらに自然派における母乳信仰は政治的な思想との結びつきもあり、「粉ミルクは消費社会から支配されること」「企業にコントロールされてしまう」「母乳育児は権力と資本からの解放!」とまで飛躍するケースも見られます。実際、昭和の時代に国や企業によって行き過ぎた粉ミルク布教があったことは事実ですので、当時それに危機感を覚え、母乳のメリットを強調した啓蒙活動のエッセンスが、今に残っているという要因もありそうです。

     

    お次は「手間暇かけることこそが愛情」という考えかたです。これには「一切楽をせず、心血注いで育、立派な子供を育てるべし」「母親は一瞬たりとも自分の楽しむ時間を持つべきではない」といった、明治時代の良妻賢母教育の名残を感じます。こうした考えが根底にあると、現代の便利な育児グッズは親を堕落させるものに思えてくるよう。軌道に乗りさえすれば、調乳や器具の手入れが必要な粉ミルクより、母乳のほうが楽な面もあるのですが、なぜだか粉ミルクは直に身を削らないからか「楽している」と避難されがちです(体力・手間・時間を削ってますけどねえ)。2019年に液体ミルクの発売が始まった時も、「液体ミルクで楽していると本当の親になれない」だの「おっぱいは何のためについているのか」といったネガティブな意見が男性から発信され、Twitterではちょっとした炎上騒ぎとなりました。そもそも、母乳の代替となるミルクが必要なのは労働や体の問題であって、手抜きをするためではありません(個人的には手抜きでもいいと思いますけど)。母乳に限らず「栄養」というものに、愛や絆といった意味を持たると、だいたいおかしなことになるものです(冷凍食品論争とかな!)。

     

    3つめは、母乳を与えることで「女として・母として優れている」という優越感を覚えること。努力によって子供に最良の栄養を与えることができたという達成感や喜びが、母乳神話のブースターになっているケースも多々見られます。生存本能で狂おしく子供から求められながら、小さくはかない命をつないでいる万能感と自己肯定感。それらが暴走し、粉ミルク育児を見下し、母乳の効果効能を現実以上に信じてしまう。産んだ直後から「お母さん」を押し付けられ、自分が自分でなくなっていくような感覚(アイデンティティ・クライシス)に陥る人もいれば、逆に母乳を与えている自分がアイデンティティになる人もいるのです。出産の現場をリアルに描いた漫画『コウノドリ』(鈴ノ木ユウ著・講談社)でも、登場人物が友人から「帝王切開だと母乳も母性も出ない」と言われるエピソードがありました。こういったいざこざは、自分の劣等感を補うために相手をディスり優越感にひたるマウンティングほかなりません。こうなると赤ちゃんのためだった母乳が、自己肯定感を高める魔法の道具になってしまい、目もあてられません。

     

    母乳神話にハマってしまった結果、「何が何でも母乳でなければならぬ」と追い詰められてしまう母親が後を絶ちません。2015年には子供に母乳を与えたいと思うあまり、ネットで「新鮮な母乳」を買ったところ、ニセ母乳だったという事件がありました。某メディアが業者から母乳を購入して分析してみると、なんと正体は雑菌まみれの水で薄めた粉ミルクだったのです。他にも「母乳が出るようになるハーブティ」など、根拠の薄い商品はいくらでもあります。これらは母乳でなければ子供に不利益が生じるのではと不安になる親心に付け込んだ「悩める母ビジネス」。母乳神話が悪質なビジネスを潤す養分となっているとは、酷い話です。

     

    子供が成長すれば授乳の悩みは自然と消えていきますが、沼は基本いろいろなジャンルで連結しています。母乳神話にハマっていれば、そのまま別のオムツ沼や無添加沼へとスライドしていくでしょう。育児・出産の世界は科学的根拠が全てではない部分も否めないため、いろいろな思想やビジネスが入りこんで来る魔界です。広く浅く見分をひろめ、沼の深みへハマってしまわぬようご注意を。

     

  • 生活保護はホームレスを救うのか? それともダメにするのか? 河川敷に住む野宿生活当事者の意見は?

    生活保護はホームレスを救うのか? それともダメにするのか? 河川敷に住む野宿生活当事者の意見は?

    雑誌やテレビなどのメディアから

    「ホームレスの数は増えているのですか? 減っているのですか?」

    とよく聞かれる。最近では

    「コロナ禍でホームレスの数は増えていますか?」

    とも聞かれる。

    「長い目で見てホームレスの数は激減しています。コロナ禍でホームレスになってしまう人もいるかもしれませんが、野宿生活をせずにすむ場合が多いと思います。

    コロナ禍が原因でホームレスになったという人に会ったことはありますが、全体数が増えるほどではないと思います」

    と答える。

     

    そうすると、たいていは

    「それは日本の景気が良くなったからですか?」

    とさらに質問をされる。残念ながら、景気は関係ない。ホームレスが減少した理由は、野宿生活をしていながらも生活保護を受給できるようになり、アパートを賃貸できるようになったからだ。他にも理由はあるが、圧倒的に

    「生活保護を取りやすくなった」

    ことが大きい。

    生活保護の受給や、生活保護の制度自体に対して、怒りや嫌悪感を覚えている人は少なくない。

     

    ホームレスが生活保護を受ける記事を書くと

    「生活保護は税金だ!! ホームレスなどのために使うな!!」

    というような意見をぶつけられることは少なくない。
    個人的には、生活保護でホームレス生活から脱出できるのは非常に良いことだと思う。また税金を生活保護に使うのは、非常にまっとうな使い道だと思う。むしろもっとジャンジャン使ったって良いと思う。

     

    だがホームレス当事者にも、ホームレスが生活保護を受給することには反対な人も多い。というかそもそも生活保護を受給するのが嫌だから、結果的に野宿生活を続けている人も少なくない。
    大阪の淀川の河川敷で暮らしていたお爺さんもそういう意見の一人だった。

    梅田駅から二駅の、十三駅で電車を降りて、淀川まで歩く。淀川にはとても広い河川敷が広がっているが人通りはほとんどない。運動場もあるのだが、利用している人は見当たらなかった。
    川に沿っててくてくと歩いていると、かなり大きな小屋があらわれた。どこからどこまでが家屋なのかよく分からないが、敷地面積は普通の一軒家くらいはあるだろう。小屋の近くには、骨組みだけの東屋のような建屋も建っている。

     

    川の方を見ると、人がザルで泥をすくっているのが見えた。


    何がとれるんですか? と聞くと、

    「シジミ!!」

    と張りの良い声がかえってきた。大柄でワイルドな風貌で、かなりかっこいいお爺さんだった。

    「普段はこんな寒い日はシジミはとらんのだけどな。今日は欲しいっていう人が来たから、とってあげたのよ。よく遊びに来る人。いつも、ビールとか持ってきてくれるからな」

    というと東屋の中に入っていった。
    遠慮せずにあたって行き、と言われ入ると、心地よい暖かかった。
    床にはコンクリートブロックでかまどが作られていて、炭が燃えていた。

    「ここはよう色々なお客さんが来るのよ。冬は火をあたる場所にしてるの。この炭は、バーベキュー会場で拾ってきたヤツなんや。みんなほかしていくやろ。それを洗って、干して。こまいのばっかりやけど、それがまたいいんよ。あんまりハネんし、長持ちするしな。でかいのはブワって一気に燃えてしまうやろ」

    そう言いながら、鉄棒で炭をかき回す。
    外から、よたよたっとまん丸い犬が入ってきて、おそらくいつもいるのであろう場所に座った。

    「今、淀川のシジミは話題やからな。昔は『淀川のシジミなんか食えるか!!』って言ったもんやけど、今はいい料亭で出したりするよ。だけど、シジミはとった後にちゃんと泥を吐かせないといかん。あと、貝毒って言うてとれん時期があるんよ」

    貝毒とは、有毒プランクトンを貝が食べて、毒化してしまうことを言う。4~5月ぐらいの季節に発生することが多い。

    「その間は誰も取らんだろ? だからぐっと大きく育つんや。シジミはな、小分けにして冷凍庫に入れるのがいいのよ。凍らせてしまうのよ。すると仮死状態になって、いつでも美味しく食べられるんよ」

    と火をかき混ぜながら語る。

     

    ふと横を見ると、土の入ったプラケースが並んでいる。どうやら畑のようだ。

    「ちょっと前までは菜種を植えてた。菜の花も食えるからな。今はゴーヤとか色々と。俺じゃなくてお客さんがやりたがるのよ。マンションのベランダのプランターじゃ植物育ててもつまらんやろ。俺は大地主やからな。国交省には睨まれとるけど」

    と言って笑った。

     

    国土交通省の職員はたびたび訪れて、話をしていくそうだ。

    「出て行けとは言えんわけよ。基本的人権があるからな。『撤去してください』って書いていったりするな。

    『大阪は福祉の街だから、福祉をもらってください』

    って言われるんやけどな、福祉もらうヤツは、みんな早う死んでしまうわ」
    こういう文脈で出てくる福祉はつまり生活保護の意味である。

     

    生活保護をもらって死んでしまうというのは、ちょっと解せない。

    「福祉もらうヤツは、酒のんでギャンブルばっかりしよるわ。西成行ったことあるか? 西成は炊き出しやっとんだけどな。それに並ぶ半分以上が生活保護もらっとるヤツらや。ようするにギャンブルで全部お金使ってしもうてやな、しかたないから炊き出しに並ぶんや。なんのための生活保護か、なんのための炊き出しかわからんやん。生活保護もらって動かなくなってしまったヤツはそういう風になってしまうんよ」

    と語った。

     

    かなり偏った見方ではあるものの、全くのでたらめではない。実際にそういう人たちをたくさん見てきたのだろう。
    お爺さんは、ぬくぬくと眠る太った犬の方を見る。視線を感じた犬はお爺さんを見返した。

    「お前も食ってばっかりだと死ぬぞ。まあ、お前は他の人から、食べ物もらうから手間かからないけどな。いつもだいたい2~3人が来てくれて餌をくれるんよ」

    お爺さんは生活保護はもらわずに、“お客さん”にシジミを売ったり何なりして稼いでいるそうだ。

    実際に、お爺さんは今の生活が、生活保護をもらってアパートで生活するよりも良いと思っているのだからそれで構わないのではあるだろう。

     

    ただ、野宿生活は都市部のアパート暮らしよりも危険が多い。実際、台風が訪れるたびに危険な状態になる。

    「台風の時には座って頭の高さまで水が来たよ。畑は全部ダメになったな。そこまでひどいのは10年に一回だけだけどな。ただここのとこよくあるな。温暖化のせいなんかな? みんな危ない危ない言うけど、俺に言わせれば梅田の地下街のほうが危ないだろう」

    と笑いながら言った。

     

    危機に関してはお爺さんの勘違いで、絶対に梅田の地下街の方が安全だ。河川敷はそもそも水に浸かるのが前提の場所だから、大雨が降ったら絶対に被害に合う。
    ただ、だから「河川敷から出ていけ」というのも、安直な答えだとも思う。
    幸せの形はそれぞれにあるから、杓子定規にはできないのが難しいところだ。

  • 聞こえているのに聞き取れない?|APD(聴覚情報処理障害)の YouTuber笑歩さんに聞いてみた

    聞こえているのに聞き取れない?|APD(聴覚情報処理障害)の YouTuber笑歩さんに聞いてみた

    APD,イラスト

    画 こ〜ちゃん

     

    たとえば、複数人で会話をしていると誰が喋っているのか、どの話を聞けばいいのかわからなくなってしまう。静かな場所では聞き取れるのにBGMがかかっていたり、騒音がある場所だと上手く話を聞き取ることができない。こんな経験はなかろうか?

     

    APD(聴覚情報処理障害)は、聴力は通常であっても日常の様々なシーンで、聞き取りにくさが生じる障害だ。一言でいうと、音として声は聞こえているのに、言葉として理解するのが難しい。

    笑歩APDチャンネル,笑歩

    モデルでYouTuberの笑歩(F)さんは、APDの当事者であり、まだ広く知られるところではないこの障害について、多方面から発信している。

     

    某日、東京都江戸川区篠崎にあるサードプレイスカフェ「ごちゃまぜcafeメム」にて、笑歩さんが運営するYouTubeチャンネル、「笑歩APDチャンネル」の撮影が行われるとの情報をキャッチ!撮影の様子を見学させていただくことに。撮影後には笑歩さんと、この日のゲストのなみしさんにお話を伺った。

     

    APDに興味のある方、特にAPDの症状に心当たりのある方、近しい人がAPDかもしれないと思い至った方にはぜひご一読いただきたい。

    APD,なみしさん

    ゲストのなみしさんは手話を用いて音楽を奏でるアーティスト、「サインパフォーマー」だ。

     

    音を聴くだけではなく、目で聴く・目で観る音の世界を、聴こえる人達にもっと届けたい想いを発信。東京近郊を中心に全国各地で手話を使ったパフォーマンスを披露する他、YouTubeでの動画配信も行っている。

     

    ちなみに、この日の撮影は緊急事態宣言以前に行ったものでYouTube・インタビューでの撮影時以外はマスクを着用、手洗いうがい消毒を済ませたうえで行われた。

     

    気になる撮影の内容は「コンサータ」について。既にご存知の方も多いだろうが、コンサータはADHDの治療薬である。APDの情報を発信するチャンネルで、なぜコンサータを取りあげるのか。疑問に思われた方も少なくはないかもしれない。実はAPDと発達障害の併存率は53%と高く、このことは、近年注目されるところとなっている。

     

    なみしさんもAPDの診断が下ったことがきっかけとなり、発達障害であることが判明したひとりだ。また、笑歩さんもASDの当事者であり、「笑歩APDチャンネル」ではAPDを中心に発達障害全般の情報も発信している。

    笑歩(F)さん,みなしさん

    撮影終了後、自身がAPDであることを気づいたきっかけ、診断に至るまで、ご自身のことについてなど伺った。

     

    笑歩「学生の頃は教科書を見て先生の話を聞いてテストを受ける。そういったレーンがあるじゃないですか。でも社会に出るとそういうレーンがなくて、フリートークが多い。私の場合はそこで気づきました。学生時代も友人から『話、聞いてないよね?』と指摘されることが度々あって。違和感は感じていましたが、それが確信に変わったのは、社会に出て働くようになってからです」

     

    なみし「私が子どもの頃は、発達障害はあまり知られていませんでした。APDは今でも殆ど知られていない障害です。自分の中に発達障害やAPDという概念がなかったので、自分が努力していない、自分が聞こうとしていないから、聞けないのだと思っていました。周りの人もそう感じていたと思います」   

     

    社会に出てから割りに早い段階で、聞き取り困難に気づいた笑歩さん。一方、なみしさんが聞き取り困難に気づいたのは比較的最近のことだ。

     

    なみし「本気で自分がバカだから、人の話が理解できないのだと思っていました。仕事柄、支障が出る場面が少なかったのも関係しているかもしれません」

     

    なみしさんは現在、サインパフォーマーとして活動する傍ら、ライブハウスの運営に携わっている。さらには、男性ダンスボーカルユニットのマネージャーも務めるなど多忙を極める。

     

    なみし「おかしいなと感じたのは、初めて事務職の仕事を経験をした時です。スピード感が求められる職場で。雑音が多い環境でもありました」

     

    ざわざわと雑音のある中で、スピーディーに進められていく会話についていくことができず、何度も聞き返してしまう。大層気まずい思いをしたそうだ。

     

    笑歩さんも、なみしさんも職場で支障が出たことにより、自身の聞き取り困難を自覚する。

     

    笑歩さんは耳鼻科で検査を受けるも聴覚には異常がなく、明確な診断がつくことはなかった。しかし違和感が拭えず、インターネットで検索してみたところAPDにいきつく。そして、APDの見識のある病院へ。なみしさんもインターネットでAPDの情報を得たうえで病院を受診した。

     

    その後、笑歩さんはAPDであること以外にも、当時の仕事を自分には合わないと感じYouTuberに転身。なみしさんも事務職は退職。当時から携わっていたライブハウスの運営とアーティスト・マネージャー業に力を注ぐことに。

     

    笑歩「福祉施設で働いていたのですが、早番・日勤とバラつきのある勤務形態が私には合いませんでした。ASDの特性的なものもあるのかもしれません。生活のリズムが乱れるのがキツくて、夫に当たることが増えました。これはダメだなと思い退職することを決めました」

     

    退職後、すぐにYouTubeでの発信を始めたという笑歩さんに、なぜ、YouTuberという道を選んだのか尋ねてみる。

     

    笑歩「APDはまだまだ認知度の低い障害です。私と同じようにこの障害で困りごとを抱えている人が多くいるかもしれない。ならば、そうした人たちに届くように情報を発信していきたいと思いました」

     

    元々モデルとして映像の世界にいたこともあり、YouTubeを主な発信源にすることに。

     

    笑歩「リアルタイムでドラマを見ていると、聞き取れなくても話は進んでしまいます。でも、YouTubeなら話す速度を変えたり、聞き逃したら戻すこともできる。YouTubeはAPDと相性の良いコンテンツだと思います」

    笑歩さん、みなしさん

    サインパフォーマーということもあってか、なみしさんはとにかく身振り手振りが大きい。
    やはり聞こえづらいため、手話を覚えたのだろうか?

    なみし「子どもの頃は、自分に聞き取り困難があるとは気づいていなかったので。聞こえづらいから手話を覚えたというわけではありません。でも、APDであることが判明してから知り合った方には『APDだから手話を勉強しの?』と聞かれることは多いですね。

    手話を学び始めたのは9歳の頃です。うちは父がミュージシャンというのもあって。興味を持ったことは、なんでも経験させてもらえる恵まれた環境でした。週6で習い事をして、それこそ、ピアノとか水泳とか習い事の定番は全て網羅したと思います。

    手話を始めたきっかけは、聞こえない人と喋りたいというのもありましたが、『ひとつは誰もやっていないことをやってみたら?』と両親に言われて。それなら手話を覚えたいと思い、本やTVを見て独学で勉強しました」

    APDマーク

    誰でも自由に利用することができる聴覚情報処理障害(APD)マーク

    お二人に共通するのは、APDという症状を知らなかったため、症状に気づけなかったこと。症状について自力で調べて診断に至ったこと。APDは非常に認知度が低く、聴覚検査でも異常が出ないため、見過ごされることが少なくはないそうだ。しかも、未だ治療法が確立されておらず、障害が判明しても改善へと繋がる治療が受けられるわけでもない。

     

    しかし、自分で症状を把握し対処法を知っていると知っていないのでは、暮らしやすさも格段に変わってくる。笑歩さんの動画では、補聴器やノイズキャンセルといったアイテムのレビューも公開している。

     

    終わりにAPDの方と接するとき、どのような配慮があれば望ましいか聞いてみた。

     

    笑歩「ゆっくり喋ってほしいです。それから話に目的がないと理解できないので、先に目的を言ってくれるとわかりやすいです。わかりやすく簡素に。私の場合、ASDの特性的にも結論ありきで話していただけるとありがたいですね」

     

    なみし「APDの聞き取りづらさは、ワーキングメモリの働きとも関係しているのではないかと考えられています。一度にいくつものことを記憶しておくことが難しい。ですから、仕事の指示や重要なことは口頭での説明だけでなく、視覚で確認できるモノを残していただけると助かります」

     

    聞こえているのに聞き取れない。声を言葉として理解できない。日本のAPD人口は極めて低い。しかし、APD自体の認知度が低いことにより、診断に繋がりにくい側面があるのだろう。

     

    聞き取り困難に悩まされている方、APDの症状に覚えのある方、ぜひ一度、笑歩さんの動画を視聴してみてほしい。大変わかりやすく、NHKでも取り上げられている。

     

    また、笑歩さんはYouTubeで情報を配信する他、LINEにてAPDについて個別で質問に答えている。相談してみるのもいいかもしれない。

    今回、お話を伺ったなみしさんは、今秋手話パフォーマーだけを集めたライブイベントを東京都内にて開催予定だ。

     

    また、近年、手話で歌うことの楽しさを知りたいという方が増え、手話パフォーマンスの個別レッスンも行っている。興味のある方は下記メールにてご連絡を。

     

    sign.734.performer@gmail.com

     

    なみしさんには、ADHDについてもインタビューさせていただいた。インタビューの様子は、また後日ご紹介しよう。

     

  • 楽しみながら勉強になるYouTubeのチャンネル6選

    楽しみながら勉強になるYouTubeのチャンネル6選

    YouTubeでの勉強のススメ

    僕の住んでいるマンションは自主管理をするシステムだ。つまり、ゴミ捨て場の片付け、蛍光灯の付け替え、などすべて自分たちでやる。そして今年は防災の担当になってしまった。
    「まあ、消火器のチェックとかすればいいんだろう」
    と思っていたのだが、『防火・防災管理講習』という講習を受け、資格を取得しなければならないことが分かった。

     

    「超めんどくせえ。くそだりい」となじりながらも、最寄りの消防署で申し込み、立川防災館にて講習を受けることになった。
    9時~17時みっちり授業を2日間という、なかなかガチな講習内容だった。約5000円の3冊の教科書はめちゃくちゃ重たく、気分はずっしり重たくなった。

     

    実際にあった火事、ホテルニュージャパン火災や千日前デパート火災などの詳細を学ぶ勉強は良かったが、資格そのものに対する授業は非常に苦痛だった。ほぼ教科書を読み上げるだけのような授業は全然頭に入ってこない。一日がめちゃくちゃ長く感じたし、家に帰って鏡を見たら眉毛がはげていた。相当なストレスだったようだ。こんな授業を毎日受けていた学生時代って、スゴイなあと改めて思った。

     

    「大人になっても日々の勉強は大事」とはいうけれど、興味のないことを学ぶのは非常に大変だ。特に、学校などの授業は「面白さ」は度外視されている場合が多い。もちろんバラエティ番組のように「面白さ」だけを追求すればいいものではないが、面白い授業の方が内容を覚えるのは事実だ。

     

    実際、『防火・防災管理講習』でも周りを見ると講師に見つからないようにウツラウツラと寝ている人が多かった。

     

    YouTubeは学校などの授業とは違い、ビュー数やチャンネル登録者数で選別される。もちろん数が多ければ質が高いというわけではないが、それでも一定の目安にはなる。YouTube内では「面白さ」は度外視されるどころか、かなり重要な要素の1つになる。

     

    実際
    「学校の授業では分かりづらかった話が、YouTubeで見たらとてもスムーズに脳に入ってきた」
    という経験は何度もしている。
    今回は、娯楽な気分で見ていたら、いつの間にか知識が身につく、YouTubeチャンネルを6選紹介したいと思う。

     

    ●税関チャンネル

    ガチの税関のオフィシャルチャンネルだ。
    税関の主な業務の1つ、通関、密輸の取締りについての動画がったくさんアップされている。外国人旅客による覚醒剤密輸の手口などが丁寧に解説されていたりしてとても興味深い。実際に飲み込むために繭玉状に袋詰めされた覚醒剤の画像などもアップされている。
    ベテラン職員へのインタビュー、麻薬探知犬についてなど興味深い内容が多い。
    だがそれに関わらず、視聴者数はあまり多くないのが現状だ。たぶん『税関』という名前の固さが原因だろう。