ご存知だろうか?日本の犬猫殺処分頭数は年間 43,000 頭(H30) と非常に多く、我が国は犬猫の殺処分が世界で最も多い国であることを。そして、猫の殺処分頭数が犬より圧倒的に上回っていることを。
猫は生後半年で妊娠が可能な年齢となり、一度の出産で4〜6匹の子猫を産む。さらに年に2〜3回出産することができるので、繁殖のスピードが早い。そのため、殺処分の頭数もおのずと多くなる。
しかし、なぜ罪のない犬や猫の命がこうもたやすく奪われねばならないのか。こんなにも多くの犬猫たちが殺処分されているにも関わらず、販売を目的に犬や猫の繁殖が行われているという現実がある。
近年、こうした現状が問題視されるようになり、保護犬・保護猫の存在が注目を集めている。今後、犬や猫を飼いたいと考えている方には、ペットショップではなく、保護犬や保護猫のお迎えを検討してみてほしい。しかし、保護犬や保護猫をお迎えするにはどうしたらいいのかわからない。そういった方も少なくはないだろう。

元祖猫商・丸山商店店長でアニマルホリスティックカウンセラー&猫のごはんアドバイザーの丸山晶代さん
今回は、10年前より保護猫活動を行なっている丸山店長こと丸山晶代さんに保護猫を引き取るための方法や保護猫活動についてなど様々なお話を伺った。
保護猫を飼うにはどうすればいい?
「里親を募集しているサイトだったり、譲渡会を利用してお迎えするのが一般的です。インターネットで検索するとそういったサイトがたくさん見つかると思います。私は10年前から保護猫活動をしているのですが、ここ数年保護猫について周知が広がり、最近ではホームセンターやデパートなど、譲渡会のためにスペースを開放してくださる企業や団体も増えてきました。SNSやWEBサイトを見て、実際に猫ちゃんに会いに行って、お迎えするのが一番早いのではないでしょうか」
コロナ禍の影響で譲渡会の開催自体は減少傾向にあるそうだが、オンラインでのお見合いなどが活発化しているらしい。また、保護猫を引き取る際の条件についても伺ってみる。いくつかの審査をクリアしなければ、保護猫を迎えることは難しく、そのハードルの高さが、しばし話題に上ることがある。一体どういった条件があるのだろう。
保護猫を引き取るための条件とは?
「里親になるための条件は、保護猫活動を行なっているその団体だったり、活動をしている方個人の価値観によって変わってきます。たとえば、一人暮らしの方にはお譲りできない、結婚されている方が良い。様々な基準を設けている場合がありますが、それぞれ基準が異なるので、条件が合う団体や個人の方を探してみると良いでしょう。
条件が厳しいという情報が一人歩きしていますが、それにはそれなりの理由があります。体調が安定していない子猫だと長時間の留守番が難しい。病気があったり、怪我をしていたりすると頻繁に病院に連れていく必要がある。だから、一人暮らしの方にはお譲りできない。逆に昼間は殆ど寝ているような大人猫なら、一人暮らしの方でもお迎えできる可能性は高いと思います。条件は猫ちゃんによっても変わってきます。
私の場合は、猫エイズ、白血病の血液検査やワクチン、避妊去勢手術などこれまで猫ちゃんににかかった医療費を負担していただけること。収入が安定していて、生涯猫ちゃんの面倒を見てくれること。先にお話ししたように猫ちゃんの状態によって、それぞれに条件を決めています。
本当に信じられないことなのですが、引っ越し先が猫が飼えない物件だからと、捨てていってしまう。そういった方も少なくありません。保護した側としては、猫ちゃんに絶対に幸せになってほしい、辛い思いをさせたくない。そうした思いから、ハードルが上がってしまう場合もあるのでしょう」
保護猫活動はボランティア?さくらねことは?
ここまでお話を伺ってひとつ気になった点がある。保護した猫にかかった医療費を里親に負担してほしいとのことだが、医療費や食費など保護猫にかかる費用は、行政が負担しているわけではないのだろうか?
「猫を保護するための捕獲キットを購入するところから、餌代、医療費、全て実費です。国からの援助は一切ありません。区によって、避妊去勢手術にかかる費用の補助が受けられる場合もありますが、全額ではありません。ですから、これまでに猫ちゃんにかかった医療費を負担していただかないと、次の猫ちゃんを保護することができなくなってしまいます」
国からの援助もなく、保護するところから里親探しまで、全てが自己負担。このような活動は国がやって然るべきことではなかろうか?てっきり、国の援助があるもと思っていたばかりに驚きが隠せない。
「国からの援助はありませんが、避妊去勢手術に関しては、どうぶつ基金さんが『さくらねこ』にするための手術無料チケットを毎年発行してくださっています」
さくらねこ。初めて耳にする言葉だ。さくらねこ、そして、どうぶつ基金について伺ってみる。
「外の猫ちゃんを避妊去勢せずにいると出産により、どんどん増えていきます。そして産まれた子猫は保健所に連れて行かれる。ですから、殺処分を減らすためには避妊去勢手術を徹底することが第一です。けれど、その手術をするにもお金がかかる。どうぶつ基金さんは、外の猫ちゃんを捕獲して、不妊去勢手術して元の場所へと返すという活動を行っています」
画 Y.shin
「街を歩いていると時折り耳の先が、V字にカットされている猫ちゃんを見かけることはありませんか?これは、さくら耳といって不妊手術済みの証です。目印がないと一度手術を受けた猫ちゃんが再度捕獲され、麻酔を受けることになり兼ねません。
そういったことがないように手術を行う際、麻酔の効いているうちに猫ちゃんの耳をV字にカットする。カットされた耳が桜の花びらのような形に見えることから、処置を行なった猫ちゃんたちは『さくらねこ』と呼ばれています」
丸山店長は、どうぶつ基金を応援するため、さくらねこを広めるための活動を幅広く行なっている。
猫の幸せにつながるさくらねこグッズ

「私は20年ほど前から丸山商店という猫グッズのお店を運営しているのですが、10年ほど前から、商品の売り上げの一部をどうぶつ基金さんへ寄付しています。寄付を始めた当初は特定の寄付商品の売り上げの1割を寄付していたのですが、現在はすべての商品の売り上げの1割を寄付しています。
寄付商品の第一弾は肉球フィニャンシェという商品でした。お菓子を寄付商品に選んだのは単純な理由からです。美味しいものを食べると幸せな気分になれますよね。美味しいものを食べてハッピーになって、これを買うことで猫ちゃんのために良いことができたと、購入した方がさらにハッピーな気持ちになる。だから、購入してくださった方も猫ちゃんも幸せになれるお菓子を選びました。売り上げは1割減りますが、猫ちゃんが幸せなら私もハッピーです。
丸山商店では、さくらねこ関連のグッズやスイーツを多く取り扱っているのですが、これは、猫好きさんの間でもさくらねこの存在があまり認知されていないことを知ったからです。私は、当時すあまちゃんという猫ちゃんを飼っていたのですが、この子はさくらねこです。すあまちゃんの写真をツイッターやインスタにアップすると『この猫ちゃん耳どうしたの?』とのコメントが多く。猫好きさんでも、さくらねこを知らない人がたくさんいるのだと。さくらねこモチーフのグッズをつくって、皆さんにさくらねこのことを知ってもらおうと考えました」

さくらねこクッキー1枚180円(税込)
「美味しいもので負担にならないようなものなら、ギフトにもぴったりだと思い、さくらねこグッズの第一弾はさくらねこクッキーにしました」
さくらねこクッキーは1枚から購入することができ、カード付きでラッピングもされている。ちょっとしたギフトに最適で、1枚からでも1割が猫のために寄付される。
「私が健康オタクということもあるのですが、クッキーを始め、食品類は全て無添加でクッキーのイラストは食用インクでプリントしています。原材料も小麦粉と卵と砂糖のみと至ってシンプルで、ショートニングやマーガリンは使わずバターをたっぷり使っています」
味にも見た目にもこだわり抜いたことで、好評を得たさくらねこクッキーは、今や丸山商店の看板商品だ。この商品の存在でさくらねこを知ったという方も多いのだそう。
現在、丸山商店ではクッキーの他にも珈琲や紅茶、おせんべいなど様々なさくらねこグッズを販売している。

「ネットショップで購入していただいた商品を発送する際は、どうぶつ基金さんが発行している冊子を同封しています。さくらねこのことを知らなくても、商品を猫好きの人からプレゼントされて、そこに冊子が同封されていたら、さくらねこのことも知っていただける。街で見かける耳が切れている猫ちゃんは、避妊去勢手術をしているのだと。草の根じゃないけれど、一人でも多くの人に知ってもらえれば……」
2011年より10年以上もの間、地道な活動を続ける丸山店長。その甲斐もあってだろう、10年前より猫の殺処分は徐々に減少している。それでも年間に43,000 頭の犬猫が殺処分されているのが現状だ。
こうした現状を打破すべく、丸山店長は、猫を救うための新たな活動を始めた。
猫動画を見るだけで猫のしあわせにつながります♪
丸山店長が始めたのは猫動画を配信するYouTubeチャンネルだ。動画チャンネルのタイトル通り、収益は全て猫のために寄付される。
また、動画で紹介されている工事現場で瓦礫の下敷きになってしまった猫、ぴいこちゃんを支援するグッズの販売も行っている。支援グッズの第一弾は「ぴいこちゃんクッキー」。売り上げの1割がぴいこちゃんへの支援金として寄付される。手術は成功し一命は取り留めたものの、ぴいこちゃんは目も見えず、匂いもわからず、音を聞くこともできない。そのため、定期的な通院や検査が必要で、寄付金はそんなぴいこちゃんを支えるために使われる。

ぴいこちゃんクッキー
東日本大震災で被災した猫を救うために
どうぶつ基金への寄付や保護猫活動を始めたきっかけを尋ねてみる。
「一番大きいきっかけは2011年の東日本大震災です」びっくりして窓から逃げてしまったり、家の中にはいるけれど飼い主が避難所に行って取り残されてしまったり。そうした猫や犬などの存在を知り、心を痛めた丸山店長は、自分でできることで何かをしたいと考える。
「禁止地域のギリギリまで行って猫ちゃんを保護して飼い主を探したり、ご飯をあげたりと現地でそういった活動を行っている人の存在も知りました。私も現地に行って猫ちゃんの助けになりたい気持ちはありました。けれど、私の家にも猫ちゃんがたくさんいるので、この子たちを置いて現地に行くことはできません。それで、私にも何かできないかと考えたときに、やっぱり一番はお金だと思いました。
でも、私一人が寄付をしたところでたかが知れています。そこで、丸山商店のメルマガで被災した猫ちゃんのために寄付をしたいと考えていることを発信しました。すると、私と同じように猫ちゃんのために何かしたいとの声が多く上がりました」丸山店長は、声を上げてくれた猫好きの皆さんの寄付金をまとめて現地に送り届ける。それから10年、丸山店長は売り上げの一部をどうぶつ基金に寄付し続けている。
今後の活動について
「今現在考えているのは、保護した猫ちゃんたちが快適に暮らせるシェルターを作ることです。一匹でも多くの猫ちゃんを保護して里親さんを見つけてあげたい。でも、一番はそんなシェルターが必要のない世界になることを目指したいです。
一匹でも多くの猫ちゃんを幸せにするために、活動をもっと広げていきたい。けれど、個人では限界があります。私は東京都の板橋区在住なのですが、ご近所の方で活動を応援してくれる方、サポートしてくださる方を探しています」
丸山店長の活動を応援したい、活動に興味がある。そんな猫好きの方がいらしたら、ぜひ、保護猫&猫雑貨「ねこまる」のDMより丸山店長に連絡してみてほしい。
もうひとつの顔はちくわぶ料理研究家!?

実は丸山店長、ちくわぶ愛満載のちくわぶ本「ちくわぶの世界」著者であり、日本で唯一のちくわぶ料理研究家として知られる人物でもある。「マツコの知らない世界」や「ぶらり途中下車の旅」などTV番組にも出演している。ちくわぶ料理研究家としての活動も10年前より行っているのだそう。猫についての著書も出版を予定している。
幼少期から様々な動物を飼っており、子どもの頃は『ムツゴロウ王国』で働くのが夢だった。そんな、動物大好きな丸山店長。「猫ちゃんが好きという方はたくさんいらっしゃいます。けれど、さくらねこであったり、日本の犬猫の殺処分の現状だったり、こういったことは、あまり広くは知られていません。この事実を多くの人に知ってほしい。一人ひとりがこの事実を受け止め、意識すれば今の現状を変えていけるのではないでしょうか」
人間の命も猫の命も同じ一つの命。猫だから殺していいなんてことは、本来ならば絶対にあってはならない。出産しなければ、猫が増えることはなく、殺処分する必要もなくなる。よって、飼い主のいない地域猫に対し、不妊去勢手術を行うことが、殺処分ゼロ実現への近道となる。こうした事実を広めるべく、10年という歳月をかけ、今尚、幅広く活動する丸山店長。アニスピホールディングスを母体とするあいである広場としても、この問題にはしっかりと向き合っていきたい。