今回は、愛知県瀬戸市で障害者向けグループホームと就労継続支援B型事業所を運営する、NPO法人アップル・シード代表理事の成瀬 毅さん(43歳)と、統合失調症の当事者の佐藤さん(仮名 57歳)にお話をうかがった。
左 成瀬さん 右 佐藤さん
※緊急事態宣言発令に伴いオンラインで取材を行いました
佐藤さんは19歳の時に統合失調症を発症し、現在は生活保護を受給している。同じく統合失調症の弟(55歳)と2人暮らしだ。兄弟ともに成瀬さんが運営する、B型事業所で電線とその支持物の間を絶縁するパーツ「がいし」にネジを仮止めするのが、主な仕事だ。月に1万円以下の稼ぎだが、やりがいにつながっているという。
統合失調症は幻覚・幻視や妄想などの症状が特徴的な精神疾患だ。珍しい病気だと思うかもしれないが、日本では100人に1人がかかる身近な病気だ。その症状から会話が通じない、不治の病、こわいなどのイメージが強い。だが、最近では、症状を抑えるいい薬も出ている。糖尿病や高血圧などと同じで、薬で症状をコントロールしていれば、社会生活を送ることも充分できる。しかし、今回、ご紹介する佐藤さんの場合、幻覚や妄想などの症状が固定してしまったという。今回の取材でも、話し始めはスムーズだが、だんだんと話がそれていってしまう。支離滅裂になってしまった。会話は成り立つが、全体的な話を理解するのは難しい。
だけど、佐藤さん自身も、見守る成瀬さんの表情も明るい。半分くらいは理解できない佐藤さんの話だが、聞いていてもほんわかした気持ちになった。
「今、統合失調症の症状でつらいことはありません。成瀬さんに出会って、みなさんのお陰で助かっていますよ」
佐藤さんは少し緊張した表情だったが、横にいる成瀬さんに何度も頭を下げながら言った。成瀬さんによると、佐藤さんとの出会いは5~6年前だという。佐藤さんは入退院を繰り返しながらも、いたってやんちゃで明るい性格だ。