凍てついた眼差し|統合失調症の母に虐待された「あの子」の目

障害者ルポ

あいである広場が休止してから約1年半。やっと再開の目途が立ち、今日から編集長である私も書き始める。この1年半にあった出来事については、おいおい書いていくけれど、とりあえずおめでたい。再開、第二弾の記事は、私が元夫のDVから逃れて入所した、母子自立支援施設で出会ったA子ちゃん(私立中学生)母子について書いていこうと思う。

 

母子自立支援施設での暮らし

私は約8年近く前に元夫のDVから逃げて、当時2歳だった我が子と母子自立支援施設という場所に入居していたことがある。母子自立支援施設は、主にDVが理由で、夫と別居や離婚した子連れの女性が、生活を立て直すための施設だ。私がいた施設は、1階に福祉系の資格を持つ職員がいる事務所があり、その上の階が3LDKの居室となっていた。一見普通のマンションと何も変わらないように見えるが、中では臨床心理士による無料カウンセリングも受けられ、家賃も無料。DVで傷ついた母子にとってはありがたい施設なのだ。私は約2年間、そこで生活保護を受給しながら暮らし、会社員に戻って経済的な自立をした。

 

コロナ禍で失業者が増えている今、施設長によると入居希望者は増えているという。子どもとともに生活を立て直したいという方は、市区町村の福祉事務所に相談してみて欲しい。

 

そこには、当時10組ほどの母子たちが暮らしていた。その中に、A子ちゃん(私立中学生)とそのお母さん(30代)はいた。

 

隣の迷惑な住人の正体

ある日、新しい入居者としてA子ちゃん母子が入居してきた。A母は30代で、とても清楚な身なりをした、ロングヘア―の美人だった。そして、お嬢様女子大学出身で、英語は堪能で、外資系の会社で派遣社員として働いていた。

 

だが、異様に音に対し過敏だった。例えば、クーラーの室外機はベランダにあったが、室外機の音に対するクレームが多かった。「施設」というと、壁が薄かったり、プライバシーが守られなかったりするイメージをもつ方もいると思うが、そんなことはなかった。鉄筋コンクリート造りの部屋はとても静かで、隣の部屋の音などは一切聞こえない。

 

当然、部屋にいても、隣の室外機の音などは聞こえなかった。A母は我が家の「冷蔵庫を開ける音がうるさい」「室外機の音がうるさい」「玄関の開閉の音が気になる」等の生活音に対するクレームを事務所に言っていた。生活音を全く立てずに暮らすことは無理だ。施設側も分かっているので、A母についてのクレームは1回伝えられただけで、気にしないように言われた。

 

直接、部屋に乗り込んできたA母

A母とはライフスタイルの違いから、直接、顔を合わせることは滅多になかった。施設内では季節ごとのイベントや飲み会があったが、A母子は参加していなかった。

 

ある日、玄関のチャイムが鳴った。ドアスコープを覗くと、A母子の姿が見えた。玄関を開けると、A母が目を充血させ、殺気立った様子で立っていた。開けた途端、早口で「あなたの家の音がうるさくて私は眠れない」「嫌がらせで壁を叩いているだろう」などと、身に覚えのないことを早口でまくし立てる。とてもまともに話が通じる感じではなかった。その後ろには、暗く洞のような目をした中学生のA子がいた。A子はただ母の後ろで、私の目を見つめ無表情で立っていた。まだ2歳だった息子も部屋にいたので、私は怖くなり「事務室に言ってください」と言い玄関を閉めて職員につながる内戦電話に連絡をした。

 

職員がつくまで10分ほど、A母は玄関の前で叫んでいた。

 

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