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スマートフォンが開けないだけで数百万円を失ってしまう可能性もある。『デジタル遺品』の実情と効果的な対策を考える。

スマフォ、男性、手

年々、デジタル機器を使用する人は増加しており、最近ではお年寄りでもスマートフォンを使用している人は増えた。現金ではなく、スマートフォンで支払いをする人も多い。交通系ICカード、WAON、PayPay、LINE Pay……とそれぞれが、自分の好きな支払い方で会計を済ませている。現金での支払いよりも時間もかからず、小銭もたまらないので、便利がいい。

スマートフォンはとても個人的なモノなので、家族でも見る機会は少ない。自分の両親や兄妹が、どんなアプリで支払いをしているか、どんなネットバンクに貯金をしているのか、知らない人も多いだろう。もちろん、普段はそれで全然かまわないのだが、いざ持ち主が亡くなってしまった時に大いに困ることがある。

 

今回は『スマホの中身も「遺品」です』(中公新書ラクレ)、『ここが知りたい! デジタル遺品 デジタルの遺品・資産を開く! 託す! 隠す! 』(技術評論社)の著書がある、古田雄介さんに『デジタル遺品』の問題点と対策について伺った。

 

 

「まずこの手の話をする時に、わざと相手をビビらせる人がいます。柳の枝を、オバケだぞ!! と言って相手を脅すわけです。でも実際、話はそれほど複雑ではありません。基本的には、今までの遺品のデジタル版に過ぎません」

 

今までは印画紙に焼いてアルバムに挟んでいた写真が、デジタル写真になりパソコンのフォルダに収められている。紙の貯金通帳が、スマートフォンのアプリになっている。それだけだという。では、一番の問題点はなんだろうか?

 

「デジタル遺品は“見えにくい”というのが一番の問題です。まず使っていない人から見たら、スマートフォンはナゾの道具でしょう。どうやって開いたらいいのか、何を操作したらいいか分かりません。開くことすらままならないでしょう。これが唯一にして最大の問題点です」逆に、視覚などが不自由な人が使用しているスマートフォンは、健常者にとってはナゾの道具になってしまう場合もある。どのようなサポート機能を使っているのか、わからないからだ。

 

「そして、まだデジタルが広がって四半世紀も経っていません。だから業界全体にノウハウが蓄積されていません。いざという時に誰も助けてくれない。法律でもサポートされていない、ということがたくさんあります」

遺品の問題で困るのは、遺された家族だ。死はいつ何時、誰に襲いかかるかは分からない。だから、あらかじめ自分たちで自衛対策を立てて置くほうが良い。具体的に言えば『見える化』しておく。

 

「僕が、デジタル遺品に関わるようになって10年になります。数多くの相談を受けてきましたが、8割は『パスワードが分からなくて開けない』というものでした。そしてそのうち9割が対象がスマートフォンでした」

スマートフォンのロックは、非常にセキュリティが固い。家族がキャリアに問い合わせても、パスワードなどは答えてくれない。何度も入力ミスをすると、中身が消えてしまうという機構があるスマートフォンもある。

 

アメリカでは、FBIがアップル社に対したびたび犯罪者が使用していたiPhoneのロックを開けるよう申請したが、アップルは事実上拒否している。「犯罪捜査目的でもあっても、プライバシー侵害につながる秘密の使い方は提供しない」という姿勢は、とても信頼がおけるが、遺された家族にとっては大きなダメージがある場合が多い。

 

例えば、LINE Payには100万円、PayPayには500万円貯めることができる。スマフォが開けないと、遺族が存在に気づくのは難しい。諦めて電話を解約すると、電話番号は3ヶ月ほどで再利用される。新たな契約者がLINEをはじめると、前の人のアカウントは消滅してしまう。たとえLINE Payに残高が残っていても初期化されてしまうのだ。このような形で、消えてしまったり、塩漬けされてしまった、遺産はかなりたくさんある。

 

「とにかく、スマートフォンを開けることさえできてしまえば、ほとんどの問題は解決します。どんなアプリ、銀行、ネットショップを使っているのか分かれば、直接問い合わせることができます」それでは、どのように家族にスマートフォンのパスワードを知らせればよいのだろうか?

 

「単純ですが『紙に書いておく』というのが一番効果的です。ただし、セキュリティー的には問題がありますね。死後は見られても仕方ないけど、生きている間には家族にもスマフォの中身を見られたくない人もいいでしょう」

古田さんがおすすめする方法は、圧紙などにパスワードを書き、それを修正テープで二度貼りするという方法だ。こうすれば普通には見えないし、死後はスクラッチカードの要領でこすればパスワードを読むことができる。覗き見たら分かるから、パスワードを変更すれば良い。

 

 

この紙を、自分が亡くなったらまず家族が最初に見るであろう『紙の通帳や実印などが置いてある場所』などに置いておけばよい。知らない間に、数十万~数百万円も損をしてしまう可能性もあるデジタル遺品問題。先送りにせず、今対策をとっておけば、将来助かるかもしれない。

 

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