過酷な野宿生活で心身の健康を損なうホームレスたち

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野宿生活はとても過酷だ。
ホームレスの平均年齢は60歳を超えている。
70代、80代のホームレスも珍しくない。

高齢者である彼らが、暑さ寒さ雨などが身に染みる屋外で暮らしている。
もちろん、きちんとした食事もとることができない。

 

そして、ほとんどの人は健康保険を持っていない。
廃品回収などのわずかな収入では、食事代を確保するだけで精一杯であり
病院に行くお金はとても確保できない。
市販の薬を買うのすら難しい。
病気になっても、我慢してやりすごして、そのうちに悪化していく。
しばらく姿を見かけないのでテントの中を覗くと亡くなっていたというケースもよく聞く。

 

比較的に高齢者が多く住む河川敷などのテント村を歩いていると
住人が亡くなってしまったため、花や線香がお供えしてある小屋が目についた。
彼らの中には、そもそもケガや病気が原因で、ホームレスになったという人も少なくない。
彼らはホームレスになる前、建築関係や土木関係の仕事に従事している場合が多い。
『重いものを運ぶ作業中に腰を痛めてしまった』
『高所から落下して足をケガしてしまった』
などが原因で、仕事に行けなくなり、結果的に野宿生活を余儀なくされてしまった。

 

またガンなどの病気にかかり、病院に入院した結果、病気は完治したものの
入院している間に仕事を失い、治療費によって貯金もなくなったため
結果として住む家を失ってしまったというケースもある。
ホームレスになった後は、空き缶を集めるなど「廃品回収」の仕事をしている人が多いが
体にダメージが残っているため皆さん苦労している。

 

2000年代初頭に上野公園で知り合った50代後半の男性は
元々鳶職で稼いでいたと言っていた。
仕事中に腰と足を痛めてしまったためホームレスになってしまった。
毎朝、近所を回っては新聞や段ボールなどを集めて
ゴミ処理場へ運び現金化していた。5~600円にしかならないが
そのお金で缶コーヒーとタバコを買うのを毎朝の習慣にしていた。
「寒い朝は足が痛むんだ。でも運動していないとより悪くなるんだよな」
と笑いながら、手で足を擦っていた。

 

彼は、周辺のホームレスのリーダーであり、細やかに面倒を見ていた。
お年寄りのホームレスに配給で手に入れたパンや毛布を与えたりしていた。
自分のことだけで精一杯なはずなのに、他人の面倒を見るとはとても優しい人だ。

 

彼は、先日までは夫婦で上野公園に住んでいたと言った。
僕が訪ねた時は、奥さんは過酷な生活で体を壊し入院していた。
足をケガをしてしまったから、結果的に夫婦でホームレスに転落して
そしてそこから這い上がれない人がいる。
これが現実だ。

 

日頃の不摂生がたたって、身体を傷めるホームレスも少なくない。
タバコと酒をのむホームレスは多い。
ただ近年はタバコがずいぶん値上がりしたし、
喫煙者も減り、喫煙マナーも上がったため、ポイ捨てされた吸い殻もあまり見なくなった。
かつてはシケモクを拾っているホームレスの姿をよく見かけたが
最近ではあまり落ちていないのでむつかしい。
話を聞いていると、
「もうタバコはやめちゃったよ」
と語るホームレスもいた。
価格の値上げとマナーの厳格化によって、結果的に
ホームレスは以前より健康的な生活になっているのかもしれない。

 

一方タバコに比べると、酒はいまだにたくさん飲むホームレスが多い。
タバコと違い、酒は現在でも安価で手に入れることができる。
例えば、コップに入った焼酎などがその代表例だ。
フタを開けるとググググと一気に飲む。
そんな飲み方が体にいいわけがない。
一気に体にアルコールを染み渡らせる、麻薬のような摂取方法だ。
内臓にも脳にも大きなダメージがあるはずだ。

 

西成や山谷といったドヤ街を取材していると
アルコールの自動販売機の前で酔っ払っている人たちをよく見かけた。
カップ酒を飲み終わるたびに壁に投げつけて割る人がいて、
「パリーン!! パリーン!!」
という音が周りに響いていた。
その様子を見て
「酒は麻薬だ」
と心のそこから思った。

 

そもそも酒が原因で、仕事を失ってホームレスになった人も多い。
彼らに話を聞いていると、飲酒が根本原因となって
職場でトラブルになったり、プライベートな人間関係を壊したり家族と別れたという。
ホームレスに清掃などの仕事を頼んでいる人に話を聞くと
「前払いで1000円でも払っちゃうともうダメ。それで飲みに行っちゃうんだよね」
とよくぼやいている。
そうやって約束を破っているうちに、誰からも仕事をもらえなくなってしまう。

 

酔っ払ってケンカをして、大ケガを負う場合もある。
定期的に話を聞いていた西成のあるホームレスは
酔っ払っている時にケンカをしかけたり
酔って寝ている時に一方的に暴力を振るわれたりして、いつも生傷が絶えなかった。
ただ暴力を受けるだけではなく、持っている金銭を全部奪われる。
せっかく長期間飯場に入ってためたお金も、一晩飲んだだけで全部失ってしまう。
それでも彼は酒をやめられず、毎日意識を失うまで飲んでいた。

 

ある日会うと、彼はアゴを蹴られて、下の前歯が何本も折れていた。
一応は病院に行ったようだが、傷跡が生々しかった。
「しかたねえからアルコール消毒するんだ」
とまた酒を飲んでいた。
そして数時間後にはまたグダグダになって路上で眠っていた。
そのうち彼はあっさりと命を失ってしまうのではないか?
と不安になった。

 

彼の場合は、典型的なアルコール依存症だろう。
ホームレスにはアルコール依存症をわずらっている人が非常に多い。
アルコールに比べると数は少ないが、覚醒剤などの麻薬を使用するホームレスもいる。
彼らは薬物の依存症であり、つまり「精神障害」「こころの病気」である。
体の障害よりも、精神の障害の方が、大きい問題を引き起こすことも多い。

 

またアルコールやドラッグをやっていなくても
精神病を患っていると思われる人もいる。
話しかけても全く会話にならない人
周りが全部敵に見えている人などは少なからずいる。
話を聞いていると
「近くに住むホームレスに命を狙われている。毎日『殺してやる』と言われる。
だからこっちから殺さないといけない」
と不安定な表情で語るホームレスがいた。
しかし周りの人に話を聞いたがそのような人はいなかった。
彼の耳にだけ「殺してやる」という声が届くのだろうし
殺意のこもった視線を感じるのだろう。

 

彼が精神病院で診断を受けた場合『統合失調症』などの判断を受けるかもしれない。
診断はしていなかったとしても『うつ病』『社会不安障害』『パニック障害』
などの精神の病気が原因で仕事につけなかった人
仕事を辞めざるをえなかった人もたくさんいるはずだ。
被害妄想を持っているだけならいいが、妄想が行き過ぎて
本当に暴力を奮ってしまうこともある。
誰が悪いわけではないが、被害者は出る。
ならば被害をなくすために、彼らを全員、半強制的に施設にいれるべきなのだろうか?
それはもちろん人権の侵害に当たるだろう。

 

精神的な障害を持つホームレスに対して
どのように対したらいいのかはとてもセンシティブで難しい問題である。
次回はこの点を考えていきたいと思う。

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