精神的疾患や知的障がいを抱えながら路上で生きるホームレスたちの実情。福祉からこぼれてしまった人たち。

障害者ルポコラムそのほか

同じような調査結果は他にもある。2014年、全日本民医連の精神医療委員会が研究者とともに行なった名古屋市内の路上生活者114人の精神保健調査でも、対象者の34%に知的障害があり、 42%に統合失調症やアルコール依存症など精神的疾患があることがわかっている。つまり、ホームレスの少なくない人が、精神的疾患や知的障害を抱えているというのだ。しかも、こういったホームレスの中には、特別支援学級に通った経験もなく、障害者手帳を持っていない人も多い。生活実態調査によれば、ホームレスの中で、障害者手帳を持っている人は1・6%、以前に持っていたがなくした人が1・3%と、合わせても2・9%しかいない。つまり、可視化されていない障害者がたくさんいるのだ。そんな中で、 仕事もなかなか得られず、自力で生活していくのもままならない。日常会話もできず、不衛生で体臭がきつければ、ホームレスの仲間もできない。ホームレスの中でも、孤立してしまうのだ。

 

なお、国・自治体が行なうホームレスのアンケート結果を本章(※本書の第1章のこと)では多く引用しているが、調査員がコミュニケーションの難しいこのようなホームレスにアクセスしているのだろうか。もし調査から溢れていたら、国・自治体の調査結果にすら、彼らの状態は正しく反映されていない。

 

 

僕は、他人に極度に迷惑をかけていなければ路上で生活するくらい自由にさせてあげればいいと思っている。しかし、精神的疾患や知的障害を抱えた結果、仕方なくホームレスになっているのだとすれば、それは、ホームレスというよりも、単に福祉からこぼれてしまっている人だ。「汚い」「臭い」と周りに思われてしまうホームレスの少なくない人が、このような人ではないかと思っている。

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