【再掲】受診・支援に結び付かない発達障害者たち ~触法するケースも。急がれる警察・医療・福祉の連携~

田口 Nさんは最重度の方のケアには関わっていらっしゃるのですか?
N ええ、関わっています。それこそ強度行動障害の方もいらっしゃいます。
田口 取材の中で、介助中に投げられて介助人が、首の骨を折ったという話も聞いたことがあるのですが。
N そこまではされたことはないです。ですが、私は成人の方の活動にも関わっているので、よく手を出されたりはします。それこそ手が血まみれになることもあります。
田口 血まみれ?
N いきなり(パニックの)スイッチが入ってしまった男の子たちにおでこを「ガンガンガンガン」とやられて、止められなくなって血が出たことがありますし
フラッシュバックが起きる方も多いので、負の記憶がよみがえった時につかみかかってくる方もいれば、髪の毛をガッと引っ張られてガバッと抜けることもありますし。よくありますよ、そんなことは。
ですけど、私たちの世代の人たちは、仕事中にそういったことがあっても傷程度なら病院にも行かないし、大げさにもしないしアピールなんてしないんです。今の若者はしますね(笑)
田口 するんですね(笑)
N びっくりしますね!(笑)「すみません、病院に行ってきていいですか?」って(笑)「はい、どうぞ」と言いますが(笑) 私たちの世代の人間は、仕事中にそういったことがあっても、勲章だと思ってやってきていますから。
田口 そのブラック企業みたいな発想はやめましょう(笑)
N ダメですね、管理者がこんなことを言ったら(笑)だけど、それは自分に対する思いだからいいけれど、親御さんに敢えて「こういうことをしてきたんだよ」とすべて報告する傾向が今、あるんです。でも、うちの施設は敢えて報告しないようにしています。
田口 その方が親は救われますよね。
N そうです。友達同士で手を出してしまったなら、相手がいることなので親御さんに報告しますが、スタッフに手を出すくらいなら、私は敢えて言わないようにしています。親御さんが傷ついてしまうから。
田口 保険はあるにしてもそういった場合、どう対処しているんですか?
N 自分の身は自分で守らなければならないので、そういった場合は馬乗りになって抑えてでも制止します。周りからの見られ方はあまりよくないですが、止めてあげないとヒートアップしていってしまうので、とにかく止めます。足で踏みつける時もあります。周りからクレームが入るんですよ、私たちって。外部で施設スタッフが利用者さんに虐待をしていると通報されることもあるので、私たちは全利用者さんに身体拘束の同意書を得ています。「他害、自傷があった場合はいかなる場合でも止めます」と。止め方は人それぞれですが、それをご了承してもらえますか?」という同意書を得ています。そうじゃないとスタッフを守れないので。
田口 Nさんの仕事のやりがいは何ですか?そうやって傷を負ってまで続けるのはなぜですか?
N よく聞かれますが、私の場合、自己満足です。
田口 素晴らしいですね。
N それって本当はいいことじゃないんですよ(笑)
田口 いえ、自己満足だということが分からずに「私は素晴らしいことをしている人間だ」と思っているよりも素晴らしいと思いますよ。
N 私はお母さん達から、居てくれて寄り添ってくれてありがとうと言われるだけで嬉しいので。あとは何よりも子供たちの存在は大きいですよね。子供たちが幸せじゃないと。そこに尽きますね。不幸せな子たちを見ていると放っておけないので。
田口 こういった活動が世の中にもっと理解されて周囲から暖かい目で見守ってもらえるような世の中になるといいですね。