元火葬場職人に聞く『焼き場のリアル』~起き上がる遺体、立ちのぼる黒煙、吹き出す水~

具体的な火葬業務についてのお話を伺った。
「まず遺族と棺を迎えます。これは“入場”と呼びます。仏教徒の場合お焼香をしてもらい、終わったらボタンを押します。そうすると炉のドアが閉まります」
焼き場では、ボタンを押したタイミングでライトが光る。これは点火OKの目印だ。ボタンを押すと、炉内にバッと火が出る。
「まずは、火は棺桶に当たります。大体10~15分くらいで、小窓から炉内を見ると、棺はボロボロになってなくなってきています」
そこから火が遺体に直接当たると、筋肉が収縮して動いてしまう場合がある。漫画『はだしのゲン』でも、死体が起き上がるシーンがあった。
「ボクシングのファイティングポーズに近い形になると言われることが多いですが、実際には人それぞれですね。起き上がってくる人もいるし、片足だけ上がる人も、身体がねじれる人もいます」
そうなったら、デレキと呼ばれる長い鉄の棒を小窓から入れて、体勢を整える。手が上がったら手を押し下げるし、遺族が棺に入れたものが燃焼の邪魔になっているようならどかす。エアと呼ばれる、空気を吹き付ける機械で灰などを吹き飛ばすこともある。

「焼き始めて30分もすれば、安定してきます」
後はそのまま、焼き続けていくのだが、焼き終わる時間は人によって違う。45分で終わる人もいるし、90分くらいかかる人もいる。
「体格によって焼き終わる時間は変わってきますね。もちろん身体が大きいほうが時間がかかります。そして、身体が大きい人は煙が良く出る場合も多いです」
体格が大きい人は脂肪が多い。脂肪が燃えると激しく焼けすぎてしまい、炉内の酸素が足りなくなってしまう。すると燃焼できなくて黒煙が上がってしまうのだ。
「たまにすごい量の煙が出ることがありました。黒煙をなくすためには一旦火をとめて様子を見ないといけません。山の中にある火葬場ならまだいいですが、住宅地にある火葬場だったので、黒煙には繊細でした」
火葬場の近くに学校やマンションが建っていた。黒い煙が流れて行くのは非常に問題だ。
ただ現在では再燃炉というシステムで、一旦出た煙をもう一度燃やし無色の煙にしてから排出する火葬場も多い。
「人体には水分が多く含まれますから、そもそも燃えづらいです。火を当てて熱していくと水が膨張して、身体はパンパンに膨らみます。そのうち、ヒビがはいったり、穴が空いたりして、そこから天井まで届く勢いで水が吹き出ることもあります。見た目は地獄絵図ですが、ただ水が出てくれたほうが、火葬はやりやすくなります」
伊丹十三の映画『お葬式』では、火葬の様子を親族が見学するシーンがあったが、実際に見ることはできるのだろうか?
「今はほとんど無理だと思います。強い火を扱う仕事ですから、事故が起きてしまっては困りますから。あと、個人的な意見としてはわざわざ焼かれている人を見る必要はないと思います。大切な人の最後の思い出が、真っ黒に燃えている様子になってしまうのは、少しさみしいと思います」
確かに、親しい人の思い出はきれいな姿のままに留めておいたほうが良いかもしれない。