中絶のターゲットをダウン症児だけにするのはどうなのか?  ~「検査を受ける必要はないよ」と昔の私に伝えたい~

コラムそのほか

■私も受けた出生前診断
誰も好んで「障害児を産みたい」とは思っていない。筆者もその一人だった。20年前に出生前診断を受けた。結果「染色体異常ではない」だったが、生まれた子は障害児だった。

【経緯】
不妊治療をして38歳で妊娠した。そんなとき不妊治専門のクリニックの壁に貼ってあった「高齢出産の方 トリプルマーカーテストを受けませんか?」と書かれたポスターが目に留まった。これから続く長い10ヶ月の妊娠期間、悶々と「お腹の子どもが障害児だったらどうしよう…」と不安を抱えながら過ごしたくない、そんな軽い気持ちで受けた検査だった。採血の結果、渡された用紙には「21トリソミー(ダウン症候群)の可能性80%」と書かれていた。当時の検査は妊婦の血液を採血して確率を出し、その後、精密検査である羊水検査に進むものだった。そのクリニックには羊水検査の設備がなかったので、医師から大きな病院の紹介状を書いてもらった。クリニックの帰り道、妊娠が分かってからバラ色に見えていた街並みが、灰色に見えた。

 

5日後に羊水検査を受けに行ったが、検査中、泣いていた。すると医師から「何をそんなに泣いているんですか?どんな子どもでも産もうと考えているならば、最初からこの検査を受けないでしょ。検査を止めますか?」と叱られた。この医師の言葉は当然である。障害のあるなしに関わらず、どんな子どもでも産んで育てるつもりだったら、この検査をそもそも受けることはないのだ。泣いていること自体、矛盾している態度だった。確定診断の結果が出るまで一ヶ月かかった。21週と6日までしか中絶は認められていない。医師から「検査結果が出て1週間以内に産むか産まないか決めてください」と言われた。胎動を感じながら、30日間悩んだ。結果の用紙には「13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)ではない」だった。ホッと胸をなで下ろした。でも、産んでみたら自閉症だった。

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