息子には強度行動障害はないが、特に幼い頃は、パニック・自傷などで私は疲れ果てていた。子どもが迷子になったとき「このまま永遠に見つからなかったら良いのに」と思った。また、放課後等デイサービスの仲間の笑顔で素直なダウン症児を見て、「自閉症でなく、ダウン症児の方がよかった。言葉はなくてもコミュニケーションがとれるから。出生前診断でダウン症児を排除しようとした私はつくづく馬鹿だった」と思った。
■お金の問題?
出生前診断を巡り、「うちには障害児を育てるお金がない」という不安を聞く。でも、ダウン症児であれば知的障害を必ず伴う。従って療育手帳を取得することが出来る。
【療育手帳】
療育手帳とは知的障害者であることを証明する手帳、自治体によって名称や知能指数は異なるが、一般的にIQ(知能指数)70以下で交付される。
1度(最重度)・・・知能指数(IQ)がおおむね19以下
2度(重度)・・・知能指数(IQ)がおおむね20から34
3度(中度)・・・知能指数(IQ)がおおむね35から49
4 度(軽度)・・・知能指数(IQ)がおおむね50から70
そして、経済的な援助を受けることができる。
(援助の例)
・特別児童扶養手当
・障害者福祉手当
・障害基礎年金
・特別障害者手当
・交通費の減免
・所得税、住民税、相続税の税控除など税制上の優遇処置
自閉症の息子は小学校、中学の義務教育の間は無償。特別支援学校高等部も東京都の場合、月額100円だった。(年間1200円)親亡き後、グループホームで暮らすとしても賃料は食費光熱費を含めても概ね6万円くらい、法定雇用率による障害者枠で就労した給料と20歳から受け取れる障害者年金で十分賄え、親亡きあと大金を残す必要はない。
■優生思想
出生前診断の根底にあるのは「ダウン症児ははいらない」という優生思想である。もしこのような検査を認めるのであれば、産まれても生きながらえることが難しい非常に重い障害に限定するなど、国としてのルールを決めるべきだと思う。ルールなきまま利用が広がれば、判断を迫られる親たちは、私のようによりどころなく苦しむことになる。たとえ健康な子どもが生まれたとしても、病気になったり、事故にあったり、精神疾患を患ったり、人生には予期しないことが起こる。人は知らないことには不安を持つ。情報を得られれば安心できる。出生前診断を受けようとしている人は、事前に障害児の親の話を聞いてほしい。子どもたちに会ってほしい。そのうえで検査を受けるかどうかを決めてほしい。もし過去の自分にアドバイスできるのなら、「検査を受ける必要はないよ」と伝えたい。障害があっても何とかなる。私より背が高くなった長男を見て、心からそう思える。
【追記】
選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子。母親だけを責められないと感じた。
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その女性は、出生前診断を受けて、「異常なし」と医師から伝えられたが、生まれてきた子はダウン症だった。
函館で医師と医院を提訴した彼女に(筆者は)会わなければならない。裁判の過程で見えてきたのは、
そもそも現在の母体保護法では、障害を理由にした中絶は認められていないことだった。
ダウン症の子と共に生きる家族、ダウン症でありながら大学に行った女性、家族に委ねられた選別に苦しむ助産師。
多くの当事者の声に耳を傾けながら選ぶことの是非を考える。出生前診断をめぐる様々な当事者たちの声からつむぐノンフィクション