樹海のど真ん中で迷子? 方位磁石が効かなくても、迷いの森から抜け出すことはできるのか?

そのほか

とにかくスマートフォンのコンパスには頼っていられなかった。夕方なのは残り時間が短くて焦るけれど、利点もある。日が落ちかけているので、影が強くできる。
「樹海内では影が見えない」
と書かれている本があったが、それはウソだ。たしかに見えにくいが影はできる。
夕方に東に向かう場合は、太陽は西にあるので、自分の影を追いかける形で進めば良い。焦りながらザクザクと前に進んでいく。
駆け出したい衝動にかられるが、ここで焦って怪我をしてしまっては元も子もない。
しばらく進んだあとにGPSを確認すると、東に向かって進んでいた。とりあえずホッと胸をなでおろす。

歩きながら、なぜコンパスが効かなくなってしまったのかを考える。
僕はスマートフォンをバイクのナビゲーションシステムとしても使っている。数日前にバイクに乗ったが、その時は異常なく使えた。
コンパスが狂ったとしても何故、スタートの場所から動けなかったのだろう? あの場所にたまたま強烈な磁場があったというのも考えづらい。
その時“ハッ”と閃いた。一週間ほど前に、スマートフォンケースを買ったのだ。画面にパカっとフタができるタイプだ。ボタンがついていないのに、画面にパチっとつく。
「スマートフォンケースに磁石が入っているんだ!!」
と叫んだ。コンパスは磁石に引っ張られ常に同方向を指し、そして僕は同じ場所をグルグル回るハメになったのだ。
慌ててスマートフォンケースを外し、コンパスアプリを起動してしばらく歩いてみる。間違いなく東を指し示していることがわかった。そのまま早足で歩くと17時頃に遊歩道に出られた。先に到着していた人と会ったが、特に心配していたわけでもなかったのでその日はトラブルのことは言わなかった。

その後、樹海マニアの人に話すと、少し呆れられた。
「絶対に物理コンパスは必要ですよ。デジタルコンパスは壊れることがあるし、たまにすごく狂う。物理コンパスさえあれば、まず出られます」
と言われた。それからは、米軍仕様のごついコンパスを2つ持って樹海に挑むようにしている。

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