広島の幻のドヤ街・ドンを紹介!!|西日本ドヤ街紹介

そのほか

 最後に紹介するのはやっぱり、西成である。地元の人は釜ヶ崎ともいう。日本最大のドヤ街である。20代の頃から、何度も足を運んでいる。

 

今でもドヤ街として活発に活動しているのは、西成くらいのものだ。とはいえ昔に比べたらずいぶん静かにはなった。

 

ズラッとドヤが林立していて、公園はホームレスの小屋が建ち並び、戦後のバラックのような雰囲気になっている。公園には、未だに街頭テレビが設置されている。

西成

僕が行った頃にはブラウン管だったが、今は薄型テレビが設置されている。
夏場はオッサンたちが集まって、甲子園を見ていた。

西成内にあるコンビニのトイレには、「便器に注射器を流さないでください」と注意書きがあり、路上の覚醒剤取引の張り紙が貼ってあった。
最近は減ったが、取材していた頃は、覚醒剤を販売している兄ちゃんたちが、路上に立っていた。

 

サブカル系出版社から
「西成でとにかく仕事を探して働いてこい」
という無茶振りをされたことがあった。
まだ二十代で、連載も持っておらず時間だけはあったので引き受けた。
最初は、日雇い労働で働こうとしたのだが、道具も持っていないし、そもそも経験もないし、なかなか雇ってもらえなかった。

 

困って街を歩いていると、壁紙に『男女従業員募集 日払い可 委細面談 高給保証』と書かれていた。
とりあえず足を運んでみると、焼き鳥屋だった。ただ焼き鳥屋といっても屋台で、自分で屋台を引っ張り、焼き鳥を売る仕事だった。なんともハードルが高いが、他に仕事もなく働くことになった。

 

「なんや20代でこんなところで働いて。親が聞いたら泣くでえ」

と、とてもガラの悪い人に言われた。

 

これがものすごくきついアルバイトだった。早朝5時に起こされて、焼き鳥の串打ちをする。鳥は冷凍されていて、凍ったままさばくので手の先が凍りつく。

 

串打ちが終わったら、それを箱に詰めて、屋台に運んでいく。配り終わったら、自分の屋台を出さなければならない。屋台を出して、焼き鳥を焼く。裏風俗街で屋台を出した時には、風俗嬢と風俗のお客さんのどちらも買っていってくれた。

 

夕方からひたすら焼き鳥を焼いて売り続け、深夜になってやっと上がれる。

 

二段ベッドが並ぶ寮に帰って来て、シャワーを浴びて、時計を見ると2時を回っている。布団に吸い込まれるように眠ると、3時間後に起こされる。

 

仕事中に居眠りしてしまい、焼台に突っ込んで大やけどして、入院してしまった人もいたという。最近はやりのブラック企業どころのさわぎじゃない。ブラックホール企業である。死にかけたが二週間ほどはなんとか働いた。

 

働きながら、よくよく話を聞いていると、もろに日本最大級の暴力団のグループ企業だということがわかった。
「やめさせてくれ」
……とは、言いづらいので、知り合いになった若い人と2人で、深夜に飛ぶことにした。

 

そろりそろりと、マンションを抜けだして、一気に走って走って走った。しばらく走ったら緊張の糸がほどけたのか、ケタケタケタと笑いがこみあげて止まらなかった。

 

最近では
「人情味ある西成!!」
みたいな親しげな部分をフィーチャーしているメディアも多いけど、あまり油断しすぎずに行こう。

 

人怖 人の狂気に潜む本当の恐怖

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